記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/25 記事改定日: 2020/7/21
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
文字を書こうとすると、手がふるえて書けなくなってしまう「書痙(しょけい)」。文字を書くほか、会話や料理、仕事の最中にふるえが起こることもあります。今回の記事では、書痙の原因や治療法について解説していきます。
書痙とは、一般的な動作には問題はないのに、字を書こうとしたり書き始めたりすると持続性の筋緊張が手に生じ、こわばりやふるえが起こり、字を書くのが困難になる症状です。文字を書くことを仕事にしている人に多いのが特徴ですが、その他の職業でもみられます。
上記の職業で発症することが比較的多く、特に20代から40代の男性に多いといわれています。
従来は精神的緊張によるもの、あるいは心因性の疾患と考えられてきましたが、1985年頃からの研究に基づき、大半は、脳内運動メカニズムの不調によるジストニアという病気が原因であることが判明しています。
書痙の主な症状は手の震えやこわばりです。字を書こうとすると手が痙攣することにちなんでこの病名がつけられていますが、実際は筆やペンを手にする場面に限らず、以下のようなさまざまな症状がみられます。
ちなみに、書痙を細かく分類すると、人前など緊張する場面で震えの症状が悪化するタイプと、1人でリラックスしているときでもこわばりの症状が発症するタイプがあるといわれています。
書痙を発症する原因はさまざまです。たとえば身体的な要因で発症することがあります。
ハンドルを握ったまま衝突事故を起こしたために手のひらの筋肉が固まってしまうなど、強いショックが肩に及んだことが原因で、書痙を発症するケースです。
ただ、上記のような原因はまれで、多くは精神的な要因によります。
あがり症、極度の緊張、文字を書くことへの極度の劣等感、神経症などが挙げられます。先ほどの分類でいうと、人前など緊張する場面で震えの症状が悪化するタイプは、この原因に基づくものと考えられています。この場合、心理療法や抗不安剤の服用が症状緩和に役立つことがあります。
現在では、ジストニアという脳の障害により無意識に筋肉がこわばってしまう不随意運動も発症の原因と考えられています。
ジストニアの症状は、手や足、首や体幹などさまざまなところに発症しますが、その原因は脳からの指令の異常にあります。先述の分類でいう1人でリラックスしている場面でも、震えよりもこわばりの症状が発症するタイプは、このジストニアによるものと考えられています。
この場合は手術による治療が有効と考えられています。
書痙の治療法として、薬物治療、ボツリヌス治療、精神療法、手術療法の4種類があります。ただし、手術以外は対症療法で、根本的に病気を治療する手段ではありません。
抗コリン剤、抗精神病薬、末梢性筋弛緩薬、抗不安薬、抗うつ薬などが用いられます
薬剤の筋弛緩作用を利用した治療法です。前腕や手の筋肉にボツリヌス毒素を注射し、緊張した筋肉を麻痺させます
不安を取り除くなどの効果が得られ、日常生活でのストレス軽減が期待できます。ただし、ジストニアから生じている書痙については効果が薄いと言われています
通常、「定位脳手術」という手法が用いられます。局所麻酔で前頭部に1cmの穴を開け、太さ1mm程度の器具(凝固プローベ)を挿入して、目的の部位を70~80℃に熱し凝固させるというものです。一般的に10日程度で退院可能とされます
書痙は、脳に生じた何らかの障害によって引き起こされるため、書痙の診断や治療は神経内科や脳神経外科など脳や神経を専門的に扱う診療科で行います。
医療機関によって行う治療法は異なりますが、薬物療法を主体的に行う場合は神経内科、手術やボツリヌス治療などを行う場合は脳神経外科が適しています。
また、上述した通り、精神的な要因で書痙が生じていると考えられる場合は精神科や心療内科での精神療法を行うこととなります。ですが、精神療法はあくまでも薬物療法などの基本的な治療に効果がない場合に行われる治療方法です。
自身で精神的な要因による書痙と考える場合でも、まずは神経内科や脳神経外科を受診するとよいでしょう。
書痙の原因はさまざまで、体へのショックの場合や精神的な原因、ジストニアが考えられます。治療法も原因によって異なります。治療するためには原因の正確な見極めが重要です。専門医に相談し、適切な指示を受けるようにしましょう。