記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/6 記事改定日: 2020/4/6
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
CT検査などの画像検査を受けた際、偶然発見される病変のひとつに「膵嚢胞(すいのうほう)」があります。今回はこの膵嚢胞について、症状や原因、治療法などを解説していきます。
膵嚢胞(すいのうほう)とは、膵臓の内部や膵臓の周辺にできる「嚢胞」という液体がたまった袋のことをです。大きさは数mm程度の小さなものから10cmを超える大きさのものまでさまざまであり、発生する個数にも個人差があります。
膵嚢胞はCT検査やMRI検査などを受けた際に偶然発見されるケースが多く、近年では画像診断の技術向上とともに、発見されるケースが増えてきています。
膵嚢胞には、真性嚢胞と仮性嚢胞の2種類があり、真性嚢胞には先天性のものと腫瘍性のものがあります。腫瘍性のものの中には、がん化する恐れのあるものもあります。
膵嚢胞は、膵炎などの炎症性疾患によって形成されるものと、炎症とは関係なく形成されるタイプのものがあります。炎症に伴ってできる膵嚢胞はがん化の可能性はほとんどありません。しかし、炎症とは関係なく形成されるタイプの膵嚢胞はがん化することもあるので注意が必要です。
がん化しやすい膵嚢胞は、「腫瘍性嚢胞」と呼ばれますが、膵管内乳頭粘液性腫瘍・粘液性嚢胞腫瘍・漿液性嚢胞腫瘍などが代表的です。
最も患者数が多いのは膵管内乳頭粘液性腫瘍ですが、年に1%ほどががん化するとされており、嚢胞部以外に膵臓内にがんが発生することがあります。
また、粘液性嚢胞腫瘍と漿液性嚢胞腫瘍は中年以降の女性に多く見られ、粘液性嚢胞腫瘍はがん化する可能性が高いので手術による切除がすすめられます。一方、漿液性嚢胞腫瘍は粘液性よりもがん化する可能性は低いですが、サイズが大きくなる場合などは手術をすることもあります。
膵嚢胞の原因は、仮性嚢胞と真性嚢胞でそれぞれ異なります。
原因は詳しく分かっていない。何らかの原因で良性の腫瘍が悪性に変化したと考えられている。悪性化にはタバコやアルコールなどの生活習慣が関係している。
膵嚢胞ができても症状はほとんど出ないため、検査画像で偶然発見されるケースが多いですが、吐き気や嘔吐、腹痛などの症状が現れることがあります。
また、膵嚢胞が破裂すると腹部に細菌感染を引き起こし大量出血することがあります。大量出血すると、吐血・失神・意識の低下・重い腹痛などの症状が現れるため緊急に医療処置を受ける必要があります。
膵嚢胞の治療は嚢胞のタイプによって大きく異なります。
最も多く見られる膵管内乳頭粘液性腫瘍の場合は悪性化するケースは少ないため基本的には治療をせずに経過を見ていくこととなります。しかし、膵炎を頻繁に引き起こすケースやがん化が強く疑われる場合は手術による切除が検討されます。
粘液性嚢胞腫瘍はがん化する可能性が高いため基本的には手術が必要となります。そして、膵炎や外傷の後にできるタイプの仮性膵嚢胞で小さなサイズのものは、自然に消えることもあるため経過観察が行われますが、巨大化した場合は破裂する危険があるので、胃カメラで嚢胞内に溜まった液体を排出する治療や手術による切除が行われることも少なくありません。
膵嚢胞の中でも、慢性膵炎などが原因となって生じるタイプのものは食事に注意する事で治ることもあります。食事療法としては、膵臓に負担をかけないよう、脂肪分の少ない食事を心がけ、アルコールを控えることが大切です。
しかし、腫瘍性嚢胞の場合には食事療法を行っても嚢胞が消退することはありません。膵嚢胞の中にはがん化するタイプのものもあるため、自己判断で食事療法を続けず、定期的な経過観察を受けるようにしてください。
膵嚢胞は破裂しない限り、症状が出ることはほとんどありませんが、最初は良性のものでも悪性化することがあります。もし膵嚢胞ができた場合は、定期的に経過観察を続けていきましょう。
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