記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/10/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
朝、なかなか起きられず、だらだらと布団やベッドの中で過ごしてしまったという経験は誰しもあるでしょう。前日に夜ふかしをしてしまった、休日でつい怠けてしまった、という一時的なものなら心配いりませんが、長期的に続いている場合や、自分の意志ではどうにもならない場合、何らかの病気かもしれません。
そこで、考えられる病気を4つご紹介します。思い当たるものがあれば、ぜひ参考にしてみてください。
起立性調節障害(OD)は、小学校の高学年~中高生くらいの思春期に起こりやすい疾患です。この時期は心身ともに子どもから大人へと急激に変化していくため、自律神経のバランスが崩れやすいのです。自律神経には全身の血液の動きを調節する役割もありますので、ここに問題が起こると心臓から下には血液がたまり、心臓から上には血液が不足してしまうアンバランスな状態になってしまい、さまざまな症状が現れます。
とくに脳や心臓を動かす部分への血流が低下してしまうため、頭痛・めまい・立ちくらみ・動悸・失神・頻脈・倦怠感などの症状が現れます。こうした症状は午前中に強く現れ、午後には軽減するため、子どもたちは学校には行けなくても、夕方から夜にかけては活動的になる、といった行動パターンになってしまいます。すると、親から見ればただ怠けているだけのようにも見えてしまうのです。
しかし、そのような周囲の無理解や叱責などが精神的ストレスとなり、かえって自律神経を乱し、余計に症状が悪化してしまうこともあります。重症化すると、不登校や引きこもりなどにもつながってしまいますので、注意が必要です。
このような症状が現れた場合、小児科以外の医師では診断できないことも多く、中にはうつ病と誤診されてしまう場合もあります。そこで、まずは以下の日本小児心身医学会による「ODのチェックポイント」を見てみましょう。3つ以上当てはまる場合はODの可能性が高いと考えられますので、まずは小児科を受診してみるのがおすすめです。
小児科では、横になった状態から立ち上がった際の血圧や脈拍数などの変化を調べて性格に診断します。正式にODと診断された場合、まずは周囲の人の病気への理解を深めるとともに、日常生活での注意点を指導してもらうという非薬物療法から行います。どうしても夜型の生活になりがちですが、生活リズムをきちんと整え、散歩程度の軽い運動と、血圧を上げるための水分補給をしっかり行いましょう。
症状が深刻な場合は昇圧剤を使用したり、心理療法を併用したりすることもあります。ほとんどが成長途中での一時的な症状なため、これらの治療と成長に伴って症状は軽減し、最終的にはなくなります。
ODを発症してしまうと遅刻や欠席が増えてしまい、親から見るともどかしいことも多いでしょうが、ある種、成長痛などと同じように成長のために必要な体の不調とも言えます。精神的な疾患や単なる怠けではありませんので、無理に登校させるのではなく、体調を整えることを優先とし、学校にも病気に対する理解と協力を求めることが大切です。
非器質性過眠症とは、原因が身体的な問題ではない過眠症のことを言います。非器質性過眠症には、以下のような特徴があります。
過眠症は非常にまれな症例であることから、なぜ、どのようにして発症するのかに不明な点が多く、原因もはっきりとはわかっていません。しかし、これまでの報告事例から考えられることとしては、「ある日急に発症する」のではなく、必ず何らかの前兆があって発症しているということがあります。
非器質性過眠症は「特発性過眠症」と「反復性過眠症」の2つに大きく分けられます。
特発性過眠症とは、昼間の眠気と居眠りが大きな特徴の過眠症です。本人も気づかない間に突然眠り込んでしまう睡眠発作は少ないですが、一度眠り込んでしまうと目覚めるまでに1時間以上がかかるとされています。夜の睡眠時間も長くなりがちで、ほとんどが9時間以上眠っています。このように十分な睡眠をとっているにも関わらず、朝もなかなか目が覚めず、起きるのにかなりの困難が生じると言われています。10代~20代前半の若者の発症報告が多い疾患です。
特発性過眠症では、昼間に居眠りをした後もやはり目覚めが悪く、眠気がだらだらと続いてしまいます。しかも、この疾患の人を無理に起こすと寝ぼけたような「錯乱性覚醒」という状態になったり、頭痛や起立性低血圧などの自律神経症状も伴うため、非常に厄介な疾患です。
特発性過眠症の治療法には、以下のようなものがあります。
