コレステロールが高くなった…。どうすれば下げられる?

2019/11/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

血中のコレステロール値が高い状態は、動脈硬化など他の疾患の発症リスクを高めます。今回は、高くなったコレステロール値を下げるために取るべき対策について、そもそもコレステロールとは何か、高くなってしまう原因とあわせて解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

コレステロールとは

体内に存在する脂質の一種で、細胞膜や性ホルモンを作る際の原料になる成分のことを「コレステロール」と言います。コレステロールは、それぞれの役割・特徴により、大きく以下2種類に分けられます。

HDLコレステロール
  • 血中、血管内の余分なコレステロールを吸着して肝臓まで運び、血管内をきれいにすることで掃除してくれるコレステロール。善玉コレステロールとも呼ばれる
  • 動脈硬化予防に役立つとされる。血中の適正値は40mg/dl以上
LDLコレステロール
  • 肝臓から血管、他の臓器や組織にコレステロールを運ぶ役割を担うコレステロール。増えすぎると血管壁に沈着して酸化し、動脈硬化の原因となるとされる
  • 悪玉コレステロールとも呼ばれる。血中の適正値は140mg/dl以下

2種類あるコレステロールは、どちらも適量ならば私たちの生命を維持し、体を健康な状態を保つために必要な栄養成分です。しかし、食事から摂りすぎたり、過度に体内で作られたりして量が増えると、生活習慣病や命にかかわる疾患の原因になることもあります。

コレステロール値が高くなるのはどうして?

血中のコレステロール値が高くなる原因としては、以下3つが考えられます。

  • 生まれつきの遺伝子異常、または体質
  • 脂肪分の多い、欧米スタイルの食事習慣
  • 運動不足

さまざまな原因から血中LDLコレステロール値が高くなると、血管内に異常にたくさんのコレステロールが浮遊する状態となり、分解しきれず血管壁に付着していまいます。血管壁に付着したLDLコレステロールはどんどん蓄積し、酸化しながらコブのように大きくなっていきます。これが動脈硬化です。

動脈硬化になると、大きくなったコブにより血管が狭くなり、血流が阻害されて詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などの病気を発症しやすくなります。特に、LDLコレステロール値が高い状態に加え高血圧、糖尿病、腎臓疾患、喫煙習慣のある人は、より動脈硬化を発症しやすいとされます。

コレステロール値を下げるには?

血中のコレステロール値を下げるには、コレステロール値を上げる生活習慣を改め、コレステロール値を下げるための食事と運動習慣を取り入れるのが効果的です。以下に、血中のコレステロール値を下げるための食事と運動のポイントをご紹介します。

血中コレステロール値の減少に効く食事のポイント

肉や乳製品からの、脂質の摂取を控える

高コレステロール状態の主な原因は、欧米的な食生活による脂質の過剰摂取です。まずは肉の脂身や揚げ物、乳製品の多い飲み物やお菓子などの摂取を減らしてみましょう。

海産物と植物性食品中心の、伝統的な日本食を心がける

伝統的な日本食とは、海産物と植物性食品を中心とした食事内容のことです。1970年代以前、伝統的な日本食がメインだったころの日本では、肉食中心の欧米に比べて心筋梗塞の発症が少なかった、というデータが残っています。

このため、以下のような食品を意識的に多く摂ることができる伝統的な日本食を、減塩を意識して食べるようにすれば、コレステロール値の減少効果が期待できます。

  • 色の濃い緑黄色野菜を中心とした、野菜類
  • 食物繊維が豊富なキノコ類、海藻類
  • 雑穀や玄米など、精製していない穀類
  • 豆腐や納豆、味噌、豆乳などの大豆食品
  • いわしやさば、まぐろ、かつおなどの魚類

悪い食習慣を改める

肉食中心の食事以外にも、改めるべき食習慣はあります。以下のような食習慣は高コレステロール状態を招く一因となりますので改め、薄味・腹八分目・規則正しい量と回数の食事になるようにしましょう。

  • 朝食や昼食を抜くことがあり、まとめ食いしてしまう
  • 基本的に早食いで、おなかがいっぱいになるまで食べるのを辞められない
  • 食事の時間帯や量、回数が不規則で、寝る前でも構わず食事する
  • テレビや新聞、スマホを見ながら食事することが多い
  • 外食、または味の濃いものを食べることが多い

適正体重を知り、普段から過食と肥満を予防する

年齢・性別ごとの標準体重と、適正な摂取カロリー量は、それぞれ以下の方程式で求めることができます。

  • 標準体重=22×身長(m)×身長(m)
  • 1日の適正摂取エネルギー量=標準体重×25~30kcal

医師や栄養士にも相談しながら、普段から食べるもののカロリーや自身の体重を意識して、肥満と高コレステロール状態を予防しましょう。

血中コレステロール値の減少に効く、運動のポイント

高コレステロール状態を改善するための運動は、以下のポイントを意識しながら、脂肪の代謝を上げてくれる有酸素運動を中心に行いましょう。

  • やってみて楽、または少しきついと感じるくらいの負荷
  • 毎日30分以上を目標に、人と話しながらでも続けられるくらいのスピードで

ウォーキングをはじめサイクリングや水泳、水中ウォーキングなどの有酸素運動を、前後のラジオ体操や準備体操、ストレッチと一緒に続けるのがおすすめです。

おわりに:コレステロール値の上昇は、食事と運動療法で抑えよう

コレステロールは、私たちの生命と健康な体の維持に欠かせない栄養成分です。しかし増えすぎてしまうと血管壁に沈着して、動脈硬化から心筋梗塞や脳卒中など、命にかかわる病気を引き起こす原因となってしまいます。コレステロールが高くなってしまったら、動脈硬化などの深刻な事態を引き起こす前に、運動と食事の習慣を改めましょう。日々の生活習慣を改善するだけで、コレステロール値は着実に下げることができます。

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