肺炎は治療できる?医師の診断が必要な場合とは

2017/8/2

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肺炎は肺組織の激しい痛みを伴う感染症です。肺炎はいつも病院での治療が必要とは限りませんが、深刻な場合、集中治療室への入院が換気補助と共に必要になるかもしれません。今回は肺炎の治療法について解説します。

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肺炎の治療方法

肺炎の治療の根幹を成すのは抗生物質です。ほとんどのケースにおいて、特に若く健康的な患者の場合、薬剤の服用と水分補給が自らできるのであれば入院の必要がありません。通常、症状は数日から1週間程度で徐々に改善します。抗菌薬の使用期間は患者さんの背景によりますが、特に肺や免疫機能に問題がない患者さんの場合は7日から10日分程度処方されます。処方された分は全て服用することが重要です。また、回復を促進するためには、休息と水分補給が重要です。処置に対する反応がいまひとつである場合は、耐性細菌が原因となっていたり、ほかの病気が原因である可能性があり、更なる検査と治療が必要になります。高齢者は、若く健康的な人と比べると回復により多くの時間を要します。

入院

入院するか否かの判断は、複数の要素に基づいて医師により決定されます。これには、肺炎の深刻さ、患者の年齢、患者の身体の健康事情、家庭でサポートやケアを受けられるか否かといったことが含まれます。点滴による抗生剤治療や酸素マスク、換気補助等が必要な場合は、入院は免れません。

投薬措置

細菌性肺炎の治療の際には、様々な種類の抗生剤が使えます。もし特定の抗生剤に対しアレルギー反応が出た場合は、同等の効果を持った他の薬が複数選択可能です。アセトアミノフェンや非ステロイドの抗炎症薬は、解熱や鎮痛目的で使われますが。3~7日経っても回復する様子が見られない場合は、別の抗生剤が必要になるかもしれません。最適な抗生剤を処方するために、喀痰を顕微鏡で観察したり培養することがあります。深刻な肺炎においては耐性細菌が存在するかの確認が必要になり、肺の病気(気管支拡張症や重度の慢性閉塞性肺疾患)が根底にある場合は、さらに長期的な治療が必要かもしれません。

ステロイド剤が肺炎治療を加速

ある調査結果によると、副腎皮質ステロイドを用いた処置を受けた重症の肺炎患者は、そうでない患者に比べて回復が早く見られました。これは、ステロイド治療が(全員ではありませんが)肺炎患者の回復を早め、合併症のリスクを軽減する可能性を示唆しています。場合によっては医師は研究結果を受けて抗生物質に加えて副腎皮質ステロイドを併用することがあるかもしれません。

短期間のコルチコステロイド使用は比較的安全と言われています

副腎皮質ステロイドは安価で、世界中ですぐにでも使用することのできる薬剤です。副腎皮質ステロイドには多くの副作用が知られていますが、医師はその副作用について熟知しているため、短期間の使用は一般的に安全性が高いとされています。医師は投与によって得られるメリットと、副作用によるデメリットを天秤にかけて投与の是非を判断します。ただし、肺炎で強力な副腎皮質ステロイド剤が必要な場合はそうそうなく、一般的には外来での治療が可能です。

医師の診断を受けるべきとき

肺炎は、とりわけ小さな子供や高齢者に関しては、発症してすぐに治療を施すことが重要になります。というのも、手当てを開始する時期に応じて、その後の見通しや合併症の有無に違いが生じるからです。一方、ウイルス感染に対して抗菌薬治療等の不必要な処置を行うことは避けなければなりません。 以下の状況が見られる場合は、救急医療の必要性があります。
・呼吸困難になる。苦しそうに、速く浅い呼吸をしていて音が漏れている場合は、エピソードが深刻である恐れがある。
・つぶされそうで、焼けるような胸の痛みがある。痛みの激しさが増していて、発汗や吐き気が見られる場合。

また、以下の状況においては直ちに医師の診断が必要になります。
・咳のときに出る痰の色が黄色や緑色をしている状態が二日以上続いている。また、38.5度以上の熱がみられる。
・咳によって赤錆色の痰が出る、或いは血を吐いている場合。
・7~10日間以上咳が続く。

診察を受けるにあたって必要な準備

小さな子供や高齢者など記憶が難しい患者に関しては、保護者や介護者が付き添って、今までの症状の正確な描写を行うと良いでしょう。病状を評価するにあたって、症状の歴史を把握することがとても重要です。肺炎を発症するに至った全ての過程を細かく振り返りましょう。服用している薬剤(肺炎用とそれ以外の全てを含む)は、その名前と服用量を伝える必要があります。 以前行われたレントゲン検査やピークフロー測定の結果も有用であるため、持参すると良いでしょう。 肺炎を発症している人と接触した可能性がある場合は、申告することが非常に重要です。

おわりに:肺炎は予防が重要

肺炎は、必ずしも病院での治療が必要なわけではないですが、記事で紹介した症状がみられた場合は医師の診断を受けましょう。また、子供や高齢者の場合の肺炎は早めの治療が必要です。一番重要なのは、肺炎を発症する前に禁煙などの予防をすることです。感染に負けない身体作りするように心がけてください。

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