記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/1/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
体重管理は健康維持の基本のひとつです。特に肥満はさまざまな不調や疾患を引き起こすおそれがあります。太りすぎを改善するために食事制限や運動習慣などの対策が推奨されますが、近年は「時間栄養学」のアプローチに注目が高まっています。この記事では、時間栄養学のポイントを解説します。
時間栄養学とは、時間薬理学、時間医学、時間治療学などの領域の研究を栄養学の分野に応用したものです。時間栄養学では、栄養素も体外から体内へ取り入れるという点において薬と共通していると捉えます。
時間薬理学は、投与時間によって薬に対する体の反応が異なることなどを研究する分野です。薬と同様に、栄養素は摂取する時間が異なれば反応も変わるという観点で、時間栄養学の研究が進められてきました。その一例として、夜に食事をすると太りやすくなることをデータで立証しています。
人間の体はサーカディアンリズム(概日リズム)という約24.5時間のリズムを持っています。サーカディアンリズムは体内時計と呼ばれるものによってつくられています。研究の結果、脳にある主時計のほか、全身に時計遺伝子が発現していることがこの10年ほどでわかってきました。
時計遺伝子はサーカディアンリズムを司り、20種類ほどが発見されています。時計遺伝子が正常に働くことで、体は調和を保って機能しています。
サーカディアンリズムは約24.5時間ですが、実際の1日の長さは約24時間です。そのため体のリズムと1日の長さは毎日0.5時間ずつズレが生じます。このズレは朝の光でリセットされます。
また、食事にも体内時計を整える効果があることがわかりました。つまり食事が体内時計の調整に影響を与え、体の調和に関わってくるのです。時間栄養学では食事の摂取時間が体に与える影響を考慮し、健康的な生活のために食事を「いつ食べるか」を研究しています。
時間栄養学では、特に食品を食べる順序、食事の速度は血糖値の上昇やインスリン分泌に大きな影響を与えると考えられています。急激な血糖値の上昇はインスリンの分泌を促し、血糖が脂肪に変わってしまいます。また、インスリンの急激な上昇によって膵臓の機能が弱くなるため、糖尿病を招くおそれもあります。
時間栄養学では食事をするタイミングを重視しています。
体内時計は、1日の長さとのズレやあらゆる要因による乱れが発生します。きちんとリセットされていないと体内時計の乱れは大きくなり、夜型の生活に体内時計がズレていきます。体内時計の乱れをリセットする上で大切なのが朝の行動です。
まず朝起きたら太陽光を浴びましょう。そしてエネルギーを補給できる朝食を食べます。炭水化物、たんぱく質を取り入れたメニューがおすすめです。朝食で摂取したエネルギーは日中の活動で消費されます。夕食や夜食と比較して、朝食なら脂肪分の多い食事を食べても太りにくいことが研究で明らかになっています。
適正体重や健康的な体脂肪率を維持するためには、食事の管理が大切です。「いつ食事を食べるか」という時間栄養学の考えを取り入れて、より健康的な食生活を目指しましょう。