自閉症の症状は年齢ごとで違う? 早期発見のために注意すること

2017/8/21 記事改定日: 2018/3/29
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

自閉症とは正常な社会的およびコミュニケーション能力の発達に影響を及ぼす脳障害です。自閉症を患っていると、早い時期から他の人とコミュニケーションや交流をするのに問題が見られることが多いです。自閉症の症状を詳しく解説していくので、早期発見に役立ててください。

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赤ちゃんの自閉症の症状 ~ 月齢・年齢別の特徴

赤ちゃんは自閉症であっても症状がはっきりしないので気づけないことが多いといわれていますが、月齢や年齢によって以下のような兆候が現れることがあります。

2か月頃

生後2か月頃になると健常な赤ちゃんは、視力が上昇して物を認識するようになり、あ母さんやお父さんと目を合わせて笑うようになります。表情に変化が現れるのもこの頃です。
一方、自閉症の赤ちゃんは近づいて笑いかけても目を合わせようとせず、笑顔が少ないという特徴があります。表情は一定で変化がなく、母乳を飲んで満腹になったとしてもおむつが濡れて気持ち悪い時も、無表情なことが多いです。

6か月頃

生後6か月頃には、健常な赤ちゃんはお母さんやお父さんなどの親しい人物を認識し、他者を怖がる「人見知り」が始まります。人見知りの赤ちゃんは外出先で知らない人が近くに来ると大泣きすることがあり、多くのお母さんが非常に手を焼くものですが、これは自分とごく近い人との愛着形成ができている証拠です。また、ハイハイを習得する時期でもあるので、後追いが始まります。

一方、自閉症の赤ちゃんは、人見知りや後追いが一切ないことが特徴です。一見すると「育てやすい子」と思われがちですが、人見知りや後追いは赤ちゃんとお母さんとの絆がしっかり結ばれている証拠であり、社会性の第一歩なのです。
また、自閉症の子供によくみられる落ち着きのなさはこの頃から現れ始め、常にハイハイで動き回り、あやしても目を合わせずに別のことをやろうとするようなこともあります。
さらに、離乳食に対して異常な拒絶をすることが多く、自分の好きなもの以外は受け入れないことが多いです。

1歳頃

1歳を迎える頃には、ママやパパなどのいくつかの言葉を発するようになり、名前を呼びかけると返事をするようになります。また、意味はなくても他者の言葉を真似したり、指差しを行うことで自分の興味を他者へ伝えようとします。なんでも自分でやりたがるのもこの頃の特徴です。
一方、自閉症の赤ちゃんは、言葉の発達が他の子より遅く、呼びかけに反応しません。指差し行為は見られず、自分の興味があること以外をやろうとせずに他者の手を取って、自分が希望することをやらせようとします。

2歳頃

2歳になると、自閉症の症状は顕著に表れ始めます。他の子よりも言葉の発達が極端に遅く、二語文(単語2語で構成された文 : ジュース  とって)どころか意味のある単語を数個しか発しないこともあります。また、保育園などで集団生活を送っている子は、お友達と仲よく遊ぶことや決められた取り組みができないこともあるでしょう。
興味や関心が極端に偏っており、こだわりが強いため、自分の意に反したことや急な予定の変更などに対処できず、泣きわめいて暴力的な行動に出ることもあります。

主な自閉症の症状

自閉症には、対人関係がうまく築けない、言語発達の遅れ、強いこだわりの3大特徴があります。
自閉症の子供は周囲に対して無関心で、その場の空気を読むことが極端に苦手です。そのため、相手の気持ちを汲んだ発言ができず、他者との軋轢が頻発して対人関係をうまく築くことができません。
また、他の子よりも言葉の発達が遅いことも特徴です。そして、興味や関心が極端に偏っているため、特定のものに強いこだわりと執着を示します。こだわりが強いあまり、急な予定変更などに遭遇すると通常の対処ができずに過度な拒絶を現します。

