痔瘻(じろう)の症状と治療の基礎知識 ― 最適な方法を選ぶには

2017/7/26 記事改定日: 2018/5/9
記事改定回数:1回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

痔瘻(じろう)とは、感染により肛門周囲にできる小さな穴です。膿が蓄積し、痛みを伴うことも多い痔の症状の1つです。今回の記事では、この痔瘻についてまとめました。症状や原因についてみていきましょう。

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痔瘻(じろう)とは!?どんな症状が現れるの?

痔瘻とは、腸の端と肛門付近の皮膚の間に発生する小さなトンネルの事をいいます。

通常、肛門付近に細菌が感染することによって起こります。痔瘻は、細菌の感染で近くの組織に膿が蓄積し、膿が流出した後に膿のあったところが小さなトンネルとして残った状態のことです。

痔瘻になると、肌の炎症や不快感などの症状が表れ、自然に治ることはほとんどありません。通常は、手術による治療が推奨されます。

痔瘻の症状には以下のものがあります。

  • 肛門周囲の皮膚がチクチクする
  • 座る、動く、排便、咳などで、痛みが悪化する
  • 肛門の近くから嫌な臭いが発生する
  • 排便時に膿や血が見られる
  • 肛門の周囲に腫れや赤みがあり、高熱が出る
  • 便通をコントロールすることが困難なことがある(腸閉塞)

自分では見ることが難しいかもしれませんが、痔瘻が肛門の近くの皮膚に穴として見えることもあります。

痔瘻の原因とは?肛門周囲膿瘍って何?

痔瘻の大半は肛門膿瘍の後に発症するといわれています。膿が流出した後、膿瘍が適切に治癒されないと、発症する可能性があり、肛門周囲膿瘍になった人のうち、2〜4人に1人が痔瘻になるといわれています。

肛門周囲膿瘍

肛門周囲膿瘍とは、胃腸炎などで下痢を繰り返した時に、直腸と肛門の境目にある肛門陰窩というごく小さなくぼみや切れ痔の隙間に便が入り込み、そこから炎症を起こして肛門の周辺に膿の塊である膿瘍を形成したものです。
膿瘍は大きくなると破れて、肛門周囲の皮膚から膿が排出されるようになります。非常に強い炎症が起こるため、膿瘍周囲の痛みだけでなく高熱が出ることもあります。

その他の病気

あまり一般的ではなありませんが、以下のような病気が痔瘻の原因になることがあります。

  • クローン病・・・消化器系が炎症を起こす長期の病気
  • 憩室炎・・・大腸の壁が外に袋状に出ている状態
  • 汗腺膿瘍・・・膿瘍や瘢痕の原因となる長期の皮膚状態
  • 結核、またはHIVによる感染
  • 肛門付近の手術による合併症

痔瘻になったら、どんな検査をするの?

痔瘻とみられる症状がある場合は、肛門科の医師の診察を受け、適切な治療をしてもらいましょう。
診察時には、肛門に指を挿入して痔の徴候を触診することがあります(直腸検査)。
その他、検査時には下記のような検査が行われます。

  • 追加の身体診察や直腸検査
  • 肛門鏡検査
  • 内視鏡検査
  • 超音波検査、MRIスキャン、CTスキャン

痔瘻の治療

痔瘻の治療は主に下記のような方法があり、それぞれメリットとリスクがあります。医師としっかり話し合うようにしてください。
また、多くの手術は日帰りで受けることができますが、状態や病院の方針によっては数日間入院することがあるので、事前に確認するようにしましょう。

切開開放術

一般的に広く行われている手術方法です。皮下にできた痔瘻の管を入口から出口まですべて切り開き、瘻孔の管を切除する方法です。体への負担が大きく、肛門括約筋などを損傷して術後の肛門機能が低下することもありますが、多くの場合では新たにできる肉芽組織によって肛門管が正常に形成されます。

シートン法

最も体への負担が少ない手術方法ですが、完治までに長い時間がかかります。これは、ゴム輪や絹糸を痔瘻の管の中に通して縛り、痔瘻を形成する組織や筋肉を両端から切って新たな組織ができるのを待つというものです。一度に瘻孔全ての組織を切ることはできないため、一か月単位などで縛りなおして徐々に瘻孔を縮めていきます。
半年ほど時間がかかりますが、体へのダメージが少なく治療後の再発率も低いため、今では多く行われる方法となっています。

くりぬき法

瘻孔の入り口とその周辺の筋肉を切除し、肛門周囲の皮膚への出口をくり抜くように切除する手術方法です。肛門括約筋へのダメージが小さく、術後の肛門機能の低下が少ないとされています。しかし、瘻孔を完全に切除するわけではないため、再発率は3つの手術方法の中で最も高いというデメリットがあります。

おわりに:痔瘻の治療は医師と相談しながらメリットとリスクを考慮して方法を選択しよう

痔瘻とは、日々の生活に大きな影響がある病気のため、治療はなるべく早く受けることをおすすめします。

治療方法にはそれぞれメリットとリスクがあり、症状やライフスタイルなどによって適したものが違ってきます。肛門科の医師とよく相談の上、自分に適した治療法を選ぶことようにしてください。

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