花粉症の治療 〜 舌下免疫療法・レーザー・注射 〜

2018/3/13 記事改定日: 2018/3/19
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

花粉症にはさまざまな治療法があり、それぞれ異なるメリットやデメリットを持っています。今回の記事では、今注目を集めている新しい治療法「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」やレーザー治療、注射での治療などについてご紹介していきます。

花粉症の新しい治療法「舌下免疫療法」とは?

近年、花粉症の新しい治療法として「舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)」が注目を集めています。

舌下免疫療法は、舌の裏に花粉などのアレルゲンの成分を抽出した薬液を落とし、2分待ってから飲み込む治療法で、安全かつ簡単に行える免疫療法として誕生しました。定期的な通院さえしていれば、2回目以降の投与を自宅で行える点も大きな特徴です。

治療のタイミングは原因アレルゲンによってさまざまですが、例えばスギ花粉症の方の場合は、スギ花粉が飛散するシーズンである1~5月を避けて、花粉が舞い始める3か月前までに開始するのが効果的です。

舌下免疫療法で花粉症は治療できる?他の薬剤との併用は可能?

舌下免疫療法による効果は個人差が大きく、この治療を受けた人のうち花粉症が完治する人は2割ほどと言われています。ただ、一方で症状の改善が見られたと感じた人が全体の8割程度に上っていることから、完治まではいかなくても、花粉症の改善に効果的な療法であることは間違いないでしょう。

また、自然の成分を抽出した薬液を使用するため、アレルギー反応以外の副作用がほとんど起こらないという特徴もあります。

ただし、舌下免疫療法を行っていても花粉症の症状が出ることはあります。この場合は、ステロイドの内服薬のみを避けて、医師の指導のもと花粉症に効果のある点鼻薬・点眼薬などを併用して、症状の軽減を図っていきます。

①他の花粉症の治療法:レーザー治療

局所麻酔をした後、鼻の粘膜の表面にレーザーを照射することで粘膜を凝固させ、鼻腔を確保し、鼻づまりを解消する治療法です。また粘膜が硬くなることで花粉が付着しづらくなるため、くしゃみや鼻水などの症状の緩和にもつながります。治療自体は30分程度で終わり、治療成績が良く、副作用もほとんど見られないことから、通常のアレルギー性鼻炎の患者に広く実施されています。特に、妊婦さんや授乳中の方など服薬ができない方にはおすすめの治療です。

ただし、レーザー治療はあくまで鼻炎症状を軽減するための治療法であり、花粉症自体を根治させるものではないので、花粉が多く飛散している日には症状が出ることがあります。また、レーザー治療の効果は永続的ではなく、およそ1〜3年程度で効果が切れてしまうので、定期的な追加照射が必要です。

レーザーをする時期はいつがいい?

花粉症のシーズン前に治療を行うのが理想です。また、鼻炎症状が出ているときにレーザー治療を行うと、一時的に症状が悪化する恐れがあるので、例えばスギ花粉症の方の場合は秋〜冬の間に治療をすることが望ましいです。

レーザー治療の副作用は?

術後は鼻粘膜が腫れるため、鼻水やくしゃみが出たり、鼻血が出たりすることがありますが、こういった副作用は1週間程度でおさまります。

②他の花粉症の治療法:注射

花粉症を注射で治療する方法もあります。注射での治療法にはいくつか種類がありますが、筋肉注射の場合は「ケナコルト注射」と「ノイロトロピン注射(静脈注射の場合もあり)」があります。

ケナコルト注射はステロイド注射の一種で、3ヶ月ほど効果が持続しますが、女性の場合は月経不順などの副作用のリスクがあります。一方のノイロトロピン注射の効果の持続期間は3週間程度ですが、男女ともに大きな副作用が見られないことがメリットになります。

またこの他には、免疫療法(アレルギーの原因物質であるアレルゲンをあえて少量ずつ身体に入れることで、アレルギー反応を抑えようとする治療法)の一種である、皮下注射免疫療法があります。定期的に通院し注射を続けることで、花粉症を治療していく治療法です。はじめのうちは通院回数が多くなりますが、徐々に3ヶ月に1度程度の通院で済むようになっていきます。

おわりに:自宅でも花粉症治療が行える舌下免疫療法。興味がある人は耳鼻科へ

自然から抽出した薬液を使い、アレルギー体質の改善をはかる舌下免疫療法は、花粉症の根治や症状軽減に効果的な療法です。最大の魅力は、2回目以降の治療を自宅で行えるという点にあります。舌下免疫療法で治療したいという人は、耳鼻科の医師に相談してみましょう。

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