食中毒の予防方法 ― 料理や食品管理は何に気をつければいいの?

2017/7/19 記事改定日: 2018/5/18
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食中毒は一般的に起こりうる病気であり、大抵の場合は予防可能です。また、たとえなったとして軽度ですむことがほとんどですが、場合によっては病院で処置が必要になります。 今回の記事では、食中毒の予防方法について、詳しく解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

食中毒予防の4原則とは!?

食中毒を予防するためには様々な対策がおりますが、大きく分けると4つの対策が重要とされており、これらを「食中毒予防の4原則」といいます。
4原則は食中毒を予防するための必須の対策であり、どれか一つでも欠けると食中毒を引き起こす可能性が高くなります。
食の安全を維持するためには、以下の4つの原則をきちんと守ることを心がけましょう。

持ち込まない

食中毒は、調理する人の手やくしゃみの飛沫などに含まれた病原体が食品に付着し、その食品を他者が口にすることで起こることがあります。
このような感染は「二次感染」と呼ばれますが、食中毒の被害を拡大する原因となっています。

食品に病原体を持ち込まないためには、手洗いや手指消毒を徹底することが大切です。また、食中毒になった人が周りにいる場合には、症状がなくても感染している可能性があるため、調理をするときにはマスクを着用するとよいでしょう。そして、食中毒になった場合には、症状が治まっても一週間程度は調理に携わらない方がよいと言われています。

拡げない(増やさない)

食中毒は、様々な病原体を食品を介して体内に取り込んでしまうことで生じます。しかし、それらの病原体は、少量が体内に入ったとしても食中毒を起こすことはなく、下痢や嘔吐などの症状を引き起こすにはある程度のウイルス量や菌量が必要です。

このため、食中毒の予防には食品に付着した病原体をいかに増やさずに食卓へ出すかが重要となります。購入した食材はなるべく早く冷蔵庫に入れて繁殖を防ぐ、作り置きしたおかずは鍋の中で保管せずに、冷蔵庫で保管するなどの対策が必要なのです。

やっつける

多くの病原体は、加熱や冷凍などの処理を行うことで死滅します。食中毒の病原体は自然界に広く存在するものが多く、生の肉や魚にも付着しているため完全に「持ち込み」を防ぐことはできません。このため、食中毒を予防するには、食材に加熱や冷凍などの適切な処理を加えることで死滅させることが重要です。

つけない

病原体が付着したまな板や包丁、食器類などによって食品が汚染されることがあります。これが食中毒の原因となることが多々あり、予防には調理器具や食器の洗浄、消毒が必要となります。
特に、焼き肉や鍋料理の際に、生肉に触れた箸を食用と共用してしまうと生肉に付着した病原体を体内に取り込んでしまうこともありますので注意が必要です。

食中毒の予防のために実践したい対処法とは!?

以下に食中毒の予防方法をご紹介します。

食品の扱い

生の動物性食品は、大きな感染要因となるため、注意深く扱うようにしましょう。

肉・魚介類

  • 質と鮮度を担保するため魚や貝は慎重に選び調理する
  • 生や悪くなった肉類の摂取は避ける
  • 未調理のマリネや生の肉・魚・卵の摂取は避け、完全に火を通すようにする
  • 生の肉・貝魚・卵から出る汁が他の食物を汚染しないよう注意する
  • 冷凍の肉類は決して室温で解凍せず、冷蔵庫内で徐々に解凍させるか、電子レンジで速やかに解凍し、直ちに調理する

卵と乳製品

家族が安全に卵や乳製品を食べられるように、以下のことに注意しましょう。

  • 生の(低温殺菌されていない)牛乳や乳製品は口にしない
  • 卵は、購入する前と使用する前の二度、賞味期限を確認する

野菜・果物

野菜もまた食中毒の原因となり得ます。特に発芽野菜系(アルファルファ、ヤエナリ、クローバー、ハツカダイコンなど)は危険性が高いとされています。これは、発芽野菜系の育成には温かい気温が不可欠であり、この状態はバクテリアの繁殖に適しているからです。妊婦や免疫の弱い人は生の発芽野菜の摂取は避けましょう。また、生の果物や野菜は食べる前に入念に洗うようにしてください。

お弁当

お弁当は、適度な温度と水蒸気による湿度が保たれるため、細菌やウイルスが繁殖しやすいという一面を持ちます。このため、お弁当が原因となる食中毒は意外と多く発生しているのです。

食中毒予防の注意点としては、お弁当を作るときに使い捨ての手袋や菜箸を使用して、食材に素手で触れる機会を減らすことが大切です。近年流行している「キャラ弁」は食材に素手で加工を加えることも多いため、細菌が大量に繁殖してしまうこともありますので注意しましょう。また、食材は生のものではなく、可能な限り加熱したものを選び、梅干しやレモンなど殺菌作用があるものを入れるとよいでしょう。

お弁当を持ち運ぶ時はできるだけ涼しい環境で行い、職場や学校に冷蔵庫がある場合には、食べるまで冷蔵庫で保管すると食中毒のリスクをより少なくすることが可能です。

その他の食品

  • 食品の賞味期限は必ず確認する
  • 食品を扱う前には必ず手を洗い、肉や魚介類と接触した調理器具は全て熱い石鹸水で洗う
  • 肉、魚介類、牛乳を長時間に渡って室温で保存しない
  • 残り物は直ちに冷蔵庫に貯蔵する
  • 食品を完全に解凍させた後に再冷凍することは避ける
  • 調理済の食物で、冷蔵庫から出されて2時間以上経ってしまったものは口にしない
  • 1歳未満の乳幼児にはちみつを摂取させない
  • 妊婦、乳幼児、高齢者、その他免疫力の低い人は 、ソフトチーズを避ける

洗浄と調理

調理で重要なことは、手を頻繁に洗うことです。また、以下のことも徹底しましょう。

  • 生の獣肉・鶏肉・魚介類・卵を扱った後のナイフやまな板は、抗菌性の石鹸で洗い熱湯消毒する
  • 木製のまな板は洗うことが難しいため避ける
  • 調理している食物の中心温度を測るときは、清潔な温度計を使う
  • 肉や魚は65℃以上で加熱調理する
  • 丸鳥など厚みがある肉は中心部が75℃になるまで加熱する
  • 冷蔵庫内の温度は4度未満に設定する
  • 冷凍庫内の温度は-20度に設定する

外食時の食中毒予防

妊婦や免疫の弱い人は、生肉は控えましょう。また、生魚もたくさん食べないように注意してください。同席した人が生肉を食べたときは、必ずお皿を別にして、生肉が触れたお皿に自分が食べる料理を乗せないようにしてください。

旅行中の食中毒予防

旅行中の食事、特に発展途上国での食事は注意が必要です。
以下ことに気をつけましょう。

  • なるべく加熱する
  • 包装食品や乾燥食品を選ぶ
  • ボトル、カン、或いはホットドリンクを選ぶ
  • 生水は飲まない

その他の対策

  • 赤ちゃんにはできるだけ母乳を飲ませる
  • 爬虫類、亀、鳥に触ったり、人やペットの糞と接触したりした後は手を石鹸水で洗う
  • 下痢や嘔吐を伴う病気にかかっている場合は、他の人に食物を提供しない
  • 頻繁に手を洗う

おわりに:正しい対処をすれば、食中毒はある程度予防できる!

夏場は特に食中毒が多くなります。家庭や旅行先での食中毒を予防に気をつけましょう。今回ご紹介した方法で、食事を安全に、そして健康な毎日を過ごせるように対策をとってください。

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