記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/21
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
前回の記事では、IBSの症状や起こす引き金についてお伝えしました。
ストレスや食べ物などが多くの要因となっていましたね。
今回では、体の仕組みに焦点を当ててその原因を探っていきたいと思います。
様々な要因が重なりIBSを発症すると考えられています。その要因は、消化の問題と腸の過敏性に関連していると考えられています。また、炎症、感染症、特定の食事など、多くの要因が示唆されていますが、IBSの直接的な原因はわかっていません。
ストレスや食べ物などがきっかけで下痢などを起こすしくみについてみていきましょう。
体の中では、通常、腸の筋肉がリズミカルに蠕動運動を繰り返すことによって、食物が消化器系を移動します。
しかし、IBSでは、食物が通常よりも速くまたはゆっくりと消化器系を移動してしまうと考えられています。速い場合は、食物から水分を吸収するための十分な時間がないまま食物が消化器系で通過するので、下痢を引き起こします。
食べ物の消化器系内での動きがゆっくりすぎると、多くの水分が吸収されすぎてしまい、便が硬くなり、通過が難しくなるので、便秘の原因となります。
脳と腸をつなぐ神経は、腸の働きをコントロールしています。この神経に問題が起き、脳と腸の間の連絡に問題が起こることで、IBS症状につながる可能性があります。
消化管に細菌感染がある一部の人は、IBSを発症することがあります。
なぜ細菌感染でIBSを発症する人としない人がいるのかはわかっていません。
通常、小腸には細菌がほとんど存在しません。しかし、何らかの原因で小腸で細菌が増殖してしまうと、余分なガスを生成するため、下痢や体重減少の原因となります。
小腸の細菌の過増殖がIBSにつながる可能性があると主張する専門家も決して少なくありません。
IBS患者の消化管ホルモンと神経伝達物質はほかの人と比べて変化しているようです。これらの変化した化学物質がIBSでどういう役割を果たすのかはわかっていません。
空腹であるか満腹であるか、またはトイレに行く必要があるかどうかなど、消化器系の神経は多くの感覚を知らせるために、脳に信号を送る必要があります。
この信号を、脳が違う形で処理してしまうことで、IBSの人がガスや便が腸に溜まっている際に腸の神経が通常よりも多くの痛みや不快感に対して敏感になってしまう可能性が示唆されています。
また、専門家の中には、IBS患者は消化器系の神経信号が過敏になっていると考える人もいます。
つまり、ほとんどの人は気づかないような軽度の消化不良であっても、IBS患者は腹部や胃の痛みで苦しむことになるわけです。
IBSの原因が遺伝的なものかどうかについては、未だに不明です。研究結果によると、IBSは、消化管の問題をもつ家族がいる人のほうがいない人にくらべ、より多く見られるとされています。
頻繁に下痢や便秘になったり、突然ひどい下痢を起こしたり、痛くてトイレから出られなかったりするIBSは、慢性の病気です。
そんな症状で困っている人は、一度病院を受診し、適切な治療をしてもらいましょう。
また、ストレスを遠ざけるようにすることも、IBSの発症を防ぐために重要になります。普段からストレスを多く感じている自覚があるという人は、ストレスの原因と考えられることをなるべく避けるように工夫してください。