医師が作る医療情報メディア

ストレスで声が出なくなる「失声症」の原因や治療期間は?

失声症とは、声を出そうとしても出なくなってしまう病気です。精神的なストレスや心的外傷などショックによって起こることが多く、女性が発症しやすい傾向があります。この記事では失声症の原因や対処法、受診科などをご紹介します。

声が出なくなる失声症とは?何科で診断するの?

失声症とは音声障害の一種で、出そうとしても声がまったく出なくなってしまう状態です。のどや声帯などの器官に異常はみられません。失声症は、精神的なショックや強いストレスによって生じ、朝起きたら声が出ない、かすれた声しか出せないなど、突発的に声が出なくなってしまうことが特徴です。

発症するのは圧倒的に女性が多く、過呼吸や足が痛くて歩けないなどの症状が併発することもあります。正確に診断するためには、精神科や診療内科でのカウンセリングが必要です。

突然声が出なくなり、その状態が2~3日続いていたら、のどや声帯などの器官に原因がないかどうかを確認するためにも耳鼻咽喉科で診察を受けることをおすすめします。

失声症で声が出なくなる原因はストレス?

声が出なくなってしまう最も大きな原因は、精神的なストレスです。ストレスがかかると声が出なくなってしまう理由として、以下のようなことが関係していると考えられています。

自律神経の乱れ

家族や友人が亡くなる、事件や事故に遭って大きなショックを受けるなど、強いストレスがかかると自律神経が乱れやすくなります
自律神経は体の様々な器官の活動をコントロールしており、声帯をはじめとするのどの筋肉運動にも関わっている神経です。そのため、自律神経が乱れると上手く発声ができなくなると考えられています。

ショックに対する防衛反応

私たちの体には、ショックなことや強いストレスから身を守ろうとする自己防衛が備わっています。それによって起こるのが、一時的に記憶が抜け落ちたり、感覚が曖昧になったりする「解離性障害」と呼ばれる症状です。失声症は強いストレスに起因するので、解離性障害のひとつではないかという考えられています。

失声症の発声訓練やカウンセリングはどんな治療法?

失声症は一般的に発声訓練や原因を取り除くカウンセリングなどで治療していきます。

発声訓練の治療

のどを鍛えるために、咳払いをしたり、裏声を出したりすることからはじめ、徐々にのどを動かして声を出せるようにしていきます。その後、日常会話で使うような喉の使い方を練習し、徐々に以前と同じようにしゃべれる訓練を行うというのが大まかな流れです。

カウンセリングの治療法

カウンセリングの代表例は、患者の精神状態を読み解くための「箱庭療法」と呼ばれる心理療法です。規定サイズの箱の中におもちゃや人形などを自由に配置していく箱庭療法は、言葉で自分の気持ちを表現できない人も心理状態を現わしやすいため、効果的なカウンセリングだと言われています。また、箱庭を作る作業自体に癒しの効果があることもメリットのひとつです。

失声症の回復にはどのくらい時間がかかる?

失声症は時間と共に改善されることがほとんどです。個人差はありますが、1週間~数カ月で自然に治る傾向があります。

入院が必要になる場合

失声症で次のような症状を伴う場合は、入院治療が必要になることがあります。

また、入院中は上述したようにカウンセリングなどを行うほか、それぞれの精神症状に適した薬物療法や精神療法を行っていきます
失声症はうつ病や統合失調症など他の精神疾患が背景にあることもありますので、精神疾患が疑われた場合はそれに合わせた検査や治療が必要になることもあります。

おわりに:声が出なくなったら早めに病院で診察を受けて原因を特定しましょう

体の不調や思い当たる原因がないのに突然声が出なくなった場合、失声症の可能性があります。声がまったく出ない状態が2~3日続いたら、耳鼻咽喉科や心療内科で診てもらいましょう。失声症だった場合は発生訓練やカウンセリングを行い、声が回復するように治療をします。