記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/2
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
「最近、トイレにいく回数が多くなった」
「夜、やたら尿意が起きる」
「いつもキレが悪くて残尿感がある」
「尿の出が悪い」
50歳を越えてこんな症状に悩まされているようなら、
「前立腺肥大症」の可能性があります。
前立腺肥大症は男性にとって無視できない病気です。50歳にもなると、年齢が上がるにつれて、前立腺も大きくなっていきます。しかし、排尿トラブルなどの自覚症状は感じ方に個人差があり、また、前立腺肥大症は、常に治療が必要というわけでもないため、排尿障害が現れているにもかかわらず、治療を受けずに我慢している人も相当数いると考えられています。
前立腺肥大症は、加齢とともに増加する男性の病気です。前立腺がんが悪性の腫瘍で他の臓器に転移することがあるのに対し、前立腺肥大症は良性の腫瘍で転移はしません。
加齢とともに前立腺が肥大化することにより、尿道や膀胱が圧迫され、頻尿、排尿困難、残尿感などの症状がみられるのが特徴です。
厚生労働省の統計によれば、前立腺肥大症で治療を受けている方の数は40万人以上、65歳以上の男性の1000人あたり89.4人が治療を受けるために通院していると推定され、主な生活習慣病に比べても少なくありません。実際に前立腺肥大症であっても治療に行かない人も多く、50歳以上の男性の約20%は前立腺肥大症ではないかと言われています。
前立腺肥大症の原因については、現在のところはっきりしたことは分かっていませんが、加齢とともに男性ホルモンの分泌が減り、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れることが原因ではないかと考えられています。
おもな症状は排尿障害で徐々にはじまり、次のような症状が現われます。
・頻尿・夜、何度もトイレに起きる。
・尿がすぐにでない。時間がかかる。
・残尿感・尿に勢いがない
以上の症状は、膀胱感染や膀胱ガン、前立腺ガンなど、より重い疾患の兆候である可能性もあります。症状がある場合は、医師に相談し、検査を受けるようにしてください。
最近では、PSA(前立腺特異抗原)を用いる血液検査で異常が出た場合に、直腸診や超音波検査を行う場合が増えています。
PSA検査は前立腺がんのスクリーニング検査としては最も有用と考えられており、PSA値に異常がみられた場合、医師が肛門から指を挿入し、前立腺の状態を確認する(直腸診)か、超音波を発する器具を肛門から挿入し、前立腺の状態を調べます。
薬物治療が可能です。フィナステリドとデュタステリドは、前立腺を肥大させるホルモンを遮断します。すべての患者に有効なわけではなく、服用を中止すると再び肥大することもあります。
α遮断薬と呼ばれる高血圧の治療に使用われてきた薬も、症状を軽減します。こちらも、すべての患者に効果があるわけではありません。
また、低侵襲治療という手術を伴わない治療もあり、尿道を圧迫する前立腺組織を熱で治療します。しかし、薬物治療で症状の改善が望めない場合には、手術による治療が必要となります。前立腺肥大症に対する手術は、内視鏡を用いて行い、腹部に傷はつかず、術後の痛みも軽度で、早期退院が可能です。出血、感染、インポテンスなどのリスクもありません。
前立腺肥大症は、50歳以降の男性には、特に珍しくない良性の疾患ですが、頻尿や、尿の出が悪くなるなど、日常生活に支障をきたすこともあり、放置すると、膀胱や腎臓にも悪影響を及ぼします。なるべく定期的に検査を受けるようにしてください。
また、現在、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常と前立腺肥大症の関係が指摘され、野菜、穀物、大豆などに多く含まれるイソフラボンが前立腺肥大症を抑制することがわかっています。