アセトアルデヒドってどんなもの?体にどんな影響を及ぼすの?

2019/9/10

アセトアルデヒドという言葉を聞いたことがなくても、アルコール、つまりお酒を知らない人はいないでしょう。お酒に強いか、弱いかは遺伝によって決まりますが、お酒に強い・弱いという体質に関わっているのがこの「アセトアルデヒド」という物質です。

アセトアルデヒドとはどんな物質で、なぜ人によってお酒に強い・弱いが決まるのでしょうか?その理由には、日本人に多いある遺伝子の性質が関係しているのです。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

アセトアルデヒドはなぜできる?

アセトアルデヒドは、自然界では植物の代謝過程でできる物質ですが、ヒトの体内ではエタノールの酸化によってできる物質、すなわちアルコールを飲んだ際に生成される物質のひとつです。通常はアセトアルデヒドのまま漂っていることはない「中間代謝物質」で、肝臓でアルコールから「アルコール脱水素酵素(ADH)」という酵素の働きによって分解されて産生し、さらに「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」と「1型アルデヒド脱水素酵素(ALDH1)」によって酢酸に分解されます。

酢酸に分解された後は、筋肉や心臓その他の臓器に移動してさらに分解され、最終的に炭酸ガスと水になって無害化して排出されます。この一連の代謝が滞りなく行われていれば、アセトアルデヒドは人体に自覚症状を及ぼすことはほとんどないのですが、大量の飲酒などによって分解が追いつかないと体内に大量のアセトアルデヒドが残り、二日酔いの症状を引き起こします。

アセトアルデヒドによってあらわれる症状は?

アセトアルデヒドは、前述の通り二日酔いの症状を引き起こす「犯人の一味」といったところの有害物質です。具体的には「吐き気・呼吸や脈拍の増加・頭痛・食欲不振・喉の渇き」など、アルコールよりも数倍強い生体反応を引き起こします。

ALDH(アルデヒド脱水素酵素)の働きが悪いと、このアセトアルデヒドがいつまでも血中に残り、二日酔いの症状が残ってしまうのだと考えられています。

アセトアルデヒドの代謝能力は人によって違うの?

アセトアルデヒドの代謝能力、つまりどれだけ早く分解できるかは、個人差や人種差が大きく、遺伝によって決まることがわかっています。初めにアセトアルデヒドは「ALDH1・2」によって分解されることをご紹介しましたが、アセトアルデヒドの濃度が低くても働くのが「ALDH2」、アセトアルデヒドが高濃度にならないと働かないのが「ALDH1」で、メインの分解酵素として働くのは「ALDH2」の方です。

つまり、「ALDH2」の活性が弱い(働きが悪い)、または欠けている場合、アセトアルデヒドが少し溜まっただけでは十分に代謝されず、アセトアルデヒドが溜まりやすくなり、少しの飲酒でも体調が悪くなってしまう「お酒に弱い体質」となるのです。さらに、「ALDH2」が完全に欠けている場合、「お酒を全く受けつけない体質」となり、このような人に飲酒を進めるのは非常に危険ですので絶対にやめましょう。

日本人は、とくに「ALDH2」の欠損率が高い人種であることがわかっています。ALDH2の欠損はアジア系の「モンゴロイド」と呼ばれる人たちに特有の遺伝的性質で、ヨーロッパ系・アフリカ系の人種には見られないことがわかっています。例えば、ドイツ・エジプト・スウェーデンなどの人にはALDH2の欠損は見られません。

以下のように、アジア系の人種ではALDH2の欠損率(活性が弱い、または欠けているタイプの人)が高いことがわかります。

  • 日本人:44%
  • 中国人:41%
  • 韓国人:28%
  • フィリピン人:13%
  • タイ人:10%
  • インド人:5%
  • ハンガリー人:2%
  • ナバホー人(アメリカ原住民):2%

数あるアジア系の中でも、日本人や中国人は群を抜いてアルコールに弱い人種であることがわかります。また、お酒の強さには性別や年齢も関係していると考えられ、女性よりも男性、高齢者よりも若い人の方がお酒に強い傾向があります。とはいえ、これはあくまでも傾向であり、日本人は全体としてアルコールに弱い体質の人が多いことは変わりません。

また、これはあくまでもアセトアルデヒドを分解しやすいかどうか、つまりお酒を飲めるかどうかという話であり、お酒に強い人は体を壊さない、というわけではありません。むしろ、各種臓器にアルコールの甚大なダメージを受けるのは、当然ながら大量に飲酒する人です。お酒はくれぐれも飲み過ぎないように気をつけましょう。

お酒はほどほどに、弱い人に無理強いすることはせず、飲みたい人は自分のペースで楽しむのが大切です。また、飲みたいけれどどうしても具合が悪くなってしまうという人は、体質的にアルコールに弱い可能性が強いですから、決して無理はしないようにしましょう。

アセトアルデヒドの代謝はチェックできる?

アセトアルデヒドの代謝は、お酒を飲んだときの反応でわかります。お酒を飲むとすぐに顔が赤くなるという人は、生まれつきALDHが少ない、活性が低いタイプの人です。つまり、早い段階でアセトアルデヒドがどんどん血中に流れ出すため、アセトアルデヒドによって血管が広がり、顔が赤く見えるというわけです。

この原理を利用したのが、アルコールパッチテストと呼ばれるもので、市販のキットが数多く販売されているほか、消毒用アルコールとガーゼつきの絆創膏があれば、以下の手順で簡単にチェックすることができます。

  1. 薬剤のついていないガーゼつき絆創膏に、消毒用アルコールを2~3滴染み込ませる
  2. 1を上腕の内側に貼りつけ、7分間そのままにする
  3. 7分経ったらはがし、直後(5秒以内)にガーゼが当たっていた部分の肌の色を観察する
  4. はがしてから10分後に、もう一度肌の色を観察する

結果は以下のように判断できます。

肌の色がどちらも変化なし
ALDHの活性が十分で、お酒が飲めるタイプ
肌の色が10分後に赤くなった
ALDHの活性が悪く、お酒が全く飲めないわけではないが、飲むと頭痛や吐き気を引き起こす
肌の色がはがした直後に赤くなっていた
ALDHが欠けていて、全くお酒を受けつけない

日本人のALDH欠損率44%のうち、全く受けつけない人は6~7%、残りの37~38%は飲めないわけではないが弱い人、ということがわかっています。パッチテストでお酒が飲めない、弱い体質とわかった人はくれぐれも無理をしないようにしましょう。

おわりに:日本人はアセトアルデヒドの代謝活性が弱い

アセトアルデヒドは、アルコール(お酒)を分解したときにできる「中間代謝物質」の1つで、二日酔いの原因物質の1つと言われています。アルコールは肝臓にある「ADH」という酵素でアセトアルデヒドに分解され、アセトアルデヒドは「ALDH」という酵素によってさらに分解されます。

このALDHが遺伝的に弱い、または欠けている人が日本人には約44%もいます。お酒に弱い人は、無理をしないようにしましょう。

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