20代、30代から気をつけたい高血圧対策

2021/10/11

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

高血圧予防で有酸素運動に励む30代の男女

高血圧は40代以降にリスクが上昇する生活習慣病です。ただ、最近は20代、30代で「血圧が高め」と指摘される人が増えているという声もありますし、体重増加や体調不良で健康状態が気になるという人もいると思います。

今回は、20代や30代の若い世代の人の高血圧対策について、今のうちから気をつけてほしいことについて解説します。

高血圧の現状と高血圧対策が必要な理由

2019年の「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の収縮期血圧(最高血圧)の平均は、男性が132.0mmHg、女性が126.5mmHgとされており、10年間でみると男性、女性ともに減少傾向にあるといわれています。
この傾向は、「収縮期血圧=140mmHg以上(高血圧の基準)」の人が占める割合においても同様です。収縮期血圧=140mmHg以上が占める割合は、男性が29.9%、女性が 24.9%となっています。

このことから、日本全体をみると高血圧は改善傾向にあるとも考えられますが、高血圧、糖尿病、脂質異常症の発症率は、40代以降から年齢にともない増加するため楽観視はできません。40代の段階では服薬などの治療が必要ない高血圧が多いですが、治療が必要になる割合も年齢とともに増加します。

20代、30代から高血圧対策した方がいい理由

高血圧には頭痛、めまい、肩こりなどの症状が現れることもありますが、自覚症状がまったくない場合も珍しくありません。また、これらの症状は日常でよく起こる「身近な症状」のため、高血圧が原因とは考えないことが多いと思われます。

高血圧の状態が長期間続くと、脳や心臓の血管の病気、腎臓の病気のリスクが上昇するため、症状の有無に関わらず早急に治療が必要になる場合があります。「血圧が高めと言われていたけど放置していたら、知らないうちに進行して治療が必要になってしまった」という人も少なくありません。

高血圧の治療では、減塩を中心とした生活習慣の改善が必須です。高血圧治療における1日の塩分摂取量の目標は1日6g未満であり、塩味を好む日本人にとっては、かなり厳しい減塩が求められます。ここまで厳しい減塩をしなくても済むように、20代、30代の若い世代のうちから高血圧対策を意識するようにしましょう。

また、20代、30代は、病気などが原因の高血圧(二次性高血圧)の割合が高いといわれています。二次性高血圧は、原因となる病気の治療が必要です。あまり深刻になる必要はないかもしれませんが、仕事や運動のパフォーマンス向上にもつながることもあるので、家庭血圧を測る習慣を作っておくことをおすすめします。

[参考]
 国民健康・栄養調査(2019年)
年代別・世代別の課題(その2) 厚生労働省
高血圧治療ガイドライン2019

高血圧の原因と予防対策 ― 生活習慣の見直しが大切

高血圧は病気などが原因になることもありますが、以下で挙げるような「生活習慣」が発症に大きく関係します。

塩分摂取量

和食では塩やしょう油などの「塩分が多い調味料」をよく使うため、日本人は昔から高血圧になりやすかったといわれています。
厚生労働省の発表によると、日本人の1日の塩分摂取量は、男性が10.9g、女性が9.3gです。これは、厚生労働省が定める1日の塩分摂取量の目安「男性7.5g未満、女性6.5g未満」を大きく超えています

塩分の過剰摂取は血圧上昇に直結し、20代、30代の若い世代であっても塩分の過剰摂取が長く続けば、高血圧を引き起こすことがあります。
以下を参考に、早めに減塩対策を始めましょう。

減塩対策のポイント
  • 食材や調味量に含まれる塩分量を確認する
  • 外食や中食を減らし、自炊を増やす
  • 加工品はなるべく使わないようにして、自然の食材の風味を活かす
  • 減塩タイプの調味料、食品を使うようにする
  • 「だし」「薬味」「スパイス」など、塩味以外の調味料をきかせる
  • 麺類のスープは飲まない
  • しょう油やソースは直接かけない
  • 漬物は控えめにして、味噌汁の減塩対策を徹底する

