子どものうつ病の特徴と周囲の大人が気をつけたいこと

2025/5/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ストレス社会の現代では、大人と同じように子どものうつ病も問題になってきます。子どもと大人とでは、心身の発達状態や周りを取り巻く環境が違うため、うつ病の症状や対策も変わってくる場合があります。この記事では、子どものうつ病の症状の特徴と原因、対策について解説していきます。

子どものうつ病の症状

現代社会は科学技術が発展し、生活がより便利に快適になったという恩恵を受けている一方で、競争が激化し、社会の組織化もどんどん進み、SNSなどのツールの発達も受け、個人が社会から抑圧される「管理社会化」しているという懸念の声もあります。このような状況下で、うつ病になる人が増えてきているといわれていますが、ストレスを受けているのは大人だけではありません。子ども同じようにストレスを受け、うつ病のリスクにさらされています。

子どもは、自分の気持ちや心身の不調を言葉でうまく伝えられないことも多く、「うつ病による子どもの変化」に気づかないこともあるでしょう。ストレスによりうつ状態になっているとき、うつ病を発症しているときには、以下のような身体症状と精神症状が現れる可能性があります。

身体症状
  • 睡眠障害(寝つけない、夜中に目が覚める、明け方に起きてしまうなど)
  • 食欲不振
  • 「朝は具合が悪いのに、夕方・夜になると元気になる」など、症状の日内変動がある
  • 体がだるい、何をするのもおっくうと感じる
精神症状
  • 今まで楽しんでいたことに興味がなくなる
  • 遊びや勉強などに対する意欲がなくなる
  • 知的活動能力が減退し、それに伴いイライラ感や自信の低下が起こる
  • 自傷行為、自殺企図など、行動面の変化が起こる など

子どものうつ状態・うつ病では、身体症状や行動面での症状の方が目立つ傾向にあるといわれています。精神症状についても、「表情が乏しくなった」「おっくうがることが多くなった」など、身体に現れてくる症状とセットで見ていく方がわかりやすいかもしれません。また、子どもの精神症状は、憂うつで気分が沈み込むより、イライラ感や過剰に活発になるなど、情緒不安定の形をとって現れることが多いといわれています。

子どものうつ病の原因

子どものうつ病の原因としては、心理的なストレス、それによる脳内の変化などが関係していると考えられ、「うつ病を発症しやすい体質である」ことが関係している可能性もあります。例えば、学校でいじめを受けるなどの強い心理的なストレスを受けると、それによって脳の働きのバランスが崩れ、うつ病を発症する、といったものです。その他の原因としては以下が挙げられます。

  • クラスメイトなどによるいじめ、からかい
  • 転校したばかりで友人がいない、勉強についていけない
  • 優等生であることを妬まれ、悪口や嫌味を言われる
  • 両親の仲が悪く、家に帰っても安らげない

近年ではSNSツールの発達により、いわゆる「ネットいじめ」も増えています。こうした「いじめ」は暴力などに訴えるものではなく、話しかけても無視したり、その子だけに必要な情報を教えなかったりするなど陰湿なものが多く、周囲の大人からはなかなか見えにくくなっているため、とくに注意が必要といえるでしょう。

子どものうつ病対策について

子どものうつ病が疑われる症状に気づいた場合は、まずは精神科・心療内科を受診しましょう。その際、「いつごろから症状が始まったのか」「どのような経過をたどったのか」などをすぐに答えられるよう、メモなどにまとめて持っていくと良いでしょう。

うつ病・うつ状態と診断された場合は、まずはゆっくりと休ませてあげてください。うつ病はエネルギー切れの状態から起こることも多く、十分に休息をとることで症状がある程度落ち着く可能性があります。また、医師が処方する睡眠導入剤・抗不安薬・抗うつ薬などを服用することで、症状が緩和する可能性もあります。

休息・投薬などの治療で症状がある程度落ち着き、少し元気が出てきたら、遊戯療法を通じて自分の気持ちを整理したり、認知行動療法で自分の考え方を修正したりすることも、回復につながる可能性があります。また、環境要因によるものが多く、子ども自身ではどうにもならない場合は、環境を調整する必要も出てくるでしょう。

なお、うつ病の人に対して「頑張れ」と励ましたり、以前と同じような活動ができなくなっていることに「甘えているのではないか」と叱ったりすると、本人にとって過剰なプレッシャーとなってしまい、場合によっては症状を悪化させてしまうことがあるので気をつけてください。

また、「うつ状態のときに重大な決断をさせない」ようにすることにも気をつける必要があります。例えば、最終的に環境を調整する必要があるとしても、すぐに退学や転校を決めない方がいいでしょう。環境の調整については、症状がある程度落ち着き、回復してから、子ども本人や医師とよく話し合って決めるようにしましょう。

おわりに:子どもの悩みに耳を傾け、話し合いながらじっくり対策しよう

子どもがうつ病を発症したときに「育て方が原因ではないか」と自責の念に駆られたり、悩んでしまったりする保護者もいるかもしれませんが、そのように結論づける医学的なデータはありません。また、うつ病の発症原因がひとつだけであることは少なく、複数の原因が複合的に絡み合うことで起こることが多いです。自分を責めたりするのではなく、まずは子ども自身の話をさえぎらず耳を傾け、子どもが感じていることに共感してあげるようにしてください。医師と相談しながら、あせらずじっくりと対策していきましょう。

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