高齢者の足のむくみ、なぜ起こる?改善するにはどうすればいい?

2019/11/19

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

立ちっぱなしや座りっぱなし、歩きっぱなしなど、長時間同じ姿勢を取り続けていると足がむくむ、ということは経験則的に知っている人も多いでしょう。こうしたむくみは加齢とともに起こりやすくなるものですが、高齢者の足のむくみはどうして起こるのでしょうか?
また、こうしたむくみを改善するにはどうしたら良いのでしょうか?むくみの原因を知り、原因に合わせた改善を行いましょう。

高齢者が足のむくみに悩まされる原因は?

いわゆる「むくみ」は、医療用語では浮腫と呼んでいます。細胞組織の液体(細胞間質液)と血液の圧力バランスが崩れてしまい、細胞組織に水分が余分に溜まり、腫れてしまった状態のことです。よく、足やすねを指で圧迫し、押したあとがへこんだままなかなか戻らないと、むくんでいる状態だと判断することがあります。

皮膚を押してなかなかもどらなくなった状態のとき、皮下組織に正常なときの体重の5~10%もの余分な水分が溜まったため、むくんでいるとされています。ですから、むくみのないときの体重が60kgの人なら、このときむくみによって体重が63〜66kg程度に増えていると考えられるのです。

むくみは下肢に現れやすいのですが、これは重力によって水分が身体の下の方に溜まりやすくなるためです。そのため、寝たきりの人にむくみが生じる場合、背中や顔に出やすくなります。これは、ずっと同じ姿勢でパソコン作業をする会社員の人が夕方ごろには足がむくんでしまうのと同じで、寝たきりの人もずっと同じ姿勢でいることが多いからです。

こうしたむくみが起こる主な原因は、加齢によって血液のめぐりが悪くなったことだと考えられています。通常、身体の不要な水分は細胞から静脈やリンパ管に戻され、最終的には尿として排出されます。しかし、加齢によって血液のめぐりが悪くなると、細胞に溜まった水分を静脈やリンパ管に戻しきれなくなり、不要な水分が身体に溜まる「むくみ」となるのです。

加齢によって血液のめぐりが悪くなるのは、「心臓のポンプ機能が低下したこと」「足の筋肉量が減り、静脈血を上に押し上げる(心臓に戻す)働きが弱くなったこと」「皮膚の張りが弱くなり、細胞が余分な水分を静脈に押し戻しにくくなったこと」などが要因として挙げられます。

加齢以外の原因として、長時間同じ姿勢で居続けることはもちろん、塩分や水分の摂り過ぎ、お酒の飲み過ぎ、過労やストレスなどが挙げられます。

足のむくみを改善するには?

足のむくみの原因には加齢によるものと、それ以外のものがあります。塩分や水分の摂り過ぎやお酒の飲み過ぎ、長時間同じ姿勢でいることなどは毎日の心がけで改善できることですが、さらに加齢によって血液のめぐりが悪くなる3つの要因についても、以下のような方法で対処することができます。

心臓のポンプ機能を向上させる
  • ウォーキングの習慣を作る
  • 足の裏を床につけて、つま先を上下に動かす体操をする
  • 長時間椅子に座るときは、足の裏を床につけた状態で
血液を上に押し上げる
  • 椅子やクッションなどを使い、足を心臓より高い位置に上げる
  • 横になったり、昼寝をしたりする
  • つま先の上げ下ろし運動をしたり、少し歩いたりするなど、こまめな運動を心がける
皮膚の張りを強くする
  • むくみ対策用の着圧ストッキングや、包帯で圧力をかける
  • 専用の医療用ストッキングもありますが、伸縮性のある包帯や市販のストッキングでも代用可

足を上げたり横になったりすることがむくみの予防・解消になるのは間違いないのですが、心臓の機能が低下している高齢者の場合、足に溜まっていた水分が一気に上半身に戻ると、心臓や肺に大きな負担がかかることがあります。

このような姿勢を取るときは、急に足を上げたり横になったりするのではなく、起きた状態から段階的にゆっくり寝る姿勢、または足を上げる姿勢に変えていきましょう。介護ベッドにギャッチアップ機能がついているのであれば、それを使うと便利です。

このほか、以下のようなことがむくみ改善に有効です。

  • 室温や服装を調整し、身体を冷やさないようにする
  • 足をマッサージし、血液のめぐりを良くする
  • 食事は塩分控えめにし、タンパク質をしっかり摂取する

病気で足がむくむこともある?