肥満、メタボリックシンドローム

肥満の人すべてが高血圧になるわけではありませんが、肥満の人は普通体重の人と比べて2倍〜3倍程度高血圧になりやすいといわれています。また、肥満の人は食べる量が多いため、塩分摂取量も多くなりやすいことも、高血圧のリスク上昇につながります。

食事内容や運動習慣を整えて、適切な体重、体型を保ちましょう。適切な体重の目安としては、BMIを参考にすることが一般的です。BMIが18.5以上25未満になるように、体重管理をしてください。

ただし、BMIが正常範囲内でも、腹囲が大きければ内臓脂肪が溜まっている「内臓脂肪型肥満」の可能性があります。内臓脂肪型肥満は、高血圧、糖尿病、脂質異常症のリスクが高い状態です。
腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上の人で、血圧、血糖値、血清脂質のうち2つ以上に異常値がみられる場合は、「メタボリックシンドローム」とみなされます。
メタボリックシンドロームは生活習慣病が非常に悪化しやすい状態であり、心臓病や脳卒中など命に関わる病気のリスクも高いです。

肥満やメタボリックシンドロームが多いのは40代以降の男性ですが、若い男性や女性もなる可能性があります。肥満やメタボリックシンドロームになってしまってから体重をコントロールするのは大変ですし、年齢が上がると体重や脂肪を落としにくくなります。若いうちから以下を意識して、肥満やメタボリックシンドロームを予防しましょう。

肥満、メタボリックシンドローム対策のポイント
  • 体脂肪計や体組成計がついている体重計で毎日体重を計測する
  • 腹囲を定期的に計測する。パンツやスカートのウエストがきついと感じたときは注意
  • 毎食の食事の総カロリー量をチェックする
  • 脂質や糖質に偏った食事を控え、いろいろな食材をバランスよく食べる
  • 間食や夜食を控える
  • 適度な筋トレで基礎代謝を高め、有酸素運動で脂肪燃焼を促す
  • 自己管理が難しい場合は、肥満外来や専門のトレーナーに相談する

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お酒の飲みすぎ

お酒を飲むと一時的に血圧が下がることはありますが、継続的な飲酒は高血圧の原因になります。毎日の飲酒量が多いほど高血圧のリスクが高くなり、飲酒量を減らすと血圧が下がりやすくなることもわかっています。

また、お酒のおつまみは「塩味が強い食べもの」が多いため、お酒の飲み過ぎは塩分の過剰摂取の原因にもなりやすいです。アルコール飲料は、種類に関わらず高血圧の原因になり得ます。お酒は必ず適量を守り、1週間に1日〜2日以上の休肝日を作りましょう。

お酒に関する高血圧対策のポイント
  • お酒の1日の摂取量の目安は、ビールや発泡酒(アルコール度数5%)では「500ml缶 1本」
  • 休肝日を多くすることで、全体的な飲酒量を減らせる
  • 飲酒がストレス解消につながることはあるが、飲酒できない人、お酒が好きではない人が無理に飲む必要はない
  • おつまみの塩分量に注意。締めのラーメンは食べない

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食事内容

高血圧予防のためには、減塩対策や飲酒制限とあわせて「食事内容の見直し」が必要です。肥満予防のため、脂質と糖質の摂りすぎに注意し、食物繊維やミネラルが豊富な野菜・海藻類を積極的に食べるようにしましょう。

食事内容に関する高血圧対策のポイント
  • 野菜や海草類は、塩分排泄を助けるカリウムやマグネシウムが豊富。食物繊維も豊富なので、ダイエットにも役立つ
  • 果物類もカリウムが豊富だが、果糖は中性脂肪の増加につながる。肥満や内臓脂肪の蓄積の原因なるので食べすぎには注意
  • 甘いおやつを数粒のナッツに置き換えると、糖質を制限しやすくミネラルの摂取もできる(ただし、脂質、塩分の量に注意)
  • カルシウム不足は高血圧の原因になる。塩分と脂質に注意しながら、牛乳、乳製品、魚類、小松菜などの葉物野菜を食べる
  • 肉よりも魚中心の食生活にする

