パキシル®︎を服用すると、どんな効果が得られるの?

2019/9/11

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

パキシル®︎は精神薬の一つで、抗うつ薬として非常によく知られている薬です。2000年に販売が開始された比較的新しい薬で、それまで使われていた抗うつ薬と全く違う作用機序でうつ病に対する効果を表したことから、新しい抗うつ薬としても一気に有名になりました。

そんなパキシル®︎には、詳しくはどんな効果があるのでしょうか?また、副作用とその対処法についても知っておきましょう。

パキシル®︎ってどんな薬?

パキシル®︎とは、憂うつな気分や不安感を和らげ、意欲を高める効果のある薬で、うつ病や不安障害などの治療に使います。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)として、国内で2番目に使われ始めました。セロトニン系の神経にだけ選択的に働くため、従来の抗うつ薬に多かった「口の渇き・便秘・心毒性」などの副作用が軽減されました。

これらの特徴から、従来の抗うつ薬とは違う新しい抗うつ薬であるとして「第3世代の抗うつ薬」とも呼ばれ、現在ではうつ病治療の主要薬として使われています。また、1日1回の服用で済む点からも、飲み忘れが少なく使いやすい薬です。

普通錠(速放錠)に加え、放出制御製剤のパキシル®︎CR錠が発売されています。CR錠は普通錠に比べて有効成分がゆっくりと放出されるため、血中濃度の上昇がよりゆるやかになっています。この特性により、吐き気などの副作用が多少抑えられるというメリットがあります。

まれな例ではありますが、人によっては精神的に変調をきたし、衝動的・攻撃的になるなどかえって悪い結果を招くこともあります。また、急に薬をやめるとさまざまな症状が出てしまう離脱症状を起こしやすいので、薬をやめるときには徐々に減薬するなど十分に注意しながら減らしていく必要があります。他のSSRIと比べても、これらの副作用がやや起こりやすいと言われています。

パキシル®︎の効果は?

パキシル®︎は同じSSRIと比べてもセロトニンの再取り込み阻害作用が強く、抗うつ作用と抗不安作用を併せ持つという性質があります。このため、うつ病の他にもパニック障害・強迫性障害・外傷後ストレス障害(PTSD)などに対する効能もあると適応が認められています。

パキシル®︎はその他にも、他のSSRIと比べるとわずかにノルアドレナリンに対する作用や抗コリン作用があることがわかっています。さらに、薬の濃度の増加が早いという特徴もあります。抗コリン作用は気持ちを落ち着ける効果があることから、不安に対しても効果が期待できます。また、わずかではありますがノルアドレナリンを増やす効果も期待できます。

これらのことから、他のSSRIと比べて薬がスッと効き、効果の実感が得られやすいという特徴があります。

パキシル®︎の副作用は?

パキシル®︎は比較的安全性の高い抗うつ薬と言われていて、従来の抗うつ薬によく見られた口の渇きや便秘などの副作用は少ないです。パキシルの副作用が見られる場合、以下のようなものがあります。

  • 吐き気、食欲不振、口の渇き、便秘、下痢
  • 眠気、不安感、イライラ、めまい、頭痛、倦怠感、震え
  • 射精遅延・勃起障害などの性機能異常、月経不順
  • 発汗、尿が出にくい、動悸、かすみ目
  • 出血しやすい
  • 発疹、発赤、かゆみ

また、とくに飲み始めに胃腸症状が現れる場合もあります。これは吐き気や胃薬で対処できますので、吐き気や下痢などの症状が出た場合は医師に相談しましょう。飲み始めに精神的な変調が出る場合もありますが、主治医と相談の上、服用を続けておさまってくるようなら問題ありません。飲み始めの副作用が落ち着いた後は比較的副作用が少なく、長期の維持療法に使うにも適した薬であると言えます。

重い副作用はほとんどありませんが、以下のような症状が出ることもあります。

セロトニン症候群
落ち着かない、不安、興奮・混乱、不眠、体の震えやびくつき、めまい、発熱、頻脈など
悪性症候群
動かず黙り込む、体の硬直、飲み込めない、急激に体温が上がる、精神変調、意識障害など
幻覚やせん妄など
現実にはない声や音が聞こえる、実際にいない人や動物・昆虫が見える、もうろう状態になる、取り乱す、けいれん発作など
抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
倦怠感、のどが渇く、頭痛、吐き気、けいれん、意識がもうろうとする、意識障害など
肝機能障害
倦怠感、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、黄疸、尿が茶褐色になるなど
横紋筋融解症
手足のしびれ・こわばり、脱力、筋力低下、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿など
重篤な血液成分の異常
発熱、のどの痛み、口内炎、倦怠感、皮下出血、鼻血・歯肉出血など

この中で比較的注意が必要なのが「セロトニン症候群」で、SSRI全体に言える特異的な副作用です。SSRIのセロトニン再取り込み阻害作用によってセロトニンが増えた結果、増えすぎて脳内のセロトニン濃度が過剰になってしまったことで起こる副作用です。上記のような症状が現れ、なにか普段と違うと感じた場合は、すぐに医師に連絡しましょう。

パキシル®︎の副作用にどう対処すればいい?

