食中毒の原因となる「黄色ブドウ球菌」の特徴は?

2020/6/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

黄色ブドウ球菌は、吐き気や嘔吐、腹痛などを引き起こす食中毒を引き起こす細菌です。この記事では、黄色ブドウ球菌の特徴を紹介しつつ、安全な食生活を送るために欠かせない対策を紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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黄色ブドウ球菌とは

食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌は、とても身近に存在している菌です。人や動物の化膿性疾患に関係する菌で、約30%の人の鼻腔や手指にも存在しており、健康的な人でも黄色ブドウ球菌を持っていることがあります。人のほか、ほ乳類や鳥類にも存在が認められています。
黄色ブドウ球菌を培養したとき、黄色い色素を出し、球形をした菌が複数集まってブドウの房状に見えることから黄色ブドウ球菌という名称がつけられました。

黄色ブドウ球菌

  • 大きさ:直径約1μm(1mmの1000分の1)
  • 性質:耐熱性を持ち、乾燥に強い。食塩濃度が高い(7~10%)でも死なない。
  • 感染経路:黄色ブドウ球菌に汚染された食品を食べることで感染。
  • 潜伏期間:1~5時間
  • 症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢など。重篤になることは少なく、数時間~2日で症状が改善。

黄色ブドウ球菌が食中毒を引き起こすのはなぜ?

黄色ブドウ球菌は、ブドウ球菌エンテロトキシンという毒素を産生します。食品の黄色ブドウ球菌が増えると、ブドウ球菌エンテロトキシンが蓄積されていきます。

ブドウ球菌エンテロトキシンは、酸に強い性質を持ち、胃酸で消化されません。そのため、胃や小腸からブドウ球菌エンテロトキシンが吸収され、嘔吐などの症状を引き起こします。また、熱に強い性質を持ち、100℃で30分間加熱しても死滅しません。加熱しても安心できないことに注意が必要です。

食中毒の原因となる食品例

黄色ブドウ球菌による食中毒はあらゆる食品が原因となりえます。食品が黄色ブドウ球菌に汚染するのは、調理する人の手指を介する場合が多いためです。特に注意すべきなのは、おにぎりやお惣菜、弁当、サンドイッチなど、素手で扱う手作りの食品です。

吐き気や嘔吐といった症状が出たときの対処法は?

食中毒の一般的な症状は、吐き気、嘔吐、腹痛などで、ほかの病気の症状と似ているため判断が難しいかもしれません。気になる症状のうち、食後数時間経ってから症状があらわれた場合、食中毒の可能性があります。食中毒が疑われる場合、対応には次のような注意が必要です。

水分補給を忘れない
嘔吐や下痢が続くと脱水症状を招く恐れがあります
吐き気や嘔吐がある場合
寝そべるときは横向きに寝て、嘔吐物で喉が詰まらないようにしてください。高齢者や乳幼児の口の中に吐いたものが残っている場合、薄手のビニール手袋をして取り除いてあげましょう
下痢が続いた場合
自己判断で、市販の下痢止め薬を服用するのはなるべく控えましょう。体が下痢の反応をしているのは、体内から有害な細菌やウイルスを排出させようとしていることがあります。薬によってそういった働きを止めてしまうと、症状が悪化する可能性があります。
すぐに病院に相談したほうがよい場合
下痢が1日に10回以上続く、血便がみられる、激しい嘔吐、呼吸困難、意識障害などの重い症状があらわれたときは、すぐに病院を受診してください。

黄色ブドウ球菌の感染を防ぐには

食中毒は身近な病気ですが、感染するとつらい症状が起こり、ときには重症に陥ることもあります。大切なのは食中毒感染の予防を徹底することです。

  • 調理前には手指、手首をしっかり洗う
  • 調理中は髪の毛や顔をさわらない
  • 長い髪や顔に髪の毛がかかるときはまとめたり三角巾をつける
  • 下ごしらえをしてから、調理、食事までの時間はなるべく短時間におさめる
  • 調理器具はよく洗い、殺菌を十分に行う
  • 長時間、常温で放置していた食品や食材などは廃棄する(加熱しても黄色ブドウ球菌は壊れない)
  • 手指に傷があるときは調理を控えるか、傷口を覆って使い捨てのゴム手袋などを着用する

おわりに:黄色ブドウ球菌は熱に強いため、予防を徹底して感染を防ぎましょう

黄色ブドウ球菌は身近に存在する細菌ですが、熱や乾燥、酸に強い性質を持ち、簡単には殺菌できない特徴があります。日頃から調理器具を清潔に保ち、食品の取り扱いに注意しましょう。日頃からこまめに掃除したり、整理整頓を心がけることも大切です。

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