かむ力と飲み込む力に合わせた食形態調整とは

2026/4/29

食べにくさは食事量低下のきっかけになる

高齢になると、歯の本数が減る、入れ歯が合いにくくなる、舌や頬の動きが弱くなるなどの変化が起こりやすくなります。これにより、かたいものが食べにくい、ぱさつくものが飲み込みにくい、水分でむせるといった困りごとが出ることがあります。こうした食べにくさが続くと、肉や魚、野菜などを避けるようになり、食事内容が偏りやすくなります。

食形態調整とは、本人のかむ力や飲み込む力に合わせて、食材の大きさ、やわらかさ、まとまりやすさ、水分量などを調整することです。単に細かく刻めばよいというものではありません。細かく刻んだだけの食事は、口の中でばらけやすく、かえって飲み込みにくい場合があります。安全に食べるためには、食べ物が口の中でまとまり、のどを通りやすい状態に整えることが大切です。

食形態を考えるときの基本

食形態を考えるときは、やわらかさ、まとまりやすさ、べたつきにくさ、飲み込みやすさを確認します。たとえば、根菜は大きく切って煮るだけではなく、やわらかく煮てからつぶす、あんをかけてまとまりをよくするなどの工夫ができます。肉は薄切りやひき肉にして、卵や豆腐、片栗粉などでまとまりを出すと食べやすくなります。

水分でむせる人では、とろみをつけることが役立つ場合があります。ただし、とろみの濃さは人によって適した程度が異なります。濃すぎると口やのどに残りやすくなることがあり、薄すぎるとむせやすさが残ることがあります。日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、嚥下調整食分類を示しており、医療や介護の現場で食形態を共有する目安として使われています。自宅で取り入れる場合も、専門職に相談しながら進めると安心です。

家庭でできる調理の工夫

家庭で食形態を整えるときは、まず普段の食事を少し変えることから始めます。ごはんがかたい場合は、やわらかめに炊く、おかゆにする、雑炊にするなどの方法があります。パンはぱさつきやすいため、牛乳やスープに浸す、フレンチトーストのようにしっとりさせると食べやすくなります。

魚は骨を取り除き、煮魚や蒸し魚にすると身がほぐれやすくなります。焼き魚はぱさつく場合があるため、大根おろしやあんを添えると飲み込みやすさが増します。野菜はやわらかく煮て、必要に応じてつぶす、刻む、とろみをつけるなどの方法があります。葉物野菜やきのこ、海藻は口の中に残りやすいことがあるため、細かく切るだけでなく、卵とじや汁物にしてまとまりを持たせるとよいでしょう。

避けたい調整と注意点

食形態調整で避けたいのは、本人の状態を確認せずにすべてをミキサー食にすることです。見た目や味の変化が大きいと、食欲が落ちることがあります。また、必要以上にやわらかくすると、かむ機会が減り、口の機能を使う機会も少なくなります。本人が安全に食べられる範囲で、できるだけ食事の楽しみを残すことが大切です。

むせがある場合でも、むせること自体がすべて悪いわけではありません。むせは気道に入りそうになったものを外へ出そうとする反応です。ただし、むせが頻回に起こる、食後に咳が続く、発熱を繰り返す、食後に声が湿ったようになる、体重が減る場合は、嚥下機能の評価が必要になることがあります。

専門職に相談する目安とまとめ

食事中のむせ込みが増えた、水分でよくむせる、飲み込むまでに時間がかかる、口の中に食べ物が残る、食後に疲れてしまうといった変化がある場合は、かかりつけ医や歯科、管理栄養士、言語聴覚士に相談しましょう。急な発熱、呼吸困難、意識の変化、強いだるさがある場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。

食形態調整は、食事を制限するためではなく、食べる力に合わせて安全と栄養を支えるための工夫です。本人の好みや生活リズムを尊重しながら、少しずつ調整していくことが、無理なく続けるポイントになります。

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