記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/15 記事改定日: 2018/4/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
発作が起こると意識を失ったりして、ケガをする怖れもあるてんかん。生まれたばかりの赤ちゃんもなる可能性がある病気で、子供にも多くみられるので、心配している保護者も多いと思います。ところで、てんかんは遺伝するのでしょうか?
この記事では、てんかんと遺伝、遺伝子の関係について一緒に見ていきましょう。
てんかんには、原因不明の「特発性てんかん」と、頭部の怪我や脳血管障害など脳の損傷によって起こる「症候性てんかん」がありますが、まず症候性てんかんは遺伝するものではありません。子供に遺伝する可能性があるのは特発性てんかんの方ですが、てんかんはさまざまな素因や誘発因子が重なって発症するものなので、遺伝するのはごく一部のてんかんのみと言われています。
また、てんかんそのものが遺伝するというより、てんかん発作の起こりやすい体質は遺伝する可能性があるとも考えられています。こうした遺伝性のてんかんの多くは良性で、治癒しやすい傾向があります。
脳の発達において重要な神経細胞の移動を制御する遺伝子に突然変異が起こると、神経細胞を誤ったところに配置してしまったり、ニューロンの異常形成を起こすことがあります。このことが、てんかんを発症させる原因になる場合があります。
特発性てんかんの中で、下記のようなてんかんは遺伝と、遺伝子の一部の変異が関連していることがわかっています。
・常染色体優勢夜間前頭葉てんかん:乳児期に発症する。夜間の睡眠中にけいれん発作が起こる
・良性家族性新生児痙攣
・全般てんかん熱性けいれんプラス
・小児良性部分てんかん:5歳頃に発症し、12歳頃には消滅するてんかん。夜間の睡眠中のみけいれん発作が起こる
・欠伸てんかん:小児期や思春期に発症するてんかん
・若年ミオクロニーてんかん:小児期や思春期に発症するてんかん
・覚醒時大発作てんかん:10〜20代でに発症するてんかん
なお、親族や両親にてんかんの患者がいなくても、お子さんに突然遺伝子変異が起こり、てんかんが発症することもあります。また、てんかんの研究者たちは、てんかんの発症に関わっている遺伝子が何百種類もある可能性があることを示唆しています。
てんかんのほとんどは遺伝性は乏しいですが、下記の種類のてんかんは遺伝傾向がはっきりしています。
・ドラベ症候群
・進行性ミオクローヌスてんかん
1歳未満で最初の発作を起こすてんかんの一種「ドラベ症候群(難病指定を受けています)」にかかっているほとんどの乳児は、遺伝子に変異があり、中枢神経や末梢神経などに存在するナトリウムイオンチャネルという部位が影響を受け、発作が起きると考えられています。
両親の精子か卵子の一部に遺伝子異常が見られる場合は、その影響で子供が発症することがあります。また、家族に熱性けいれんやてんかんの既往歴がある場合は、両親のいずれかが同じ遺伝子異常を持っていることがあり、遺伝子異常を持っている患者さんの子供には50%の確率で遺伝子異常が遺伝する可能性があるとされます。
進行性ミオクローヌス(筋肉が突然収縮する)てんかんとは、時間の経過とともに変化する発作を特徴とするてんかんです。例えば、小児期に始まる重度の進行性ミオクローヌスてんかんである「ラフォラ病」には、脳細胞の炭水化物を分解する遺伝子が関係しているとされています。
また、上記の他に下記の種類のてんかんも遺伝傾向が明らかになっています。
・歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症
・ミトコンドリア脳筋症
てんかんの多くは遺伝しませんが、一部のてんかんは親から子供へ遺伝する可能性があります。遺伝について心配な方は、主治医にご自身がどのタイプのてんかんか尋ねた上で、遺伝性について尋ねることをお勧めします。