このような自閉症の特徴的な症状は、3歳頃に気づかれることが多いですが、赤ちゃんの頃から気づかれにくい兆候は少しづつ現れているのです。

自閉症の主な兆候には以下のような言動が現れます。

・寄り添うことやアイコンタクトを避ける
・名前を呼ぶ声や音に反応しない
・話さない、または適切に言語を使用していない
・体を前後に揺らす、頭を振り回す、頭をぶつける
・おもちゃの車の車輪のような、物体の一部分をじっと見つめる
・ジェスチャーやボディランゲージを理解していない
・何かのふりをしたり、ごっこ遊びをしない
・順序やルーチン(決められた動作)に非常にこだわりを持ち、ルーチンが妨げられたり変更されたりすると混乱する
・無表情であることが多い
・単調な声をだ出すことが多い

原因が遺伝的(親族内で遺伝する)であることを示している研究もありますが、今の所はっきりとした原因はわかっていません。
また、一般的に女の子よりも男の子方が自閉症になる確率が高いということがわかっています。

大人の自閉症の症状

大人の自閉症の症状も基本的には子供と同じです。しかし、大人は社会生活を送る上で自閉症の症状によって様々な困難を抱えることになります。
職場では対人関係がうまく築けずに孤立しやすく、仕事に支障を来たすことがあります。また、相手の気持ちを汲むことができないため、冗談や皮肉を理解できずその場に合った行動をすることができません。また、こだわりが強く、一つの物事に執着しやすいので興味や関心ない仕事は極端に苦手で、通常の社会生活を送ることが難しい人もいます。

治療することはできますか?

残念ながら現段階で治癒方法はわかっていません。
また、子供たちが成長して自然と自閉症が治ることもありません。

しかし、自閉症そのものを治療する薬はないものの、症状の一部に有効な薬や治療法があることが研究で明らかになっています。
その薬やセラピーによって、成熟するにつれて自閉症が改善する場合もあるでしょう。

自閉症の子供を持つ親御さんへのアドバイス

両親は子供の支援と技能の向上に重要な役割を果たします。
そのため、子供が自閉症の場合は症状についてできるだけ多く知っておくと良いでしょう。

両親のコミュニケーション

自閉症の子供にとって、他者とコミュニケーションを取ることは困難なことです。
親がその手助けすることは、自閉症の子供の不安を減らして行動量を増やすことにつながります。
以下のことに気をつけながら、子供とコミュニケーションをとってみましょう。

・自分が話しかけられていると認識できるように子供の名前を呼ぶ
・雑音を最小限に抑える
・簡単な言葉を使う
・単語と単語の間は区切り、ゆっくりはっきり話す
・簡単なジェスチャーを使いながら話す
・子供が話を理解するための時間を十分にとる
・自閉症であることを子供に伝える

年齢や理解力の程度にもよりますが、子供に「自閉症である」と伝えるという選択肢もあります。

診断について知ることは、子供がすでに気づいているかもしれない他の子供との違い(これらの違いは、放置されると自尊心や自己理解の方法に悪影響を与える可能性がある)を説明したり、直面している困難を明らかにするのに役立ちます。

介護者向けのサポートについて

自分の子供であっても、自閉症の人の世話をすることは負担がかかります。
場合によっては介護者はトイレの問題から自傷行為に至るまで対処しなければならないかもしれません。
そのため、すべてを一人で、あるいは家庭内で行おうとはせず、地方自治体や社会福祉グループの手を借りるなどして休憩を取ることが大切です。

また、受給資格のある手当(介護者は“介護者手当”を受ける資格があり、自閉症者は“自立給付”を受ける権利がある)のことを調べ、必要に応じて受け取ってください。

おわりに:症状を知ることで早期発見につながる。子供を見守り、サポートするために

現在の所、自閉症を完全に治癒することはできませんが、早期に対処することでに症状を改善したり、日常生活や社会生活にある程度対応することができるようになります。
改善のためには、投薬やセラピーなどの治療の中から子供に合った方法を見つけていく必要があります。また、介護者である親御さんや家族の負担も大きいものです。遠慮せずに社会機関からのサポートを受けるようにしてください。

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