記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/10/9 記事改定日: 2021/7/28
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
昼ご飯を食べた後、なんだか眠くなってしまう、午後の授業や仕事に集中できないことは、誰もが経験するかと思います。しかし、勉強や仕事、家事ができなくなってしまうような、耐えられないほどの食後のひどい眠気は「血糖値スパイク」という状態になっているかもしれません。
この記事では、血糖値スパイクの原因と食後の眠気の予防方法について解説していきます。
食事を食べた後、なんとなくうとうとと眠くなるのは誰でもあることです。脳を活発に働かす物質のひとつに「オレキシン」があります。
オレキシンが活発に働いていると、起きている(覚醒している)状態が保たれます。オレキシンは、空腹時に血糖値が低くなると活性化し、満腹になって血糖値が高くなると活動が低下します。オレキシンの作用で眠くなることはわかっていて、この作用は健康な人なら誰にでも起こりうる正常な反応です。
つまり、食後に眠くなるのは、満腹になってオレキシンの活動が低下して、覚醒している状態が保ちにくくなった結果による反応、ということになります。
しかし、反対に、「食後に低血糖を起こして眠気が生じる」場合もあります。低血糖とは、血糖値が異常に低くなることで、冷や汗、ふるえ、動悸、目のかすみ、眠気、生あくびなどの中枢神経系の症状が現れます。
低血糖が起こるおもな原因には、以下が考えられます。
しかし、食後に低血糖が起こる原因については、上記のいずれにも当てはまりません。では、なぜ食後に低血糖が起こるのでしょうか。
食後に低血糖が起こるのは「血糖値スパイク」という現象が原因だと考えられています。血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、上昇した血糖値を下げるためにインスリンという血糖値を下げるホルモンが大量に分泌され、血糖値が急降下する現象のことです。
この急上昇と急降下をグラフに書くと「スパイク(くぎ)」のように鋭く尖って見えることから、血糖値スパイクと呼ばれています。
食後に血糖値が少し上がることは誰でも起こりますが、健康な人の場合、上がり方も下がり方も穏やかで、食後に一時的に血糖値が高くなったとしても上がりすぎになることはありません。そのため、インスリンをそれほど多く分泌する必要もなく、血糖値も緩やかに下がっていくので低血糖を起こさずに済みます。
血糖値スパイクは、放置したままでいると動脈硬化が進んで血管が傷みやすくなり、炎症や酸化ストレスも起こりやすくなります。また、長期間にわたって血糖値スパイクが続くことは、心血管疾患のリスクや脳卒中のリスク、認知症の進行にも関係すると考えられています。
食後にひどい疲労感がある、ぐったりとイスに座ったままになってしまう、耐え難いほどの眠気を感じるなど、元気を感じられない場合は「血糖値スパイク」が起きている可能性があるので注意しましょう。
血糖値スパイクが続くと、体には以下のリスクが生じます。
血糖値スパイクは、眠気やイライラなどの神経系の症状を引き起こすだけではありません。血糖値スパイクを何度も繰り返すと血管を傷つけて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしたり、インスリンの過剰分泌によってインスリンを分泌している膵臓が疲弊し、糖尿病に移行してしまうリスクもあります。
また、インスリンの過剰分泌は、脳の老廃物「アミロイドβ」を蓄積させたり、細胞の増殖を促したりすることで認知症のリスクを高めたり、がんを発症させる危険性につながるともいわれています。これらは、どれも生命や健康寿命に大きく関わる問題です。
血糖値スパイクは、食事のときのセルフケアである程度予防できます。食事では、ぜひ以下のことに気をつけてみてください。
血糖値スパイクによる日中の眠気を予防するには、ランチの内容にも気をつかいましょう。血糖値の上昇を防ぐため、ランチでは糖分や炭水化物を控えめにしたメニューを選び、血糖値の上昇を抑える食物繊維を多めに摂るようにしてください。
具体的には、ご飯を小さなお茶碗1杯に魚や野菜、大豆製品を中心としたあっさりしたメニューにすることをおすすめします。
また、ラーメンやパンなど「炭水化物が多めのランチメニュー」で済ませる人も多いでしょうが、定食やサラダセットなどのメニューを選ぶようすると、血糖値スパイクも防げますし、栄養バランスも整いやすくなります。
食後の耐えられないほどひどい眠気が起こるのは、血糖値スパイクが原因の可能性があります。血糖値スパイクは、食後に高くなりすぎた血糖値を下げようとインスリンが過剰分泌されてしまい、急激に血糖値が下がってしまうことが原因です。
血糖値スパイクを放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳卒中、認知症、がんなどの深刻な病気のリスクを高める可能性があります。食事や運動、生活習慣に気をつけながら血糖値スパイクを予防しましょう。