パキシル®︎の副作用のうち、重い副作用やセロトニン症候群などの場合は、自分で対処できませんので、すぐに医療機関に連絡することが必須です。しかし、飲み始めにどうしても起こる一時的な副作用や、生活習慣などで改善できそうな副作用の場合、なんとかなりそうなら自分で対処しながら様子を見ることが必要になります。

パキシル®︎の副作用の中でも、自力でなんとかなりそうで、かつよく気にされるものとして「眠気」「太る」「胃腸症状」「頭痛」「性機能障害」の5つがあります。これらの対処法について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

眠気や不眠が現れたときは?

パキシル®︎の承認時や発売後の副作用調査によると、不眠が1.38%、眠気が9.41%とされています。このように眠気が多い原因として、パキシル®︎には副交感神経の働きを抑える「抗コリン作用」があることが上げられます。また、パキシル®︎には不眠になりやすい傾向もありますので、夜間に十分な睡眠が取れなかったり、睡眠の質が悪くなったりして、日中に眠気が増してしまうということも考えられます。

そのため、パキシルで眠気が現れたときは、以下のような対処法が考えられます。

  • 服用のタイミングを就寝前に変える
  • 服用を2回に分ける
  • 薬の量を減らす
  • 他の抗うつ薬に変更する

逆に、不眠の症状に悩まされる場合は、以下のような対処法が考えられます。

  • 睡眠の質を改善できるような工夫をする
  • 服用のタイミングを朝食後に変える
  • レスリンなど、鎮静系抗うつ薬を追加する
  • 薬の量を減らす
  • 他の抗うつ薬に変更する

体重の増加が見られたときは?

パキシル®︎が食欲や体重に影響する要素として、「抗ヒスタミン作用や抗5HT2c作用による直接的な食欲増加」「セロトニンによる代謝抑制」「抗コリン作用によるのどの渇き」が挙げられます。食欲増加作用は考えられるものの、パキシル®︎発売後半年の副作用報告によれば、体重増加は0.27%、体重減少は0.06%となっています。つまり、そこまで太りやすい薬とは言えないのです。

一般的に、SSRIは飲み始めの数ヶ月に副作用として胃腸症状が出やすいこともあり、どちらかと言えば痩せる方向に行く傾向が多いのです。副作用が落ち着くとともに心身が回復してくるに従って、体重が増える方向に向かっていきます。

そんなSSRIの中では、パキシル®︎は太りやすい(という報告が多い)薬です。効果を実感しやすく回復しやすいこと、抗コリン作用による口の渇きがあること、などによると考えられます。さらに、パキシル®︎ではなぜか突然発作的に過食が起こる人がいます。10kg単位で体重が増加してしまった場合は、このような過食が認められることが多いです。

これらのことから、パキシルで太ってしまった場合には、以下のような対処を行うと良いでしょう。

  • 生活習慣を見直し、適度な運動習慣を取り入れる
  • 食事の際はよく噛むようにする
  • 薬の量を減らす
  • 他の抗うつ薬に変更する

胃腸症状が現れたときは?

胃腸症状は、パキシル®︎の副作用の中でも最も多いものです。薬の承認時と使用後調査を合わせると、悪心10.12%、嘔吐1.10%、下痢1.13%、便秘2.77%となっています。こうした胃腸症状が現れる理由としては、パキシル®︎がセロトニンを刺激するからです。セロトニンは脳だけでなく胃腸にも作用して動かすためです。

ただし、こうした胃腸症状は一般的に飲み始めに現れるだけであり、身体が薬に慣れていくに従って落ち着いていく傾向があります。ですから、基本的には「慣れるまで待つ」ということになりますが、どうしても耐えられない場合は以下のような対処法がありますので、医師に相談しましょう。

  • 薬を少しずつ増量する
  • 胃腸症状を和らげるガスモチンなどを併用する
  • 服用を2回に分ける
  • 他の抗うつ薬に変更する

頭痛が現れたときは?

