記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/10/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
夏の暑さに体がついていけず、体調を崩すことを夏バテと言いますが、近年では「残暑バテ」「秋バテ」の症状も注目されるようになってきました。今回は残暑バテ・秋バテの具体的な症状や原因、対策を紹介していきます。
秋になると朝夕は涼しくなってきますが、日中の気温はまだまだ高い日も多いです。この残暑・初秋の時期に現れる疲労感や食欲不振などの症状を、残暑バテ・秋バテと呼ぶことがあります。
夏バテは「7~8月の激しい暑さ」が原因になることが多いのに対し、残暑バテ・秋バテは暑さに加え「秋特有の気温や気候の変化に対応しきれないこと」が原因になることが多いといわれています。夏バテは暑さがやわらげば回復していきますが、残暑バテや秋バテは暑さだけが原因ではないため回復に時間がかかりやすいです。残暑バテも秋バテも正式な医学的な診断名ではありませんが、長期化すれば本格的な体調不良を引き起こし、感染症や他の病気のリスクも高まります。
残暑バテや秋バテは自律神経の乱れが主な原因と考えられています。自律神経の乱れを引き起こす要因としては、下記のものが挙げられます。
気温に合わせ、体温を調整するのは、自律神経の役割です。自律神経は、暑い時期には血管を広げて発汗を促すことで体温を下げてくれています。しかし、エアコンの効いた屋内と暑い屋外などのような「気温差の激しい場所」を何度も行き来すると自律神経は体温調節を強いられることになり、その疲労が蓄積することで自律神経の働きが乱れていきます。このときの疲労が回復しきれないまま、1日の気温差や日ごとの気候の変化が激しい秋に突入してしまうと、体温調整機能がうまく働かなくなり、残暑バテ・秋バテを引き起こすことがあります。
暑さから冷たい飲食物ばかり摂っていると、少しずつ内臓が冷えていきます。内臓の冷えは便秘や下痢、食欲不振、血行不良による全身の冷えなど、自律神経の乱れを引き起こす要因です。夏に起こった内臓の冷えが残暑バテ・秋バテの症状を引き起こすこともあり、涼しくなってからも冷たい飲食物の食べすぎには注意が必要です。
夏は暑さも厳しく、汗をかいたことを自覚しやすいので、こまめな水分補給を心がけている人も多いと思いますが、涼しく過ごしやすくなると水分補給の意識が薄れがちです。汗をかいていなくても、何もしないで寝ているだけでも、体の水分は減っていき脱水状態を引き起こします。脱水は疲労感や食欲不振などの症状を引き起こし、自律神経の不調の原因になります。最近は秋に入っても日中の暑さが続き、夜まで暑さが続く日も見受けられます。秋は「かくれ脱水」が増える時期ですので、夏と同様にこまめな水分補給を心がける必要があります。
年齢問わず、残暑バテ・秋バテになってしまう可能性はありますが、特に高齢者はなりやすいとされています。
気温や湿度が下がる秋冬にかけては、風邪やインフルエンザなどの感染症が流行しやすいです。高齢者がこれらの感染症にかかると重症化しやすく、残暑バテ・秋バテで体力や免疫力が落ちれば、さらに重症化のリスクが高まります。ご家族に高齢者がいる方は、体調の異変がないか目を向けてあげてください。
残暑バテ・秋バテを予防するには、自律神経を整え疲労を回復させるための対策が必要です。以下の生活習慣を見直し、できるところから改善していきましょう。
食事は3食規則正しく食べ、疲労回復のためには、たんぱく質、ビタミン類、ミネラル類を意識して摂るようにしましょう。たんぱく質が豊富な肉類・魚類・大豆製品・乳製品などは毎食1品は入れるようにし、緑黄色野菜を積極的にとり入れましょう。
以下の食材は残暑バテや秋バテの解消に役立つ「秋が旬の食材」とされているので、参考にしてください。
疲労回復のためにも自律神経を整えるためにも、睡眠は大切です。毎日6~7時間の睡眠時間を確保し、できるだけ早寝早起きを心がけてください。また、体内時計をリセットするためにも、起床後には窓越しでも構わないので、日光を数分浴びるようにしましょう。
ストレス社会である現代は交感神経が優位になりやすいです。入浴はリラックスを促し、自律神経のうち副交感神経が優位になることを助けます。副交感神経へ適切に切り替わることができれば、自律神経のバランスが整いやすくなり、睡眠の質の向上にもつながります。もちろん、血行促進にも役立ちます。
ただし、熱すぎるお風呂や長風呂、夜遅くの入浴は、交感神経を優位にさせやすく入眠を妨げるためおすすめできません。入浴は寝る2時間前までを目安に、38~40℃のぬるめのお湯に10~30分ゆっくりと浸かるようにしてください。
運動で筋肉を動かすことは全身の血行促進に効果的です。また、適度な運動で軽い疲労感を得ることはリラックスを促し、質の高い睡眠を得ることにも役立ちます。
ただ、激しい運動は疲労や自律神経の乱れの原因になるので、ウォーキングやジョギングなど「汗ばむ程度の有酸素運動」を習慣化しましょう。運動に慣れていない人は、ラジオ体操や散歩でも構いません。
屋内外の気温差が5℃を超えないよう室温調節することが自律神経の負担軽減につながるとされていますが、室温が28℃よりも高いと熱中症のリスクが高まります。温度計で室温を確認しながらエアコンの温度設定を調節しましょう。寒いと感じるときは、上着やひざ掛けを使いながら調整するようにしてください。
残暑バテ・秋バテは、暑さだけでなく秋特有の気候や夏の疲労の蓄積が原因で引き起こされるものです。疲労感や食欲不振などの症状でお悩みの方は、日々の食事、睡眠、入浴、運動などを見直して、回復を早めていきましょう。