記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/7/7 記事改定日: 2020/4/24
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
経口補水液は、熱中症対策としてCMなどでもよく流れていますので、水分補給用の飲料として広く知られるようになってきました。しかし、経口補水液の飲み過ぎがよくないということは、あまり知られていないのではないでしょうか?
今回は、経口補水液を飲むべきタイミングや1日に飲んだほうがいい目安など、経口補水液の飲みかたについて解説していきます。
経口補水液は、脱水症状から素早く回復するために、水分と電解質を細胞の内部まで浸透させるものです。
素早い水分補給をするための飲料としてはスポーツドリンクもありますが、スポーツドリンクはあくまでも発汗による多少の水分不足を想定して作られているため、含まれるおもな電解質は「塩(=塩化ナトリウム)」である「ナトリウム」と「クロール」で、しかもその量は経口補水液と比べると約20%~50%程度と圧倒的に少ないです。
さらに、感染症などの嘔吐や下痢によって起こる脱水症状で不足しがちな「カリウム」の量も非常に少なく、炭水化物(ブドウ糖)は約2.5~5倍程度と非常に多く含まれています。
このため、スポーツや日常生活の発汗を補うための飲料としてはスポーツドリンクで十分なのですが、感染症などの嘔吐や下痢による脱水症状にはスポーツドリンクでは対応しきれません。
経口補水液は、WHO(世界保健機関)による経口補水療法(コレラなどの脱水症状に対する治療法)の考え方に基づいて作られているため、スポーツドリンクと比べて「カリウム」「ナトリウム」「クロール」のいずれの電解質も多く含まれています。
以下のような軽度から中等度の脱水症状の場合にはスポーツドリンクではなく、経口補水液を使いましょう。
経口補水液には液体タイプだけでなく、ゼリータイプもあります。高齢者・シニアや体力が低下してうまく飲み込めないなど、嚥下能力が低下している場合は、ゼリータイプがおすすめです。
ただし、経口補水液は健康飲料ではありません。健康なときに飲んでも通常は害になりませんが、飲んだからといって健康状態が向上するわけではないことは覚えておきましょう。
また、発汗などの水分不足・電解質不足がない健康な状態で大量に経口補水液を飲むと、塩分や糖分の摂りすぎになる可能性もあります。
健康な状態のときに経口補水液を大量に飲むことは控え、あくまでも風邪などによる脱水状態や夏場の大量発汗に飲むようにしましょう。
経口補水液の1日の摂取目安量は、乳児・幼児・学童〜成人と、体格に合わせて異なります。だいたい以下のような量が目安です。(g…グラムはゼリーのみ)
量に差があるのは、脱水の程度によって適宜調節する必要があるためです。脱水の状態がそこまでひどくないようであれば、500mL飲まなくてもよい場合もあります。ペットボトルやゼリーの市販品には、摂取量の目安が記載されていますので、飲む際に参考にしましょう。
経口補水液は、感染症などの嘔吐や下痢などによる脱水症状をはじめ、大量発汗による熱中症予防にも効果的で「飲める点滴液」などの通称で親しまれています。
このように「いいもの」というイメージがあまりにも先行しすぎ、「夏場はとにかくたくさん飲んでおけば大丈夫」という意識でたくさん経口補水液を飲んでしまう人もいるようです。しかし、経口補水液の飲み過ぎは、電解質の摂りすぎで下痢を引き起こし、脱水症状を悪化させることがあるので注意しましょう。
というのも、初めにご紹介したように、経口補水液は一般的なスポーツドリンクなどと比べて「ナトリウム」「カリウム」「クロール」が非常に多い飲み物だからです。これは、電解質不足を素早く補うとともに、浸透圧によって体内の細胞に水分を吸収させるためで、ざっくり言えばスポーツドリンクよりも脱水に効く代わりに、その副作用も強い、ということです。
効果の強い薬剤はそのぶん副作用のリスクも高いものですが、それと全く同じことが経口補水液とスポーツドリンクにも起こりうるともいえます。
また、高血圧の人は塩分を摂りすぎないよう医師から食事指導を受けていると思われます。経口補水液1本(500mL)に含まれる塩分量は約1.5gです。仮に高血圧の人が経口補水液1本を飲んだとすると、1日の塩分摂取量の目安の約4分の1を摂取してしまうことになり、それに加えて通常どおり食事をしてしまうと塩分摂取量の目安を簡単に超過してしまいます。
そして、腎臓や心臓の働きが弱っている人や、普段から下剤や利尿剤を処方されている人も注意が必要です。腎臓の働きが弱るとカリウムを体外に排出しにくくなるので、スポーツドリンクの何倍ものカリウムが含まれる経口補水液をむやみに摂取すると、血中のカリウム濃度が高くなりすぎて不整脈などを引き起こす可能性があります。
経口補水液を飲むのはあくまで「風邪などで嘔吐や下痢が続くとき」「夏場で大量に発汗しているとき」にとどめ、水分や塩分が不足していないのに飲むのはやめましょう。とはいえ、脱水症状から素早く回復するためには非常に優秀な飲料ですから、こうした状態になったときには目安量を守りながら摂取するように心がけてください。
脱水やかくれ脱水のときは、体内に不足した水分を補うため、電解質を多く含んだ経口補水液をたくさん飲むことがすすめられています。
具体的には次のような症状が見られた際に多くの水分を飲むようにしましょう。
一方で、脱水症状が進むと吐き気や嘔吐などの症状が見られることがあります。このような場合は無理に経口補水液を摂ろうとすると嘔吐を誘発することがあるので注意が必要です。かえって脱水がひどくなることがありますので、無理のない範囲で摂取するようにしましょう。
また、一気に多くの水分を摂る胃や腸に負担をかけることになるので、少しずつ口に含ませながら飲ませましょう。
経口補水液は、もともと嘔吐や下痢など、病的な脱水状態から回復するために作られた飲料です。そのため、スポーツドリンクなどと比べて圧倒的に塩分やカリウムが多く含まれています。ですから、健康な人が必要以上に摂りすぎるとかえって下痢などを引き起こし脱水が悪化することもあります。
経口補水液の1日の摂取目安量は大人で500~1000mLです。脱水を起こしたときや大量に発汗したときなどに、正しく飲みましょう。