アナフィラキシーを引き起こす原因は?どんな症状が出てくる?

2019/12/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

一般的にアレルギー症状と言えば咳や鼻水、くしゃみ、発疹などをイメージしますが、それだけではありません。ときに命にかかわるような症状を引き起こすこともあります。
今回はアレルギー症状の一種「アナフィラキシー」とは何か、原因となり得るものや特徴的な症状、治療法や予防法まで、まとめて解説していきます。

アナフィラキシーとは

アナフィラキシー(anaphylaxis)は、体を守るための防御反応を意味する phylaxis に、反対の状態を意味する ana を付け加えた医学用語です。直訳すると「反防御反応」というような意味合いとなり、自身の体を守ろうとする反応が、逆に体を傷つけてしまうような状態を指します。

アナフィラキシーが起こるメカニズムは以下の通りです。

アナフィラキシーが起こるメカニズム
  1. アレルゲンとも呼ばれるアレルギー原因物質「抗原」が体内に侵入
  2. この抗原から体を守るため、体内で特異的な抗体を生産して応戦・除去を試みる
  3. 以降、その特定の抗原が体内に入る度に、特異的な抗体が生産されるようになる
  4. 特異的な抗体の反応が行き過ぎ、逆に体を傷つけアナフィラキシーが起こる

また上記のようなアナフィラキシーのうち、血圧が下がり呼吸が困難になるようなショック状態に陥ることを「アナフィラキシーショック」と呼びます。

アナフィラキシーを引き起こすものは?

以下に、アナフィラキシーを引き起こす原因物質・抗原をご紹介します。

食品

特にアレルギーを引き起こしやすいとされる卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、えび、かにの7種類以外に、以下の食品も比較的アナフィラキシーを起こしやすいとされます。

アナフィラキシーを起こしやすい食品の例
オレンジ、モモ、キウイ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、やまいも、りんご、ゼラチン、バナナ など

食品の場合、摂取後に運動やアルコール、入浴などによる二次的要素が加わることでアナフィラキシーを起こすケースも報告されています。

虫刺され

過去にハチに刺された経験のある人が再度ハチに刺されると、体内にあるハチ毒への抗体が、アナフィラキシーを引き起こす場合があります。

とくに、スズメバチ類やアシナガバチ類に2度以上刺された場合は注意が必要です。人によっては、1回刺されただけでアナフィラキシーを起こすこともあるといわれています。

ペニシリンなどの抗生物質、アスピリンなどの解熱鎮痛剤、検査に用いられる造影剤なども、アナフィラキシーを起こす可能性があります。

薬へのアナフィラキシーの場合、薬の有効成分のみならず、添加物である安定化剤や原料となる食品などに反応していることもあるようです。

そのほか、原材料にラテックス成分が含まれるゴム製品や、抗原に近しい構造の食品などに起こす交叉反応が、アナフィラキシーの原因になることもあります。

アナフィラキシーが疑われる症状の特徴や治療法は?

アナフィラキシーが発生したときに高確率で現れる症状として、皮膚症状・粘膜症状・呼吸器の症状・消化器の症状の4つがあります。

皮膚症状
じんましん、皮膚の赤みやかゆみ
粘膜症状
まぶたの腫れ、目のかゆみ、唇や口内の腫れ
呼吸器の症状
咳、くしゃみ、息苦しさ、呼吸音の乱れ
消化器の症状
強い腹痛、嘔吐、下痢

上記の症状が、特定のものに接触してから数分~数時間のうちに以下のような現れ方をした場合、アナフィラキシーの可能性が高いと考えられます。

アナフィラキシーによる、特徴的な症状の現れ方
  • 抗原に心当たりはないが皮膚や粘膜に症状が起こり、続けて呼吸器の症状または血圧低下のうち、1つ以上の症状が現れる
  • 抗原と疑われるものに触れたり、口にしたりしてから皮膚や粘膜の症状が現れ、かつ呼吸器症状や血圧低下、消化器症状などが2つ以上現れる
  • 既に抗原とわかっているものうに触れたり、口にしたりしてから、意識障害を伴うような血圧低下が現れる

アナフィラキシーが強く疑われる場合には、重症化する前に、以下いずれかの方法でいま出ている症状を抑える必要があります。

アナフィラキシーの治療法
  • アドレナリン自己注射薬の筋肉への注射
  • 抗ヒスタミン薬、ステロイド薬など飲み薬の服用

なおアナフィラキシー症状には、いったん治まったあと再び症状が現れる「二相性反応」が起こる可能性もあります。

初めてアナフィラキシーを起こした場合には、速やかに医療機関を受診してください。また、もし何度かアナフィラキシーを起こしている場合は、医師から処方されるアドレナリン自己注射薬を携帯し、すぐに使用したうえで医療機関へ向かいましょう。

アナフィラキシーを予防するには?

アナフィラキシーの再発を予防する方法としては、基本的に抗原となる原因物質を特定し、徹底して接触を回避するしかありません。まずは医師の指示に従い、症状が出る数時間前からの食事や摂取薬、虫刺されの有無などを検証し、血液や皮膚の検査を受けて抗原を特定します。

その後、必要に応じて医師から処方されるアナフィラキシー治療薬を携帯して、自分の身を守れるよう対策していきます。

おわりに:命にもかかわるアナフィラキシーは、アレルギー反応の一種です

特定の食品や薬の摂取、虫や物質との接触から体を守ろうとするあまり、自分の体を傷つけてしまうほどの防衛反応を起こすことをアナフィラキシーと言います。アナフィラキシーの症状としては皮膚症状・粘膜症状・呼吸器症状・消化器症状の4つが挙げられ、原因となる抗原との接触後数分〜数時間以内に現れるのが特徴です。アナフィラキシーが疑われる症状が出た場合は、薬で応急処置をしてすぐに医療機関を受診してください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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