記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/7/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
咳や発熱、腹痛、嘔吐、下痢などの症状の多くは、細菌やウイルス感染により引き起こされるものです。今回は感染症の原因のうち「ロタウイルス」に着目して、感染経路や発症した場合の特徴的な症状、感染者に対する適切な対処法などを解説します。
ロタウイルスは、直径およそ1000ナノメートルで車輪のようなかたちをしたウイルスです。「ロタ」にはラテン語で「車輪」という意味があり、ロタウイルスの名称はその見た目にちなんで名づけられました。ロタウイルスに感染・発症すると、下痢や嘔吐といったノロウイルスと似た症状が出ることで知られています。
ノロウイルスとの大きな違いは、その大きさと便と一緒に排出されるウイルスの量です。
おもな感染経路は、手指・爪についたウイルスが口から入ることによる経口感染です。ロタウイルスが付着した手には、十分に洗っても皮膚や爪の隙間に数億のウイルスが残ってしまうと言われています。このため、既にロタウイルスに感染・発症した患者の便を処理した人の手から、患者の周囲に感染が広がるケースが非常に多いのです。
なお、ロタウイルスの流行シーズンは2~3月にかけて、特に乳幼児・小児に感染流行しやすいことがわかっています。
ロタウイルスは、感染から1~3日の潜伏期間を経て以下のような症状を引き起こします。
なお、下痢や嘔吐で水分と栄養をうまく摂れない状況が数日続くため、人によっては脱水症状、けいれん、脳症などの合併症を起こし重症化するケースも見られます。
ロタウイルス感染が原因と思われる下痢・嘔吐の症状がみられたときは、以下の方法で対処しましょう。
下痢や嘔吐の症状は、体にとって有害なロタウイルスを体外へ出そうとする免疫反応です。これを止めると回復が遅くなってしまうので、できるだけ下痢止めの薬は飲ませないようにしてください。
ロタウイルス感染症で怖いのは、脱水症状を併発することです。下痢や嘔吐の症状が落ち着いた合間をぬって、少しずつ水分補給をして脱水症状を予防しましょう。
飲み物は本人が飲みやすいもので構いませんが、乳幼児の場合、牛乳やジュースなど濃い味の飲み物は吐いてしまう可能性が高いです。本人の様子を見ながら白湯や水、薄めたスポーツドリンクなど、体に取り込みやすい薄味の飲み物を与えましょう。
もし飲み物を与えてもすべて吐き戻し、本人がひどく衰弱しているようなら、病院で入院・点滴の処置が必要かもしれません。早めに医師に相談し、重症化する前に医療機関を受診してください。
ロタウイルス感染症による症状で、脱水症状の次に怖いのが嘔吐物による窒息です。特に乳幼児が発症した場合、吐いた物が気道に詰まり窒息するケースが見られます。トイレで嘔吐しているときだけでなく、部屋で休んでいるときにも、容体をよく観察して窒息を防いであげてください。
ロタウイルスに感染した人の嘔吐物や便には、大量のロタウイルスが含まれています。以下に、ロタウイルス感染者が排出した汚物の処理に必要な道具、適切な処分方法、処分する際の注意点をご紹介します。
家族などがロタウイルスに感染していることがわかったら、汚物を適切に処分し感染を広げないために、すぐに以下の道具を準備しましょう。
感染者本人、または汚物を処理した人が来ていた服には、ロタウイルスが付着している可能性が高いです。他の人に感染を広げないよう、以下の方法で選択・消毒しましょう。
すぐに衣類を洗濯できないときは、ウイルスが飛散しないようゴミ袋などに入れて、きつく封をした状態で保管してください。なお、リネン類など頻繁な洗濯が難しいものは、汚物が付着した部分を乾燥させたうえで、アイロンや布団乾燥機で熱消毒しましょう。
乳幼児のロタウイルスの感染を予防するには、ワクチン接種が効果的です。日本では、乳幼児のロタウイルス感染症予防に有効な2種類のワクチンを任意で受けることができます。
※2020年10月1日から定期接種となります。
詳しくはかかりつけの小児科医、または医療機関に相談してください。
▼ 厚生労働省 ロタウイルスワクチンQ&A(2020年8月出生の方についての注意事項)
水分が摂れないほどの激しい下痢、嘔吐が数日続いていたら、ロタウイルス感染症の可能性がありkます。ロタウイルスは、2~3月にかけて特に乳幼児の間で流行する、非常に感染力の強いウイルスです。疑わしい症状がみられたら、脱水症状や嘔吐物による窒息を起こさないよう注意深く容体を観察し、防護服を着たうえで、適切な手順で汚物を処理してください。