熱中症になりやすい環境となりやすい人の特徴 ― 自宅でできる予防対策とは?

2023/7/19

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

どんな人にも熱中症のリスクはありますが、より熱中症になりやすい環境、なりやすい体質・生活習慣があることを知っていますか。
この記事では、熱中症になりやすい人の特徴やなりやすい環境の条件について解説していきます。熱中症を防ぐために必要な知識になりますので、この機会に理解しておきましょう。

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日本の夏は熱中症リスクが高い?

熱中症は、体温が上昇して脱水症状が進むことで、体内の水分と電解質のバランスが崩れたり、体温がうまく調節できなくなることが原因で起こります。いわゆる「高温多湿の環境」の蒸し暑い日本の夏の気候は、脱水症状が進みやすく熱中症になりやすいといわれています。

熱中症で体温調節がうまくいかなくなるのは、人間が汗をかくことで体温を保っていることが関係しています。熱中症で水分や塩分が不足すると、うまく汗をかけなくなり、その結果として以下のような症状が引き起こされます。

代表的な熱中症の症状
  • めまいや立ちくらみ
  • 一時的な意識消失
  • 頭痛
  • 体温上昇、高熱
  • 皮膚が赤く乾燥する
  • 筋肉のけいれん
  • 吐き気や嘔吐 など

熱中症は、軽度のうちに適切な対処をすることで重症化を防ぐことができますが、体力のない子どもや基礎疾患を持つ高齢者は発症リスクが高く、重症化しやすいです。また、子どもや高齢者がなりやすいと言いましたが、熱中症は条件さえそろえば年齢や性別を問わず誰でもかかる可能性があります。予防対策のため、「熱中症になりやすい環境」を理解しておきましょう。

熱中症になりやすい環境とは?

熱中症が起こりやすいのは、最高気温が30℃以上の真夏日や夜の気温が25℃を超える熱帯夜といわれています。熱中症の危険度の指標として暑さ指数(WBGT)が使われますが、一般的な温度計・湿度計は輻射熱が計測できないので、正確なWBGTを算出できません。

熱中症リスクは、気象庁の熱中症警戒アラート日本気象協会(tenki.jp)の熱中症情報などで確認ができますので、こまめにチェックするようにしましょう。

ただし、熱中症は高温多湿の環境がそろえば、真夏日や熱帯夜でなくても発症することがあるので、天候だけでリスクを判断することはできません。以下の条件がそろっている環境は、季節・天候、屋内・屋外、日中・夜間に限らずリスクがあるので注意しましょう。とくに、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなって体温がうまく下がらなくなるので、日差しが強くない日であっても気をつけるようにしてください。

  • 強い直射日光や照り返しがあたる場所
  • 気温・室温と湿度が高く、ムシムシしていて風のない、空気がよどんでいる環境
  • 季節の変わり目(急に蒸し暑くなったり、前日に比べて気温が急上昇することがある)
  • 夏のお風呂場や洗面所(湿度が高く、室温も上昇しやすい)
  • 2階以上の部屋(1階・下層階からの熱気や湿気が集まってくる)

熱中症になりやすい人の特徴は?

以下の人は、熱中症になりやすい可能性があります。当てはまる人、家族に当てはまる人がいる場合は、予防対策を徹底しましょう。

子ども
体温調節機能が未成熟なため、熱の影響を受けやすい
高齢者
暑さや喉の渇きを感じにくいことが多く、体内の水分量が少ない傾向がある
肥満、太り気味の人
皮下脂肪が多いと、体に熱を溜め込みやすい
運動しない人、体力がない人、暑さに慣れていない人
体力がない、持久力がない、暑さに弱い人は熱中症リスクが高いといわれている
体調不良
寝不足や疲れ、風邪気味などで体調が良くないと、体温調節機能がうまく働かないことがある
二日酔いの人、下痢やおう吐がある人
二日酔いや下痢・おう吐がある人は脱水状態になりやすい
持病のある人
生活習慣病や精神神経系の病気、皮膚の病気などの人は、熱中症になりやすいといわれている
特定の薬を飲んでいる人
発汗を抑える薬や抗利尿作用のある薬を飲んでいる人は、熱中症リスクが高まる
炎天下、高温多湿、水分をとれない環境で働く人
炎天下での作業が多い運搬業や建築業の人、厨房で働く人は熱中症になりやすく、長距離ドライバーや販売員・事務員の人もこまめに水分をとれなない環境では注意が必要
スポーツ選手、スポーツ観戦をする人
熱中症になりやすい環境の場合、スポーツ観戦のときも熱中症対策が必要

