記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/3/29 記事改定日: 2020/10/12
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳梗塞を発症すると、運動麻痺や言語障害などのさまざまな後遺症が残り、寝たきりになってしまう恐れもあります。これを防ぐために大切なのがリハビリです。リハビリに必要な入院期間やサポートしてくれる家族に理解してほしいポイント、再発を予防法などを紹介していきます。
脳梗塞を起こすと、運動麻痺をきっかけに寝たきりになることで、以下のような二次的な問題(廃用症候群と言います)を引き起こすようになります。
そこで重要なのが、急性期(発症から2週間以内の時期)の入院中のリハビリです。リハビリはこれらの機能低下を防止し、寝たきりの長期化を防ぐと同時に、早期の社会復帰と日常生活での自立を目的とします。
脳梗塞のリハビリの方法は、「急性期」「回復期」「生活期」によって異なります。
急性期のリハビリは、廃用症候群を予防するために、発症から48時間以内に始めるのが理想です。この時期のリハビリは、基本的に寝たままの状態で行います。体の向きを変えて床ずれを防いだり、関節が固まらないよう手足を正しい位置に保ったり、筋肉や骨が弱くなるのを防ぐために麻痺している手足の関節を動かしたりします。
回復期(発症から3〜6ヶ月までの時期)のリハビリは、入院から1〜3週間が経った頃から開始します。具体的には以下の方法でリハビリを行います。
立つ、座る、車椅子に乗り移るなどの離床訓練を行います。
食事や入浴、トイレなどの日常生活に必要な動作ができるようにする訓練のことです。
運動麻痺や言語障害、高次脳機能障害など、それぞれの後遺症に合わせた訓練を行います。急性期になると脳の血流は改善し始めているので、適切なリハビリを行うことで、麻痺や学習機能が改善するようになります。
ボツリヌス菌の毒素を筋肉に注射することで、筋緊張を緩和します。
手足を動かす神経を電気で刺激し、運動を学習させる方法です。
生活期(発症から3〜6ヶ月以降の時期)のリハビリは、患者さんの自宅や施設などで行います。手すりや踏み台などで段差をなくし、転倒を防止しながら、杖や車椅子を使って積極的に体を動かすようにしていきます。
重症度に応じて入院期間はかなり差がありますが、急性期のリハビリなどで入院する期間の平均は20日前後です。ただし、歩行困難などの重篤な運動障害が見られる場合は、1ヶ月程度入院した後、リハビリの専門病院へ転院する必要が出てくることもあります。
家族や周囲の人は脳梗塞で倒れた人のリハビリをサポートするために、長期的な目標を達成できるよう促したり、時間の経過とともに症状が改善することを伝えるなど、感情面でのサポートをすることができます。また、たとえば言語機能に障害があるときはゆっくり話してあげるなど、相手の状況にあわせることも大切です。
また、リハビリの効果が現れるまで時間がかかるためときにイライラすることもありますが、ほんのわずかな進歩にも気づき、ほめることで、病気になった人のモチベーションを高めることができます。
脳梗塞で倒れたことがある人はまるで性格が変わったかのような振る舞いをしたり、場合によっては不合理な行動をとることもありますが、これは多くの場合脳梗塞によって生じた脳の障害によるものです。
患者はあなたに向かって怒ったりするかもしれませんが、そのようなときは反論せず、相手の気が済むまで怒らせたままにしてあげてください。回復が進むにつれ、病気になる前と同じ状態に戻れることが多いことを忘れないでください。
患者のサポートをしている人自身の心と体のケアも大切です。自分自身の身体的、心理的な休息を無視しないでください。サポートの合間に友だちと遊びに行ったり、レジャーを楽しんだりする時間を入れるようにしておくと、気持ちの余裕ができて状況にうまく対処できるようになります。
脳梗塞は再発のリスクがある病気です。このリスクを改善するため、以下のような治療薬を長期にわたって服用する必要があります。
また、再発リスクを低下させ健康状態を改善するために、以下のようなアドバイスを受けることもあります。
これまで日常生活の中で行ってきたことは倒れた後も行うことができますが、ここではとくに気にされる以下の2つの行為について、可能かどうかをアドバイスします。
基本的に、脳梗塞で倒れた後にセックスをしても再発するリスクにはなりません。しかし、脳梗塞の治療薬の中には性衝動を減退させる副作用が出るものもあります。支障があるなら、医師に相談して他の薬を処方してもらいましょう。
また、発作後に勃起不全を経験する男性もいます。このような場合は、主治医やリハビリの担当スタッフに相談すると治療法を紹介してもらえます。
脳梗塞で倒れた後に再び運転できるかどうかは、長期的な障害の程度や運転する車両のタイプによって変わります。特に障害については、運転行為を危険にする身体的な障害だけでなく、集中、反応時間、意識といった認知面での障害がどの程度発症しているかが影響します。
疾患ごとに診断書の用紙があるため、最寄の警察署交通部または運転免許センターへ相談してみてください。
脳梗塞を再発すると次のような症状が現れます。
これらの症状が現れたときはできるだけ早めに病院に行きましょう。また、前回の脳梗塞の後遺症がある人は症状の変化に気づきにくい場合があります。体のだるさなど普段と異なる体調の変化があるときも早めに病院へ行くようにしましょう。
脳梗塞のリハビリの方法は、急性期、回復期、生活期によってそれぞれ異なります。リハビリで回復するには家族のサポートも欠かせないので、根気よく続けていくことが大切です。本人も周囲の家族も無理なくリハビリを進められるように、休息や生活習慣の見直しなどを協力して行っていきましょう。