記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/26 記事改定日: 2020/6/2
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腎嚢胞は、腎臓に囊胞という病変ができる病気ですが、原因や症状をご存知でしょうか。
今回は、腎嚢胞の発症原因や症状の経過、治療方法について解説していきます。
腎臓に関する一般知識として覚えておきましょう。
腎嚢胞とは腎臓に球状の袋(嚢胞)ができることです。嚢胞のなかには液体がたまっていて、以下のような特徴があります。
しかし、後天性の腎嚢胞では、悪性腫瘍を伴ったり腎嚢胞が多発することで腎臓の機能が低下することもあります。
また、無症状のことが多い傾向はありますが、嚢胞の大きさが5cm以上となると腎嚢胞による圧迫で腰部に鈍い痛みが出現することもあります。
腎嚢胞と腎がんはどちらも腎臓にできる病変であり、以下のような違いがあります。
腎嚢胞は、液体が溜まった袋状の良性腫瘍であり、複数個できたり非常に大きなものができることもありますが、通常は腎臓の機能に影響を及ぼすことがありません(ただし、経過観察が必要になります)。ほとんどが無症状のため、健康診断などで偶然発見されることも多いです。
腎がんは、50歳以降の男性に多く見られ、どんどん大きくなって周辺の臓器や血管に広がり、進行すると他部位に転移するようになります。
腎がんは、腎臓機能を低下させ、血尿や痛みなどの症状を引き起こし、大きくなると背中にしこりを触れるようになることもあります。
腎嚢胞と腎がんはCT検査などで容易に区別できますが、まれに腎嚢胞のように液体が溜まった袋を形成するタイプの腎がんもあるため判別が難しいこともあります。
腎嚢胞ができる明確な原因は現在のところわかっていませんが、腎臓に嚢胞が複数できてしまう病気である多発性腎嚢胞は遺伝が原因ということがわかっています(遺伝の場合、約50%の確率で遺伝をすることがわかっています)。
また、多発性腎嚢胞は慢性腎臓病のある人や何年も透析を受けている人によくみられ、透析治療を10年以上にわたって受けている人では50%以上の割合で腎嚢胞がみられるといわれています。
多発性腎嚢胞とは両方の腎臓にできた多発性の嚢胞が徐々に大きくなり、進行性に腎機能が低下する病気です。
遺伝的な病気であり、30~40歳代まではほとんど無症状で経過することが多く、多発性腎嚢胞の症状に気づくことなく一生を終える人もいます。
多発性腎嚢胞の初発症状として多いものとして挙げられるものは、体に衝撃を与えるスポーツや外傷を受けた後に血尿、腹痛・腰背部痛などです。
進行すると、腹部圧迫症状として腹部膨満感や食欲不振、高血圧などがみられるようになり、放置すると膿胞がどんどん大きくなってネフロンを圧迫してしまい、慢性腎不全を引き起こします。
多発性腎嚢胞の根本的な治療方法はありません。腎機能障害がすでにみられている場合には、腎機能保護を目的とした保存的治療を行います。
体内の水分量が足りなくなると、尿を濃くするために出てくるバゾプレシンというホルモンが出るようになり、これによって嚢胞が大きくなりやすくなると考えられています。
そのため、尿路感染や結石など二次的な症状の予防も兼ねて水分摂取を励行されます。また、高血圧で多発性腎嚢胞が悪化することもあるため、血圧コントロールも重要になってきます。
持続的な出血もしくは感染症を引き起こす嚢胞であった場合には、ドレナージによって膿胞にたまった水を体外に排液する治療が必要になることがあり、まれではありますが腎臓の一部や腎臓全体を切除する腎部分切除術または腎摘出術が必要になることもあります。
腎嚢胞の多くは無症状で、健康上の問題がないものがほとんどです。ただし、以下のような病気のリスクをともなう場合もあります。
また、脳動脈瘤の家族がいる人は、一般の人よりも脳動脈瘤を合併するリスクが高まるいわれています。
腎嚢胞の多くの場合は無症状であるものの、腎嚢胞が大きくなると腎臓を圧迫して水腎症や腎不全を引き起こしたり、腎嚢胞そのものが感染を起こしたり出血を起こすことがあります。
多くは無症状で経過していくので人によっては一生気づかない場合もありますが、家族に多発性腎嚢胞の人がいる場合や、慢性腎臓病を患っている、何年も透析を受けているという方は早めに検査をされることをおすすめします。
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