自宅でできる熱中症予防対策

自宅でできる熱中症対策として、以下が挙げられます。

セルフケア

生活習慣を見直して暑さに強い体を作り、適切な暑さ対策・脱水対策をとることで、熱中症はある程度予防できます。普段から以下の習慣を心がけましょう。

  • ウォーキングなどの適度な運動で汗をかく習慣をつけ、暑さに耐性をつけておく
  • 喉が渇く前に水分補給する(1時間に1回など、飲む時間を決めておく)
  • コーヒーや緑茶、アルコールは脱水の原因になることがある。水分補給は水かノンカフェイン飲料で
  • 糖分・塩分を含むスポーツドリンクは生活習慣病のリスクを上げる場合がある。運動中など、熱中症リスクが高いときに飲むようする
  • 3食規則正しく食べる(とくに朝食は大切)
  • 良質な睡眠のために、寝ているときもエアコンを活用する
  • 少しでも不調を感じたら早めに休む
  • 暴飲暴食は避ける

暑さ対策

気温や湿度が高い日や気象情報で熱中症のリスクが高いという情報が出ているときは、以下の暑さ対策をとりましょう。

  • 通気性の良い涼しい服を着る
  • 吸汗性、速乾性に優れた体温調節しやすい下着を選ぶ
  • 日中の外出を控える。できれば夕方以降に外出する
  • 日中に外出するときは、日陰を歩く、帽子や日傘を使うなどして日差しを避ける
  • 扇風機やエアコンをうまく活用する(節電や省エネにこだわりすぎない)

室温管理

屋外と屋内の気温差が大きいと体への負担も大きくなるため、エアコンの設定温度は屋外の気温の5℃以内にしたほうが良いといわれています。ただし、気温が35℃以上になる猛暑日の場合はこの限りではありません。
これらを加味して考えると、適切なエアコンの設定温度は26℃〜28℃くらいと考えられています。夏のエアコンは28℃に設定しましょう。

また、以下のように扇風機やサーキュレーターで冷気をうまく動かすことで、冷房の効率を上げ、熱気や湿気のこもりを防ぐことができます。

冷房効率を上げるサーキュレーター・扇風機の使い方
  • エアコンを背に、床に設置して床にたまった冷気を循環させる
  • ロフトを涼しくしたいときは、1階の床とロフトの床の2台設置する。エアコン→1回の床→ロフト→エアコン という流れで空気を循環させる
  • こもった熱を換気させたいときは、窓や扉などの「空気の出口」に向けて設置。熱気を外に排出させる

なお、トイレやお風呂場、洗面所、寝室、キッチンは、熱気や湿気がこもりやすいです。起床前後などタイミングを決め、ときどき窓を開ける、扇風機やサーキュレーターを回して換気をしましょう。

おわりに:普段から暑さと水分補給に慣れる工夫をし、熱中症を予防しよう

子どもや高齢者をはじめ、持病のある人や体調の悪い人、運動しない人、暑さに慣れていない人は熱中症になりやすいことが分かっています。また、気温的にはそこまで高くなくても、湿気や熱気がこもりやすい環境、水分をとりにくい環境にいる人は熱中症リスクが高くなります。
熱中症になりやすい環境にいる人や熱中症になりやすい人は、こまめな水分補給と体調管理、体質改善に気をつけ、暑さ対策を徹底しましょう。子どもやお年寄りは自分自身で注意できないこともあるので、家族や周囲の人がしっかり見守るようにしてください。

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