食後にひどい眠気が…。それ、「血糖値スパイク」かもしれません

2019/10/9

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

昼ご飯を食べた後、なんだか眠くなってしまって、午後の授業や仕事に集中できないという状態は誰しもよく経験することでしょう。しかし、たいていの人は「眠ってはいけない」という意識によって起き続けることができます。
ところが、中には耐えられないほどの眠気に襲われ、勉強や仕事ができなくなってしまう人もいます。このようなひどい眠気が起こる場合、「血糖値スパイク」という状態になっているかもしれません。

食後に眠くなるのはどうして?

食事を食べた後、なんとなくうとうとと眠くなるのは誰でもあることです。脳を活発に働かす物質の1つに「オレキシン」という物質があり、オレキシンが活発に働いていると、起きている(覚醒している)状態が保たれます。オレキシンは空腹時に血糖値が低くなると活性化し、満腹になって血糖値が高くなると、オレキシンの活動が低下して眠くなるといった具合です。

一般的には上記のオレキシンの作用で眠くなることがわかっていて、これは健康な人なら誰でも起こりうる正常な反応です。しかし、食後に逆に低血糖を起こして眠気が生じる場合があります。低血糖とは、血糖値が異常に低くなるこで、冷や汗やふるえ、動悸、目のかすみや眠気、生あくびなどの中枢神経系の症状が現れます。

低血糖が起こる理由には、通常、以下のようなことが考えられます。

  • 食事の時間がいつもより遅れた、量が少なかった
  • 運動や労働など活動量が多すぎたとき
  • 空腹感が強くみられたときに激しい運動を行った
  • 糖尿病の内服薬やインスリンの量を増やしたり、時間が変更になった
  • 糖尿病治療薬以外の薬やアルコール類を飲んだ
  • 性周期において、月経開始時

しかし、食後に低血糖が起こるのは、上記のいずれにも当てはまりません。では、なぜ食後に低血糖が起こるのでしょうか。

食後のひどい眠気を招く血糖値スパイクって?

食後に低血糖が起こるのは「血糖値スパイク」という現象が原因だと考えられています。おおまかに言うと、食後に血糖値が急上昇し、上昇した血糖値を下げるためにインスリンという血糖値を下げるホルモンが大量に分泌され、血糖値が急降下するという現象です。この急上昇と急降下をグラフに書くとスパイク(くぎ)のように鋭く見えることから、血糖値スパイクと呼ばれています

食後に血糖値が少し上がることは誰でも起こりますが、健康な人の場合、上がり方も下がり方も穏やかで、食後に一時的に血糖値が高くなったとしても上がりすぎることはありません。そのため、インスリンの分泌量もそれほど多くなく、血糖値の下がり方も緩やかで、低血糖を引き起こさずに済むのです。

血糖値スパイクは、放置しておくと動脈硬化が進み、血管が傷みやすくなり、炎症や酸化ストレスも起こりやすくなります。長期間にわたってこの状態が放置されていると、心血管疾患や脳卒中などのリスクが上がることや、認知症の症状の進行にも関係していることがわかってきています。

食後にぐったりと疲労感がひどくて椅子で座ったままになってしまう、耐え難いほどの眠気を感じるなど、元気を感じられない場合は「血糖値スパイク」が起きている可能性があります。

血糖値スパイクにはどんなリスクがある?

血糖値スパイクが続くと、体には以下のようなリスクが生じます。

血糖値が急変動することで集中力が低下
血糖値が急上昇するときに強い眠気が生じ、急降下するときに空腹感、イライラ感、集中力・判断力の低下などを引き起こす
放置すると糖尿病に移行したり、重症化する
糖尿病予備群や、糖尿病を発病して間もない人に多い
放置していると糖尿病に移行したり、症状が重症化したりする
心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが上がる
血糖値スパイクを繰り返すと、血管の壁がボロボロに傷み、動脈硬化が進行する
やがて、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが上がる
インスリンの過剰分泌が認知症の一因に
血糖値が急上昇すると、インスリンが過剰に分泌される
インスリンの過剰分泌は、アルツハイマー型認知症の原因とされる脳の老廃物「アミロイドβ」の蓄積を促進してしまうため、認知症を進行させる一因に
がん細胞を増殖させ、発症する危険性も
インスリンには細胞を増殖させる働きがあるため、がん細胞も増殖させてしまう
インスリンの過剰分泌はがん細胞を増殖させ、がんを発症させてしまう危険性がある

血糖値スパイクは、単に眠気やイライラなどの神経系の症状を引き起こすだけではありません。何度も繰り返していると、血管を傷つけて動脈硬化が進行するだけでなく、それによって心筋梗塞や脳梗塞などの生命を脅かす疾患を引き起こしたり、インスリンの過剰分泌によってインスリンを分泌している膵臓が疲弊し、糖尿病に移行してしまうリスクもあります。

また、インスリンの過剰分泌は、脳の老廃物「アミロイドβ」を蓄積させたり、細胞の増殖を促したりすることで、認知症を進行させてしまったり、がんを発症させる危険性につながると言われています。このように、血糖値スパイクを放置していると、さまざまな疾患につながるリスクがあるのです。

血糖値スパイクはどうすれば予防できる?

上記のようにさまざまなリスクがある血糖値スパイクですが、食事を摂るときのセルフケアによってある程度予防することもできます。食事の際は、ぜひ以下のようなことに気をつけてみてください。

ベジファーストにする
ベジファーストとは、野菜や海藻などを食事の最初に食べること
小腸に栄養吸収のクッションとなる膜のような状態を作ってくれるため、ブドウ糖の吸収が穏やかになり、血糖値の上昇も穏やかになる
食事を抜かない
朝食を抜いて前日夜から昼まで何も食べないなど、長すぎる空腹は食後の血糖値の急上昇の原因となる
1日3食、きちんと規則正しく食べるのがポイント
1口30回を目安によく噛む
よく噛み、ゆっくり食べることでも血糖値の急上昇が抑えられる
目安は1口30回で、30回噛んでいる最中に飲み込んでしまうようなら、一口の量が多すぎるので減らすと良い
食後に筋肉を動かす
筋肉でブドウ糖を消費することでも血糖値の上昇を抑えられる
全身の筋肉の約70%は脚の筋肉なので、食後の適切なタイミングで階段を上り下りするのがおすすめ

おわりに:血糖値スパイクはリスク大!セルフケアで予防しよう

食後に耐えられないほどひどい眠気が起こる場合、低血糖になっている可能性があります。食後は血糖値が高くなりますが、高くなりすぎるとインスリンが過剰分泌され、一気に血糖値が下がるため、低血糖にもなってしまうのです。

血糖値スパイクは、放置していると動脈硬化からの心筋梗塞や、認知症の進行、がんの発症などの深刻なリスクにつながる可能性もあります。食事の際にセルフケアを行い、血糖値スパイクを予防しましょう。

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