子供もうつ病になることがあるって本当?症状を和らげるには?

2020/2/16

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

「現代社会が生んだ心の病」などといった文脈でよく語られる「うつ病」は、もともとは心の問題だと考えられていましたが、近年、脳機能の異常から発症するのではないかと指摘されるようになってきました。

そのため、なにかと悩みの多い大人だけでなく、一見元気に見える子供もうつ病を発症する場合がある、ということがわかってきたのです。子供のうつ病の症状や原因、改善方法について見ていきましょう。

子供もうつ病になる?

現代社会は「ストレス社会」とも言われるほど、何らかの要因でストレスを抱え、心身に不調をきたす人が多くなっています。経済的にも豊かになり、科学技術が発展し、生活がより便利に、快適になった恩恵を受ける一方で、競争は激化し、社会の組織化はどんどん進み、SNSなどのツールの発達も受け、個人が社会から抑圧される管理社会化しているという懸念の声も聞かれます。

こうした状況で何年も、あるいは何十年もの長期にわたってストレスを感じ続けた結果、うつ状態になる人は年を追うごとに増えています。そして、ストレスを感じているのは大人だけではなく、子供も同じなのです。しかし、子供は自分の心身の不調を言葉でうまく伝えられないことに加え、大人からの「子供はいつも元気で、ストレスで悩んだり苦しんだりしない」という思い込みもあり、周囲が異変に気づかないことも少なくありません。

以下に、子供がストレスからうつ状態になっているときの身体症状と精神症状をご紹介します。思い当たる項目が多い、あるいは症状が強い場合は、うつ病を発症している、または抑うつ状態が続いている可能性があります。

身体症状
  • 寝つけない、夜中に目が覚める、明け方に起きてしまうなどの睡眠障害
  • 食欲が減る
  • 朝は具合が悪いのに、夕方から夜になると元気になる、など症状の日内変動がある
  • 身体がだるく、何かするのをおっくうがる
精神症状
  • 今まで楽しんでいたことに興味がなくなる
  • 遊びや勉強などに対する意欲がなくなる
  • 知的活動能力が減る、それによる二次症状であるイライラ感や自信の低下が起こる
  • 自傷行為、自殺企図など行動面の変化

子供は自分の気持ちや精神的な変化を言葉で表現しにくいことから、身体症状や行動面での症状の方が目立つ傾向にあります。精神症状も子供自身に説明させるというより、「表情が乏しくなった」「何かするのをおっくうがることが多くなった」など、身体に現れてくる症状とセットで見ていくとわかりやすいでしょう。

また、子供の場合は精神症状でも、憂うつで気分が沈み込むより、イライラ感や過剰に活発になるなど、情緒不安定の形をとって現れることが多いようです。このように精神的に不安定な状態になった結果、自傷行為や自殺企図、または攻撃的・反社会的行動が現れることもありますので、十分に注意が必要です。

子供のうつ病を発症する原因は?

大人と同じように、子供のうつ病も明確な原因はわかっていませんが、心理的なストレス、それによる脳内の変化、そもそもうつ病を発症しやすい体質、などが関係していると考えられています。例えば、学校でいじめを受けるなど強い心理的なストレスを受けると、それによって脳の働きのバランスが崩れ、うつ病を発症する、といったものです。

とくに、心身ともに未発達の子供がうつ病を発症する場合、その原因の半数以上は「そもそもうつ病を発症しやすい体質である」ということに関係していると考えられます。これは先天的な性格によるもので、親や兄弟姉妹にうつ病になった人がいると、うつ病の発症率が高いことから推測されているものです。ストレス耐性の弱さ、と言われることもあります。

このようにもともとうつ病を発症しやすい体質であることに加え、以下のような心理的ストレスがかかると、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、うつ病を発症することがあります。

  • クラスメイトなどによるいじめやからかい
  • 転校したばかりで友人がいない、勉強についていけない
  • 優等生で妬まれ、悪口や嫌味を言われる
  • 両親の仲が悪く、家に帰っても安らげない

近年ではSNSツールの発達により、いわゆる「ネットいじめ」も増えています。こうしたいじめは暴力などに訴えるものではなく、話しかけても無視したり、その子だけに必要な情報を教えなかったりするなど陰湿なものが多く、周囲の大人からはなかなか見えにくくなっているため、とくに注意が必要です。

子供のうつ病を改善するには?

うつ病の可能性がある場合、まずは精神科医の診察を受けましょう。その際、いつごろから症状が始まったのか、どのような経過を辿ったのかなどを聞かれたらすぐに答えられるよう、メモなどにまとめて持っていくと良いでしょう。

医師にうつ病、あるいは抑うつ状態と診断されたら、まずはゆっくりと休ませてあげましょう。うつ病はエネルギー切れの状態ですから、十分に休息をとることで症状がある程度落ち着きます。また、症状が強いことから、ストレスだけでなく脳内の神経伝達物質に何らかの代謝異常が生じていることも原因だと考えられる場合は、睡眠導入剤・抗不安薬・抗うつ薬などを使用すると症状の改善が期待できます。

十分な休息や投薬によって症状がある程度落ち着き、少し元気が出てきたら、遊戯療法を通じて自分の気持ちを整理したり、認知行動療法で自分の考え方を修正したりするのも良いでしょう。また、きっかけが環境による強いストレスであり、子供自身ではどうにもならない場合、環境を調整することも必要です。

子供がうつ病を発症してしまうと、育て方が原因なのではないかと自責の念に駆られたり、悩んでしまったりする保護者も多いのですが、そのように結論づける医学的なデータはありませんし、そもそもうつ病の発症原因は何か一つだけの事柄ではありません。ですから、まずは子供自身の話をさえぎらず上手に聞いてあげること、本人が感じているつらさに共感してあげることが大切です。

大人のうつ病でも同じですが、うつ病の人が感じている苦しみは外から見えにくく、周囲の人はつい「頑張れ」と励ましたり、以前と同じような活動ができなくなっていることに「甘えているのではないか」と焦って叱ったりしてしまいがちですが、本人にとっては過剰なプレッシャーとなってしまい、場合によっては症状を悪化させてしまうこともありますので注意しましょう。

また、注意しなくてはならないのは、うつの症状を発症しているときに重大な決断をさせない、ということです。これも大人のうつ病と同じですが、最終的に環境調整が必要になるとしても、うつ病を発症したからと言ってすぐに退学や転校を決めてはいけません。環境調整については、症状がある程度落ち着き、回復してから、子供本人や医師とよく話し合って決めるようにしましょう。

おわりに:子供も大人と同じように、うつ病を発症することがある

現代社会は「ストレス社会」とも呼ばれているように、何らかのストレスを抱える人は少なくありません。大人がストレスを感じているように、子供もストレスを感じ、うつ病を発症することがあるのです。

子供のうつ病では、精神症状よりも身体症状の方が目立ちやすい傾向にあります。うつ病が疑われたらまずは精神科医の診察を受け、十分な休息をとらせてあげるとともに、本人のつらさに共感するようにしましょう。

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