記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/29 記事改定日: 2020/9/1
記事改定回数:2回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
溝状舌(こうじょうぜつ)は、舌にひび割れなどの溝ができている状態です。溝に溜まった汚れが原因で口臭が発生することがあります。この記事では溝状舌の治し方やケア方法、効果が期待できる漢方薬についてまとめています。
溝状舌とは、舌の表面にひび割れや溝ができる状態のことを言います。
溝の大きさやかたちは人によって異なり、縦に大きな溝が入っていることもあれば、細かい横向きの溝が何本も入っている場合もあります。
とくに痛みなどの症状があるわけではなく、発症しても軽度であれば日常生活で大きな支障もないでしょう。深刻な問題が起こることは少ないとされています。
ただ、舌に溝ができると汚れがたまりやすくなるので、口臭が強くなったり、味覚異常が生じたりします。また、溝状舌の患者の一部が、舌の表面に地図のような白いまだら模様が浮かび上がる地図状舌を併発するのも特徴です。
溝状舌の原因には生まれつきの先天性によるものと、生まれた後に発症した後天性のものがあります。
後天性の溝状舌は、舌の粘膜を作るのに必要なビタミンB12の不足が主な発症原因です。一方、メルカーソン・ローゼンタール症候群の症状のひとつとして現れる場合があります。
ビタミンB12の不足は、悪性貧血が原因の胃切除手術の後に起こりやすく、術後に舌の痛みやヒリヒリ感、灼熱感と一緒に溝状舌を発症するのが特徴です。悪性貧血に伴う溝状舌は、ハンター舌炎とも呼ばれています。
メルカーソン・ローゼンタール症候群は、溝状舌のほかにも、顔面神経麻痺や唇が大きく腫れる肉芽腫性口唇炎などの症状が出る病気です。
痛みを伴わない先天的な溝状舌を治療する方法はありません。
ただ、舌の表面に「舌苔(ぜったい)」と呼ばれる白い汚れがたまって口臭が発生しやすくなるので、清潔に保つためのセルフケアは必要になります。
舌苔は、歯ブラシなどで除去すると舌の表面を傷つけてしまうおそれがあるので、必ず専用の舌ブラシを使って除去してください。
溝状舌によって舌に痛みが生じている場合は、アズレンスルホン酸ナトリウムなどの消炎剤が入ったうがい薬を使用すると効果的とされています。
溝状舌の人がドライマウスなると舌に亀裂や出血、痛みなどを生じることがあります。また、溝に舌苔などが溜まりやすくなるため口臭が強くなることもあります。
このような症状を防ぐためにも、溝状舌の人は適切なセルフケアをすることが大切です。
具体的には
などの対策がおすすめです。
また、溝状舌のケアとしては、歯の丁寧なブラッシングはもちろんのこと、舌専用のブラシを使用したり、柔らかいガーゼなどを用いて歯のブラッシング後に汚れをふき取るようにしましょう。
溝状舌は炎症や痛みなどがない限り治療が必要な病気ではありません。
しかし、上述したように舌苔が溜まりやすいことやドライマウスにやりやすいことで様々なトラブルを引き起こします。そのため、炎症や出血などがある場合は、口の中にも使える炎症を抑えるための塗り薬などが使用されることがあります。
また、日ごろから口の中を清潔に保つために定期的な歯垢除去などのクリーニングも必要となります。
東洋医学では、口内の粘膜や唾液不足が一因と考えられる溝状舌の改善に、以下のような漢方薬が効果的だと考えられています。
漢方薬の効果には個人差や体質差がありますので、服用するときは注意しましょう。また、他の薬を飲んでいるときは飲み合わせの問題が起こる可能性があるので、必ず担当医に相談してください。
先天性の溝状舌の場合、溝状舌の状態を解消する治療法はありません。しかし、口腔内の健康のために、舌ブラシを使った舌苔除去などの毎日のセルフケアをすることで、口臭悪化の予防になります。痛みがある場合は医師に相談し、自分の症状にあったセルフケアをしていきましょう。