軽度認知障害(MCI)を知って認知症の早期発見に役立てよう

2021/2/16

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士 呼吸器内科専門医

山本 康博 先生

認知症という言葉は世間に広く知られてきましたが、まだ確立された治療法がなく、食い止めることが精一杯です。そこで、さらに早期に発見できるよう、軽度認知障害(MCI)という考え方が台頭してきました。MCIとはどんな状態なのか、症状にはどんな特徴があるのかなどを知り、早期発見・治療に役立てましょう。

軽度認知障害(MCI)とは

近年、認知症の前段階の症状を表す「軽度認知障害」という用語がよく使われるようになってきました。英語では「Mild Cognitive Impairment」と呼ばれ、略語の「MCI」も軽度認知障害を表す言葉として使われています。「認知症とまでは行かない状態だが、健常とは言えず、かつ、数年後には認知症に進行する可能性がある」という状態を表しています。

認知症の段階まで進行してしまうと、進行を抑えることはできても健常の状態まで回復することはできなくなってしまうため、早期発見・早期治療が重要です。そこで、そもそも認知症の状態に至る前の前兆の段階で気づけるようにしようという考え方に基づいて注目されるようになったのが「軽度認知障害(MCI)」です。

2017年6月に「国立長寿医療研究センター」が発表した研究によると、MCIの高齢者を4年間追跡調査したところ、MCIをそのまま放置していると認知機能の低下が進み、約14%が認知症に進むことがわかりました。しかし、逆にMCIになったとしても、適切な対策や処置を行えば、約46%が健常者と同じような状態にまで回復することも合わせて報告されています。

MCIは、症状によって以下の4つの状態に分けられます。

記憶障害あり、認知障害が記憶のみ
  • 健忘型MCI・単領域障害
  • 進行するとアルツハイマー型認知症になる可能性が高い
記憶障害あり、認知障害が記憶以外にもある
  • 健忘型MCI・多領域障害
  • 進行するとアルツハイマー型認知症、または脳血管性認知症になる可能性が高い
記憶障害なし、それ以外の認知障害が1つのみ
  • 非健忘型MCI・単領域障害
  • 進行すると前頭側頭型認知症(ピック病)になる可能性が高い
記憶障害なし、それ以外の認知障害が複数ある
  • 非健忘型MCI・多領域障害
  • 進行するとレビー小体型認知症、または脳血管性認知症になる可能性が高い

記憶障害があるかないか、また、認知障害が一つだけか、複数にわたっているかがポイントです。記憶障害がある場合は放置しているとアルツハイマー性認知症に進行する可能性が高く、認知障害が複数にわたっている場合は脳血管性認知症に進行する可能性が高いと言えます。

軽度認知障害の症状の特徴は?

MCIも、認知症と同じような認知機能の低下による症状がみられます。しかし、認知症よりも軽度で気づかれにくく、本人も周囲も「おかしいな」とは思っていても放置してしまう場合も少なくありません。具体的には、以下のような症状が見られます。

  • 同じ話を何度も繰り返すことが多くなった
  • さっき食べたものや知人の名前、銀行の暗証番号など、これまであまり忘れることがなかったものを忘れるようになった
  • お金の計算やスケジュール管理ができなくなった
  • 料理の味つけ、仕事や車の運転などのやり方が変わった
  • 好きだった趣味をやらなくなった
  • テレビドラマや読書などを楽しめなくなった
  • 頭がぼんやりとしてすっきりしない状態が続いている
  • 疲れやすく、元気が出なくなった
  • 何事にもやる気がわかなくなった

このように、認知症にかなり近い記憶障害や見当識障害を発症することもあれば、うつ病などの精神疾患に近い無気力症状が出ることもあります。認知症との見分け方は、「日常生活にそれほど大きな支障をきたしていない」というところがポイントです。もの忘れがなくても、「失語・失認・失行・実行機能障害」など、認知機能に関する障害が一つでもあれば、軽度認知障害と考えられます。

軽度認知障害の進行を防ぐには?

MCIが認知症へ進行するのを防ぐためには、「頭を使う健康的なライフスタイル」がカギです。脳を刺激し、記憶力や判断力を使うことで、脳機能を維持していきましょう。具体的には、以下のようなポイントを意識して生活します。

MCIかもと思ったら早めに受診する
  • 異常を感じたとき、加齢のせいにして放置しない
  • 医療機関で心理テストを中心とした検査を受ける(※痛みはない)
新しいことにチャレンジして脳を刺激する
  • 語学学習(見る・聞く・読む・話すの4つの能力を使える)など、新しいことにチャレンジする
  • 自分が楽しいと思えることを選ぶ
バランスの良い食生活を
  • 細胞がダメージを受けたら修復できるよう、タンパク質やビタミン類をしっかり摂取する
  • 脳に大切な栄養素である必須脂肪酸(DHA・EPAなど)が多く含まれる青魚を積極的に摂る
週に3日以上体を動かす
  • 街歩き程度の散歩を週3回以上行い、脳を活性化する
  • 一緒に行う仲間がいると継続しやすい

食生活や運動は健康な体と脳を保つために大切ですが、認知機能を重点的に使うため、脳に刺激を与えるような活動を新しく始めるのがおすすめです。もちろん、それが苦痛やストレスになってしまっては意味がありませんので、自分が楽しめること、やりたいことを始めましょう。

また、MCIかもしれないと思ったら、早めに医療機関で検査を受けることも大切です。MCIになったら必ず認知症になるわけではありませんが、放置していると認知症になるリスクが高いことは事実です。医師に適切な投薬や指導を受けることで、認知症に進行する前に食い止めたり、健常の状態に回復できる可能性もありますので、ぜひ早めに医療機関を受診しましょう。

おわりに:MCIの症状は「いつもとちょっと違う」がポイントです

軽度認知障害(MCI)の段階では、「いつもとは明らかに違うけれど、生活に支障をきたすレベルではない」ということから、放置してしまう人も少なくありません。しかし、放置してしまうとそのまま認知症に進行する可能性があることが明らかになっています。MCIかもしれないと気づいたら早めに医療機関を受診するとともに、脳を刺激する健康的な生活習慣に切り替えましょう。食生活や運動は、生活習慣病を防ぐためにも重要です。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

認知症(64) 軽度認知障害(1) MCI(1)