記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
低血圧とは、正常とされる基準の数値よりも血圧が低いことです。ただし、基準値には男女差や年齢差があり、血圧は測る環境によって数値が上下します。
では、自分がどんな状態だと「低血圧」になるのでしょうか。
低血圧の基礎知識として、基準となる数値や症状、対処法についてわかりやすく説明していきますので、血圧が低いといわれた人やめまいやふらつき、吐き気がある人は参考にしてください。
低血圧症とは、文字通り血圧が低い状態のことを言います。心臓から送り出される血液が血管に加える力のことを血圧と言いますが、血圧が低くなり過ぎてしまうと全身に十分な血液が供給されなくなることで、細胞に十分な酸素や栄養素を送ることができなくなり、めまいや失神などの症状があらわれます。
低血圧症の原因には、一般に遺伝的な要因と神経やホルモンの異常などが絡み合っていると考えられています。
低血圧な状態が続く低血圧症には、国際的な診断基準があるわけではありませんが、現在日本では、最高血圧(収縮期血圧)が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下であることを低血圧症の目安としている病院が多いです(この数値は確定的なものではなく目安に過ぎません)。
一般的に、血圧は加齢とともは高くなっていく傾向があります。そのため、血圧の基準値は年齢ごとに変わっていき、男女別でも違ってきます。
下記を参考にして自分の血圧基準値をチェックしましょう。
最低血圧(拡張期血圧) | 最高血圧(収縮期血圧) | |
20代 | 75 mmHg以上 | 118 mmHg以下 |
30代 | 79 mmHg以上 | 125 mmHg以下 |
40代 | 84 mmHg以上 | 131 mmHg以下 |
50代 | 85 mmHg以上 | 138 mmHg以下 |
60代 | 84 mmHg以上 | 148 mmHg以下 |
70代 | 80 mmHg以上 | 147 mmHg以下 |
最低血圧(拡張期血圧) | 最高血圧(収縮期血圧) | |
20代 | 76 mmHg以上 | 113 mmHg以下 |
30代 | 71 mmHg以上 | 115 mmHg以下 |
40代 | 71 mmHg以上 | 125 mmHg以下 |
50代 | 81 mmHg以上 | 133 mmHg以下 |
60代 | 81 mmHg以上 | 141 mmHg以下 |
70代 | 78 mmHg以上 | 146 mmHg以下 |
低血圧は女性の方が多い傾向があり、特に若い世代の女性が顕著です。女性が低血圧になりやすいのは、女性ホルモンに血管を広げる働きがあることが関係していると考えられています。
ただし、男性が低血圧にならないわけではありません。実際に、年齢が上がるにつれて男女差は少なくなるといわれています。
病気が原因で起こる二次性低血圧(後ほど説明します)もありますので、血圧は毎日チェックすることをおすすめします。血圧が続けて何度も基準値から外れている場合は、早めに医師に相談してください。
家庭用の血圧計でも同じ環境下(時間帯、室温、体調など)で正しい使い方をすれば、病院で計測したときとあまり変わらない数値が出るといわれていますが、環境や姿勢、計り方によって多少の誤差が出てしまうことも多いです。
だからといって、家庭で血圧を測ることが無意味なわけではありません。
そもそも血圧は、1日の中でも大きく変化します。年に数回病院で測るよりも、毎日同じ時間に計測して、自分の血圧の平常値や自分の血圧がどのように変化しているか把握することが大切です。
平常値が基準値から大きく外れていたり、数値が急に変化していて、低血圧と思われる症状が出ている場合は、早めに病院で検査してもらいましょう。
低血圧症には様々な症状があります。その代表的な症状は、めまい、頭痛、肩こり、耳鳴り、不眠、胃もたれ、吐き気、発汗、動悸、不整脈などです。上記でも説明したように低血圧症の患者数は男性よりも女性のほうが多いですが、上で挙げた各症状の程度は個人によって様々であり、同時に症状が現れる場合もあれば、特定の症状だけがあらわれる場合もあります。
なお、低血圧症は原則として治療の必要はないとされていますが、血圧の低下によって各臓器へ送られる血液量が減少してしまうことで、様々な自覚症状や臓器の機能障害があらわれることがあります。特に、血圧低下が重度になってしまうと、失神発作、一過性脳虚血発作をきたすこともあるため注意が必要です。
低血圧症は、「本態性低血圧」「起立性低血圧」「二次性低血圧(症候性低血圧)」の3種類に分類することができます。
本態性低血圧は、原因がよくわからないタイプの低血圧です。体質的な問題や遺伝などが関係している可能性があると考えられていて、低血圧の大半が本態性低血圧といわれています。
本態性低血圧のなかには症状が出るものと出ないものがありますが、血圧が基準値よりも慢性的に低くても症状がないものは治療の必要がないといわれています。
起立性低血圧は、ベッドから起き上がったときや椅子から立ち上がったときに、急にふらついてしまうタイプの低血圧のことです。これは一時的に血液が心臓に戻りにくい状態になることが原因であると考えられています。
二次性低血圧(症候性低血圧)は病気や薬が原因で引き起こされる低血圧です。例えば、心臓や腎臓の病気、抗うつ剤の副作用、外傷による多量出血など、血圧の低下を引き起こす原因が明らかである場合にはこれに分類されます。
低血圧症を改善するためには食事を見直すようにすることが大切です。特に、毎日の食事の中でタンパク質(肉類、魚類、納豆などの大豆食品)をしっかり摂取するように心がけること、さらに、不足しがちなミネラルを補うために、野菜や海草類を積極的に取ることが大切です。
ほかに、血液を心臓に戻す運動をすることで低血圧症の症状を改善することができます。低血圧症の人は脚や手などの末端部分の血管の収縮力が弱いため血液の循環が悪くなってしまいがちです。そのため、ふくらはぎの筋肉を動かすようにすると血液の循環が良くなります。
ただし、病気が原因の二次性低血圧の場合は原因となる病気やケガの治療が優先されます。また、薬が原因の二次性低血圧の場合は、薬の中止や変更が検討されます。
低血圧の基準は、最高血圧(収縮期血圧)が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下とされていますが、年齢や性別ごとで若干の違いがあり、個人差もあります。
毎日継続的に血圧を計測して、自分の平常値や血圧の変化を把握することが大切です。
そして低血圧には3つのタイプがあり、それぞれで考えられる原因が異なります。薬や病気によって引き起こされている場合はそれらに対処する必要がありますが、基本的には食事と運動によって改善していくことが大切なので、これを機にぜひ生活習慣を見直してみてください。