強く耐え難い眠気が起こり、傾眠(意識がなくなっていく最初の段階で、うとうととして睡眠に陥りやすい状態)が生じる過眠期(傾眠期)が3日~数週間程度続いたあと、自然に回復して全く症状が出なく(間欠期)なります。これを不定期に繰り返すことから、「反復性」と呼ばれています。女性よりも男性の発症率が2~3倍高く、ほとんどが10代で発症していると報告されています。
「心身のストレス・疲労・不眠・飲酒・風邪などの感染症・月経」などが誘因となって過眠期が現れるケースが多く、前兆として「頭痛・頭重感・倦怠感・集中力や思考力の低下・離人感」などが現れることもわかっています。過眠期は一日中床についてしまい、食事や排泄など最低限のこと以外の日常生活や社会生活が送れなくなります。
過眠期に「不機嫌・自傷行為・攻撃性の増大・不安焦燥・抑うつ気分・幼い子どものような退行した言動・過食・性欲亢進」などの症状が出る場合、クライン・レビン症候群と呼ばれます。また、過眠期から次第に午後に目覚めている時間が増える、一時的に不眠が生じるといった場合もあります。
反復性過眠症は、残念ながら治療法が確立されていないため、以下のような工夫によって症状の緩和を目指します。
睡眠不足症候群は、名前のとおり睡眠不足が続いて慢性的になり、日中に過眠が生じてしまう状態のことです。例えば平日の睡眠時間が3~4時間など、日常生活の中で慢性の睡眠不足となると、週末に10~12時間も眠りこむなど、過眠と呼ばれる症状が現れてしまいます。
このように書き表してみれば、どう見ても睡眠不足は明らかなのですが、ほとんどの場合本人は睡眠不足と思っていないのもこの症候群の特徴です。真面目で融通がきかなく、仕事が一段落するまでは遅くなっても一人で仕事をしてしまったり、帰宅後に持ち帰ってまで仕事をしてしまったりする人が多いため、睡眠時間を犠牲にしまっているというわけです。
睡眠不足症候群は日本の人口の1割程度と言われており、10人に1人は慢性的な睡眠不足に陥っていることが伺えます。とくに、平日の睡眠時間と休日の睡眠時間が2時間以上異なる、週の初めと週の終わりでは日中の眠気が後半になるにつれて強くなる、といった場合は慢性的な睡眠不足の影響が強いと考えられます。
この症候群は疾患ではありませんので、生活習慣を整え、十分な睡眠をとる以外に解決法はありません。十分な睡眠とは、やみくもに長く寝ればよいというわけではなく、人それぞれ異なる「適切な睡眠時間」を知り、それに合わせて睡眠をとるということです。これまでの生活を振り返り、どのくらい眠れば朝すっきり目覚められ、昼間に元気に活動しつづけられたのか考えてみましょう。
また、体のリズムが整っていないために眠気が生じやすくなっている場合もありますので、適度な運動習慣、3食の規則正しく栄養バランスの良い食事、午前中に日光を浴びるなど、生活にメリハリをつけられるような工夫をしてみることも大切です。
概日リズム睡眠障害とは、実際の昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わなくなり、1日の中で社会的に要求されたり自ら望んだりする時間帯に睡眠をとることができず、活動に困難をきたしてしまうような睡眠障害のことを言います。睡眠時間が短いのではなく、ある程度規則的にずれているのが大きな特徴です。
原因としては「交代勤務によって体内時計がずれた」「何らかの理由で体内時計が遅れて(進んで)しまい、その後修正されていない」「体内時計が朝の光でリセットされない」「脳梗塞などの脳機能障害」などが考えられます。
この睡眠障害を治すには、体内時計と実際の昼夜のサイクルを合わせることが必要です。光照射やメラトニン製剤を飲むなどして、適切な時間に眠れるような治療法を行うのが有効ですが、まずは睡眠日誌をつけ、自分の睡眠習慣を知りましょう。睡眠日誌とは、入眠や起床の時刻などを記録するもので、インターネットなどにもあります。最近では睡眠アプリなどもたくさん出ていますので、記録しやすいものを選びましょう。
もし、単に睡眠時間がずっと短い(5時間以下など)という場合は、睡眠不足症候群かもしれません。逆に、睡眠時間は十分とれているが時間帯がずれている、という場合は概日リズム睡眠障害と考えられます。
朝、起きられないと「怠けではないか」「意志が弱いのではないか」と自分を責めてしまう人もいますが、何らかの疾患を発症している可能性もあります。とくに、ご紹介した疾患だけでも10代〜20代前半ごろの発症が多いことから、若い頃には睡眠に関するトラブルが起こりやすいと言えます。
そのため、規則正しい生活リズムや軽い運動などの生活習慣を改善するとともに、症状がひどい場合は医療機関の受診も視野に入れましょう。