運動不足

有酸素運動には降圧効果が期待でき、肥満やメタボリックシンドロームの予防にも役立つため、高血圧の改善と予防には少しきついと感じる程度の有酸素運動がおすすめです。
ただし、無酸素運動は血圧が急上昇するので、運動するときには十分に注意しましょう。

1日合計30分以上の有酸素運動を、できれば毎日行いましょう。室内でできる有酸素運動もあるので、天気が悪いときなどにうまく取り入れてください。

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タバコの煙

喫煙自体が高血圧の直接の原因になるかどうかは、はっきりとわかっていません。しかし、喫煙は動脈硬化の原因になるため、遠因的には高血圧の原因になり得ます。また、タバコに含まれるニコチンには血圧上昇作用があることがわかっています。
ニコチンは副流煙にも含まれているため、高血圧を含めた生活習慣病を予防するのであれば、家族全員が禁煙することをおすすめします。

加熱式タバコや電子タバコによる健康への影響に関しては、はっきりとわかっていないことが多いですが、「非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解」では、加熱式タバコや電子タバコは見えにくいエアロゾルを出していて、そのエアロゾルのなかにはニコチンやアセトアルデヒドなどの有害物質が含まれているため、血管への影響をはじめとする「さまざまな健康リスク」が懸念されると示されています。
健康維持のためには、「加熱式タバコや電子タバコであっても喫煙しない」ことをおすすめします。

[参考]
非燃焼・加熱式タバコや電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解

ストレス

ストレスは、交感神経を活発にして「心身の緊張状態」を作り出し、血圧を上昇させます。このようなストレスによって引き起こされる高血圧は、ストレス下高血圧(昼間高血圧)と呼ばれることがあります。
昼間高血圧は健康診断などで発見されにくい高血圧です。知らないうちに血管のダメージが蓄積し、脳卒中や心臓の病気などを引き起こすこともあります。

20代、30代の人は、仕事や人間関係などのストレスを抱える機会が多いです。昼間高血圧になる可能性もあるため、こまめにストレスを解消するようにしてください。
また、家庭血圧を測ることは、昼間高血圧の早期発見につながることがあります。

関連記事:家庭血圧を測るメリットは?適切な測定方法は?

睡眠不足、昼夜逆転の生活

睡眠不足や睡眠リズムの乱れは、自律神経の乱れによる高血圧を引き起こすと考えられていますが、睡眠不足が直接高血圧の原因になるかどうかは、はっきりわかっていません。
ただし、睡眠不足や睡眠リズムの乱れは肥満の原因になり得ることはわかっています。肥満はさまざまな生活習慣病の原因であり、高血圧の原因にもなります

睡眠のトラブルは、さまざま心身の不調の引き起こします。20代、30代は、仕事やプライベートで無理をしやすく、睡眠のリズムが崩れやすいので、十分に注意しましょう。睡眠の悩みは、セルフケアだけでは改善できないことも多いです。なかなか良くならないときは早めに専門の医療機関に相談するようにしてください。

関連記事:自律神経の不調の原因と代表的な症状 ― 早期発見のために気をつけるべき変化とは

おわりに:20代、30代のうちから高血圧対策を始めると、その後のリスクも下げられる

高血圧は、40代以降の男性に多い生活習慣病ですが、20代や30代にも起こる可能性があります。20代、30代の高血圧は、病気が原因の高血圧(二次性高血圧)やストレスが原因の高血圧が多く、発見が遅れやすいともいわれています。

20代、30代のうちから家で血圧を測ろうと思う人は少ないでしょうが、40代以降の血圧対策のためにも、家庭血圧を測る習慣をつくりましょう。また、20代、30代からの高血圧対策は、そのほかの生活習慣病対策に役立ち、40代以降の高血圧のリスク低下にもつながります。高血圧対策は、運動や仕事のパフォーマンス向上や健康寿命を伸ばすことにも役立つので、できるだけ早く始めるようにしましょう。

※すでに高血圧の治療を受けている人は、医師の指導に従ってください。

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