運動前に医師のメディカルチェックを!運動してはいけない人もいます

2017/3/15

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

運動することは、健康な生活、生活習慣病の予防にいいし、すでに生活習慣病を発症しつつある人、発症してしまった人にとっては、運動は「療法」になります。

しかし、たとえば、糖尿病の場合、「ただしく」行えば糖尿病を改善する有効な療法になりますが、自分勝手に取り組んだり、間違ったやり方で運動したりすると、十分な効果が得られないだけでなく、病状を悪化させることが起こりえます。

病状の悪化に加え、さらに、腰や膝を痛め、慢性の腰痛や膝痛を抱える結果になるなど、
健康にするはずの運動が、逆効果になってしまう恐れがあります。

運動は、やり方次第で、薬にも毒にもなります。
どんな運動をするか、頻度・強度を決めるために、健康診断で「要再検査」、または「要指導」になった人が運動をはじめる場合、医師の指導を受けてください。

医師のメディカルチェックを受け、今の健康状態、病状や合併症などをしっかり把握したうえで、医師がすすめる運動をしてください。
運動で健康になるためには、人それぞれ、自分に合った運動をすることが大切です。病気を持っている人は、特にこのことが重要になります。

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医師の診断が必要な場合

運動は基本的に誰もができることで、誰にとってもいい効果があるものですが、心臓病や糖尿病などを持っている人の場合、運動をはじめる前に医師に確認する必要があります。
運動が危険だからということではなく、ただしく安全に運動することが必要だからです。 医師に確認する必要がある病気、その他の状態は以下になります。
・心臓病の人
・心臓の悪い人
・糖尿病の人
・貧血の人
・検査の必要がある人
・めまいや息切れがある
・動悸があり、心拍数の上昇、鼓動が速い
・自律神経障害がある
・不安定になっているという感覚・胸の痛みや圧迫感
・股関節手術または腰・背中、足の手術を受けた人

運動に注意が必要な理由

病気のある人が運動をすると、そのために身体に悪影響を及ぼす場合があります。特に糖尿病の人は注意が必要になります。
基本的には、運動することで、糖尿病にいい効果をあたえるのですが、運動によって、体に負荷をかけ、血糖値を上昇させてしまい、運動後に高血糖を起こしてしまうことがあるからです。そして、何より恐いのが、合併症を悪化させる可能性があるからです。

運動によって悪化する可能性のある糖尿病の合併症には、以下が挙げられます。
・糖尿病性網膜症で出血がある場合
糖尿病性網膜症は、糖尿病によって視力低下を起こし、症状に気づかないうちに進行し、そして、失明へと至ることもある糖尿病の恐ろしい合併症です。
糖尿病性網膜症によって網膜に出血のある人が運動をすると、出血が多くなり、網膜症が悪化することがあります。
運動する場合、糖尿病の人は、目の検査も受けてください。
・糖尿病で心臓が悪い場合
狭心症・心筋梗塞・発作などがある人は要注意。普段は症状が落ち着いていても、運動で心臓の痛みが引き起こされることがあります。
また、糖尿病神経障害という合併症により、痛みを感じにくくなっていることがあり、発作に気づかない場合があります。
・糖尿病性神経障害
足がつる、こむら返りがある、足がしびれるなど、糖尿病性神経障害は、下肢によく起こる感覚異常です。感覚神経障害で潰瘍や壊疽を発症している場合、ウォーキングでさえ、足に負荷がかかり過ぎて症状が悪化するリスクがあります。
足に負担のかからないプールでの水中歩行、自転車エルゴメータ、イスに座ってできる体操が勧められます。
また、糖尿病の人が、自律神経障害も持っている場合、運動することで、呼吸循環器系の機能が低下し、突然死を起こすこともあります。

おわりに

適度な運動は、運動することで心肺機能を高め、血液の流れをスムーズにしたり、血液の状態も良くしたり、動脈硬化などさまざまな生活習慣病の予防になったり、と基本的にはいいこと尽くしです。貧血の人も、運動する事によって新陳代謝が促され、赤血球の生産も活発にするので、軽い体操などは貧血の改善に効果的です。しかし、それは軽度の貧血の場合で、無理に運動するようなことがあれば、心臓に過度の負担をかけてしまい、心臓肥大に陥ってしまうこともあります。

上で紹介した糖尿病をはじめ、病気を持つ人、健康状態に不安のある人は、運動をする場合、必ず、医師の指導を受けてからスタートするようにしてください。
運動をするうえで、「こうすれば絶対に健康になる!」というような、万人にあてはまる法則はありません。人それぞれに合った運動の仕方があります。自分に合ったやり方でただしく運動してください。それが、運動の極意です。

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