食事のときにむせやすくなった気が…。原因は?

2020/3/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

おいしい食事を楽しんでいるとき、急に喉が苦しくなってむせてしまうことはありませんか?なんだか喉に違和感があって、飲み込みにくくなった気がするという人も。むせる原因や対処法について理解し、苦しい状態を予防しましょう。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

食事のときにむせるように…。原因は?

食べ物や飲み物を飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」と呼びますが、嚥下になんらかのトラブルが起きる状態を嚥下障害といいます。食事中にむせやすい、飲み込みにくいといったことがある場合、嚥下障害の可能性があります。

嚥下障害が起こる主な原因として、加齢による喉の筋力低下と認知機能などの低下が考えられます。

喉の筋力低下
年齢を重ねるにつれて喉周辺の筋力が低下し、飲み込む機能が衰えます。通常は飲み込まれた食べ物や飲み物は食道に入りますが、うまく飲み込めずに気管に入ったときにむせることが多いです。
認知機能の低下
認知機能や神経伝達機能も加齢に伴い低下する傾向があります。その結果、「口に食べ物を入れ、飲み込む」という動作の流れがスムーズにできなくなることがあります。これは、脳が「食べ物を飲み込む」という動作を正しく認知できず、下や上あごの筋肉への指示をうまく出せなくなるためです。
加齢以外の原因
そのほかに嚥下障害を引き起こすものとして、口や喉、食道などに疾患や障害が発生している場合が考えられます。たとえば口内炎、歯槽膿漏、虫歯、扁桃炎、咽頭炎などです。
そのほか、がんが嚥下障害を引き起こしている可能性もあります。口腔、舌、咽頭、甲状腺、食道などに異常が発生しているかもしれません。また、脳梗塞や脳出血、神経障害など、脳や神経系に異常が発生している可能性も考えられます。

食事でむせる状態がひどくなるとどうなる?

食事中にむせたからといって、嚥下障害に当てはまるとは言い切れません。下記のチェックリストに当てはまる項目が多いようでしたら、嚥下障害の兆候が出ていますので、医療機関の受診をおすすめします。

  • 食事中に頻繁にむせる
  • 声質が変化した
  • いつも喉がごろごろして違和感がある
  • 痰が多く出る

唾液のセルフチェック

上記のほか、唾液を飲み込めるかどうかもセルフチェックとして有効です。30秒間で唾液を何回飲みこめるか試してみましょう。3回以上飲み込めない場合、嚥下障害の疑いがあります。

むせやすさのセルフチェック

30mlの水を5秒以内にむせずに飲めない場合、嚥下障害の可能性があります。

嚥下障害が招く健康リスクは?

嚥下障害は飲み込みにくさやむせやすさを招くだけでなく、誤嚥性肺炎を引き起こすおそれがあります。嚥下障害を発症していると、食べ物や飲み物、唾液、胃の逆流物などが気管に入りやすくなっています。それらに含まれている細菌が気管を経て肺に送り込まれた場合、肺の中で炎症を引き起こすことがあります。炎症によって高熱や激しい咳が出る状態が誤嚥性肺炎です。

誤嚥性肺炎の症状

  • 高熱
  • 激しい咳
  • 呼吸が苦しい
  • 黄色い痰が出る
  • 肺雑音が出る
  • 元気がない
  • いつもより物が飲み込みづらい
  • 食事に疲れやすい

特に高齢者は誤嚥性肺炎に注意が必要です。加齢によって喉の筋力だけでなく免疫力や体力も衰えさせるため、命に関わります。また、年齢にかかわりなく、胃の逆流物の誤飲によって消化液や胃酸が気道の粘膜を傷つける可能性もあります。

食事でむせやすくなったときに自分でできることは?

嚥下障害の主な原因は加齢に伴う喉周辺の筋力低下ですので、筋力を鍛えるトレーニングを行うことは嚥下障害予防に効果的です。喉周辺の筋力は40代から衰えるといわれているため、早い時期から取り組むことをおすすめします。

4種類の喉の筋トレ

  1. 口を大きく「い」の字に開ける
  2. 「いー」と5秒間発声しながら、口を横に大きく広げる
  3. 5~10回行う
  1. 唾液をゆっくり飲み込む
  2. 喉仏を意識してしっかりと使う
  3. 5~10回行う
  1. あごを引いて、おへそをのぞき込む
  2. 喉仏に力を入れるように意識する
  3. 額に手を当て、5秒間、額と手を押し合う
  4. 5~10回行う
  1. あごを引き、あごの下に両手の親指を当てる
  2. 喉仏に力を入れるように意識する
  3. あご下、親指に力を入れて5秒間押し合う
  4. 5~10回行う

筋トレは長期的に取り組むことで効果が出るものですが、体力的に筋トレが困難な人もいます。そこで、食事の調理方法などを工夫して嚥下障害のトラブルを予防する方法もご紹介します。

食事の工夫

さらさらとした水状の料理はむせやすいため、できるだけ避けると安心です。とろみをつけると、口から喉、食道へとスムーズに流れやすくなります。食材は小さく切って飲み込みやすくするのがおすすめです。

おわりに:むせやすいと思ったら喉の筋トレと食事の工夫で嚥下障害予防を!

食事中にむせたり、飲み込みにくくなったと感じたとき、嚥下障害が始まっている可能性があります。喉周辺の筋力アップのトレーニングや調理方法の工夫で、楽しい食事を味わえるようにしましょう。

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