薬の承認時と使用後調査を合わせると、頭痛は2.88%の人に起こっています。パキシル®︎で頭痛が起こるタイミングは大きく分けて2つ考えられ、薬の飲み始めと減量・中止するときの離脱症状です。頭痛を生じる理由は詳しくわかっていませんが、セロトニンが関係しているのではないかと考えられています。

セロトニンは脳血管を収縮させる作用がありますが、逆にセロトニンが分解されると反動で血管が急激に拡張します。そしてその周囲を取り巻いている三叉神経から痛みの物質が作られ、頭痛につながっていると考えられています。しかし一方で、パキシル®︎をはじめとした抗うつ薬は片頭痛に対する予防効果があることもわかっています。ですから、セロトニン濃度が安定することで脳血管の拡張を予防し、さらにセロトニンによって痛みを抑制する効果も期待できます。

ですから、基本的にはパキシル®︎で頭痛が生じた場合、胃腸症状と同じように「慣れるまで待つ」ということになります。しかし、どうしても耐えられない場合は以下のような対処法があります。

  • 服用のタイミングを就寝前に変える
  • 痛み止めを使う
  • 薬の増量ペースをゆるやかにする
  • 他の抗うつ薬に変更する

性機能障害が現れたときは?

パキシル®︎による性機能障害は、表に出てきにくいが多い副作用と言われています。なかなか相談しにくいため、数字の上では現れにくいのですが、パキシル®︎を服用した際の性機能障害はジェイゾロフト系と並んで抗うつ薬の中でも非常に多く、約7~8割の人に生じているという報告もあります。

パキシル®︎で性機能障害が起こる理由は、セロトニン2A受容体作用や抗α1作用が関係していると言われています。性欲低下・勃起不全・オーガニズム低下・射精障害などはパートナーとの関係にも影響してくるため、軽視することもできません。慣れるまで待つのがつらいという場合は以下のような対処法がありますので、医師に相談してみましょう。

  • 薬の量を減らす
  • レスリンなどを追加する(※持続性勃起という副作用を転用する)
  • 勃起不全に対して、ED治療薬を使う
  • 他の抗うつ薬に変更する

パキシル®︎服用中に気をつけることは?

パキシル®︎の服用中には、以下のようなことに気をつけましょう。

飲み合わせ
  • パーキンソン病治療薬「セレギリン(エフピー)」との併用は重篤なセロトニン症候群を引き起こすリスクがあるため禁忌
  • 安定薬「ピモジド(オーラップ)」との併用は重い不整脈を引き起こすリスクがあるため禁忌
  • 高血圧や不整脈の治療に用いるβ遮断薬も上記同様、注意が必要
  • 乳がんの薬「タモキシフェン(ノルバデックス)」は血中濃度を減少させ、効果を弱めてしまうため注意
  • その他、飲み合わせに注意すべき薬が多いので、もともと飲んでいる薬があれば必ず医師に伝える
使用に当たって
  • 有効量には個人差があるので、少量からスタートして良い効果が得られる必要最小限まで段階的に引き上げていく
  • 飲み始めや増量時にかえって気分が不安定になるようなら、医師に相談する(※重篤な気分変調による敵意や攻撃性・衝動性から事故や犯罪につながってしまった事例もある)
  • 薬をいったん飲み始めたら、自己判断で中止しない(※離脱症状を防ぐ)、飲み忘れにも注意する
  • うつ病では、症状が良くなってからもしばらく少量を続けることが多いため、半年〜2年程度は飲み続けることになる。医師の指示を守って服用する
妊娠・授乳中は
  • 危険性がとくに高い薬剤というわけではないものの、胎児へのリスクがやや高まるおそれがある
  • 妊娠中は原則として中止、リスクよりも治療継続が良いと医師に判断されれば飲み続ける場合もある
  • 服用中に妊娠がわかった場合は、すぐに主治医に相談し、自己判断で中止しない
日常生活について
  • アルコールと一緒に飲むとさまざまな副作用が出やすいため、飲酒はできるだけ控える
  • 健康食品やハーブティーとして販売されている「セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)」の飲食は避ける(※併用すると副作用が強まるリスクがある)
  • 眠気やめまいを起こすことがあるため、車の運転や危険な機械の操作などは控える
  • 症状が落ち着いてきたら、生活や職場の環境調整、認知療法などを合わせて行うとよい

パキシル®︎は飲み合わせが禁忌の薬や、注意が必要な薬が非常に多いです。そのため、パキシル®︎を処方される前に服用している薬があれば、必ずすべて医師に伝えましょう。また、薬ではありませんが、「セントジョーンズワート」の健康食品やハーブティーなどは、併用すると脳内のセロトニン濃度が増えてセロトニン症候群を引き起こす可能性がありますので、念のため避けておきましょう。

おわりに:パキシル®︎は抗うつ薬「SSRI」の一つだが、パニック障害などにも適応される

パキシル®︎はSSRIと呼ばれる抗うつ薬の一つで、基本的には脳内のセロトニン濃度を増やして憂うつな気分や不安感を和らげ、意欲を高める作用があります。しかしそれだけではなく、パニック障害・強迫性障害などにも適応が認められています。

パキシル®︎の重篤な副作用はごくまれですが、セロトニン症候群や気分変調には注意する必要があります。衝動性や攻撃性、不安や興奮などが生じた場合、すぐ医師に相談しましょう。

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