骨密度を維持するために、どんな運動に取り組めばいいの?

2019/10/14

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

骨密度という言葉を聞いたことはありますか?とくに加齢にともなってよく聞かれるこの言葉ですが、例えば骨粗鬆症(こっそしょうしょう)ではこの骨密度が低く、骨がスカスカになってしまうことで折れやすくなるとされています。
骨密度が減少する原因とは?運動が良いって聞いたけど?食事からも予防できる?など、骨密度に焦点を当てて解説します。年齢を重ねても元気に活動できるよう、丈夫な骨を保ちましょう。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

骨密度が減少する原因は?

骨の強度が低下する主な原因は、「女性ホルモンの低下(エストロゲン欠乏)」「加齢」「生活習慣病」の3つが挙げられます。また、生活習慣病とまでは診断されなくても、生活習慣の乱れなどが長期間続き、体の酸化ストレスが強くなると、骨の「骨基質(こつきしつ)」という部分に変化が起こります。

骨の新陳代謝は、約2週間で破骨細胞によって骨の分解・吸収が行われ、そこに約4カ月かけて骨芽細胞が集まって新しい骨を作る、というものですから、一連のサイクルにはトータルで約5カ月程度かかります。若い人では約2年かけて全身の骨が入れ替わりますが、お年寄りでは約5年かけて全身の骨が入れ替わるとされています。

しかし、エストロゲン(女性ホルモン)の量が低下すると、骨の吸収が通常よりも亢進し、骨芽細胞が集まって新しい骨を作る骨形成が追いつかなくなります。女性では加齢がエストロゲン欠乏と酸化ストレスの両方に関わってくる要因ですから、高齢女性ではとくに石灰化障害など、骨の強度低下につながるさまざまな問題が引き起こされるのです。

骨のつくりはよく鉄筋コンクリート造に例えられますが、コンクリート部分に当たるのが「骨塩(こつえん)」と呼ばれるカルシウムとリン酸(ハイドロキシアパタイト)で構成される部分で、鉄筋部分に当たるのが「骨基質(こつきしつ)」と呼ばれるタンパク質(Ⅰ型コラーゲン)で構成される部分です。

骨の強度とは、7割が骨密度、3割が骨質で表されるとされます。骨密度とは、骨塩と骨基質のうち骨塩の部分を計ったものです。骨基質で表される「骨質(こつしつ)」には「構造特性」と「材質特性」の2つがありますが、この骨質を適切に測定できるものがまだありません。そのため、現在は骨の強度を骨密度だけで表しているのです。

骨密度の維持に運動がいい理由は?

骨密度を維持するために、適度な運動が効果的だとされています。この理由は、運動によって骨に負荷(刺激)をかけ、骨量を増やす効果が期待できることに加え、筋肉やバランス感覚を鍛えることで、転倒による骨折を防ぐということもあります。とくに、バランス運動やストレッチなどを行うことで、転倒のリスクを軽減できることがわかっています。

骨密度を高める運動としては、有酸素運動・ウォーキング・筋力トレーニングなどが挙げられます。とくに、加齢によって痛めやすい腰椎や大腿骨近位部の骨密度を高める効果があることが報告されています。これらの運動は生活習慣病の予防にも効果的ですので、ぜひ積極的に取り入れていきましょう。ただし、背中や腰にもともと痛みなどの症状がある場合は決して無理をせず、行える範囲の運動から行いましょう。

また、筋力トレーニングではとくに背筋を強化すると、椎体骨折を予防することができます。その他、太極拳やヨガなども骨密度を高めるのに有効だとされています。転倒・骨折予防のためには以下のような「片足立ち運動」を行うと良いでしょう。

  1. 姿勢をまっすぐにし、つかまる場所があるところで行う
  2. 目を開けて前を向いたまま、床につかない程度に片脚を上げる
  3. 左右1分間ずつ、1日3回行う

この片足立ち運動は、時間も短く、特別な道具も必要ありませんので、誰でも手軽に行えます。姿勢をまっすぐにすることや、転倒防止のために必ず近くにつかまれるものがある場所で行うことなどに気をつけながら、正しい姿勢と方法で行いましょう。

骨密度の維持には食事の見直しも大事!

骨密度を維持するためには、骨を作る材料の補充、つまり食事から栄養素をしっかり摂取することも大切です。骨の材料となる栄養素は「カルシウム・ビタミンD・タンパク質」で、骨の形成をサポートしてくれるものに「ビタミンK・マグネシウム・亜鉛・カロテノイド」などがあります。これらを多く含む以下のような食物を意識的に摂取すると良いでしょう。

カルシウムを多く含む食品(1日の摂取目標:700~800mg)
牛乳・乳製品・小魚・緑黄色野菜・大豆・大豆製品
ビタミンDを多く含む食品(1日の摂取目標:10~20μg)
魚類・きのこ類
ビタミンKを多く含む食品(1日の摂取目標:250~300μg)
納豆・緑色野菜
タンパク質を多く含む食品(1日の摂取目標:50~60g)
肉・魚・卵・豆・牛乳・乳製品

とくに、カルシウムはビタミンDと一緒に摂取するとより吸収されやすくなりますので、カルシウムを多く含む食品とビタミンDを多く含む食品はぜひ一緒に摂取すると良いでしょう。

逆に、骨密度を低下させるリスクがあり、摂りすぎないよう注意が必要な食品は以下のようなものです。

  • リンを多く含む食品(加工食品や一部の清涼飲料水など)
  • 食塩
  • カフェインを多く含む食品(コーヒー・紅茶など)
  • アルコール

積極的に摂取した方が良いものと、摂取しすぎない方が良いものに気をつけながら、バランスの良い食生活を心がけましょう。

おわりに:骨密度は運動や食事によって維持することができます

骨密度は、女性ホルモンの減少・加齢・生活習慣病などによって減少します。つまり、何も対策をしなければ年齢を重ねるごとにどんどん骨密度は減少してしまうのですが、適度な運動やバランスの良い食生活によって骨密度を維持することができます。

とくに有酸素運動やバランスの良い食生活は、生活習慣病予防の点から見ても大切なポイントです。ぜひ、積極的に生活に取り入れていきましょう。

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