足のむくみが生じる疾患として、以下の3つが挙げられます。

心不全
  • 心臓のポンプ機能が低下し、全身の血液循環がうまくいかなくなる
腎不全
  • 血液中の老廃物や余分な水分をろ過する腎機能が低下してしまう
深部静脈血栓症
  • 下肢(太ももやふくらはぎ)の深い部分の静脈に血栓ができる
  • 血栓が血流に乗って肺動脈に詰まると肺塞栓症を引き起こす
  • 肺塞栓症は呼吸困難を引き起こしたり、突然死に至る可能性がある。

これらはいずれも命に関わる疾患ですから、高齢者が足のむくみで病院を訪れたときは、まずこれらの疾患を発症していないかどうか複数の診療科で全身を検査します。しかし、このような特定の疾患がなくても、高齢者特有の生活習慣によって起こる「慢性下肢浮腫」というむくみが生じている可能性もあります。

慢性下肢浮腫は病気ではないので、検査を行ってもとくに異常はありません。この慢性下肢浮腫を、心不全や腎不全から起こっているのではないかと不安に思って受診する高齢者の人が近年増えているのですが、慢性下肢浮腫は日々の生活習慣の見直しで予防・解消できます。むくみが起きる前に生活習慣を改善しておけば、不安に思ったり不要な検査を受けたりしなくても済むというわけです。

高齢者の慢性下肢浮腫は、以下のような生活習慣が原因で起こります。

長時間座りっぱなしである
  • 椅子に座ったまま、あるいは車椅子に座ったまま一日を過ごすことも
  • 下肢の血流は、ふくらはぎの筋肉が収縮することで足首から心臓へ押し上げられる
  • 足を動かさないと、ふくらはぎの筋肉も動かず、下肢の血流が滞ってしまう
  • 下肢に溜まった余分な血液から水分が血管外へと漏れ出し、むくみにつながる
長時間立ちっぱなしである
  • とくに1人暮らしの高齢女性によく見られる
  • 1つ1つの家事に時間がかかり、料理・洗濯・掃除とずっと立ちっぱなしになる
  • 1日中立ちっぱなしでいることもあり、下肢の血流が滞ってむくみにつながる
歩行の動作が十分ではない
  • 筋力の低下・膝や足首の関節が悪い・パーキンソン病など
  • 小刻み歩行やすり足歩行をすると、歩いてもふくらはぎの筋肉が動かない
  • 筋肉によって下肢の血液を心臓まで押し上げられず、下肢に溜まってむくみにつながる

このように、日頃の生活習慣によって起こる慢性下肢浮腫は、主にふくらはぎの筋肉を十分に動かすことが大切だとわかります。ぜひ、高齢者本人の身近にいる家族やヘルパー、介護福祉士などがきちんと知識を持ち、きちんとふくらはぎを動かせるよう、少しずつこれらの生活習慣を改善していきましょう。

おわりに:高齢者の足のむくみの多くは「慢性下肢浮腫」という生活習慣によるもの

高齢者に起こりやすい足のむくみは「慢性下肢浮腫」という生活習慣によるものが多く、心不全や腎不全など、重大な疾患を発症したわけではないことも多いのです。慢性下肢浮腫の原因は、下肢に余分な血液が溜まってしまうことですから、長時間座りっぱなし、または長時間立ちっぱなしのような同じ姿勢を続けてしまわないよう気をつける必要があります。また、歩くときもふくらはぎの筋肉をしっかり動かすことを意識しましょう。

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