記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/16 記事改定日: 2018/3/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠中には多くの妊婦さんが便秘を経験するといわれています。
この記事で妊娠中の便秘の原因と解消法をご紹介するので、妊娠中の方は便秘の予防や改善に役立ててください
妊娠するとホルモンバランスが変化し、女性ホルモンのひとつである「プロゲステロン」という黄体ホルモンが普段よりも多く分泌されます。
プロゲステロンは妊娠中に大切なホルモンですが、腸の筋肉にも作用してぜん動運動(臓器が収縮して排便を促す運動)を弱めてしまうため、便秘になりやすくなってしまうのです。
また、赤ちゃんが育って子宮が広がると胃や腸などの内臓が圧迫されます。
そうすると腸の動きが弱く・便の通りが滞りがちになることも、妊娠中に便秘になりやすい原因だと考えられています。
個人差はありますが、妊娠中はつわりや体調の変化などで食べられるものだけを食べるという習慣がつきやすく、食物繊維と水分が不足する傾向があります。
便秘解消における食物繊維と水分の重要性は以下の通りです。
便秘解消に効果を発揮する食物繊維には不溶性と水溶性の2種類があり、不溶性食物繊維には〈きのこ、豆、根菜、切り干し大根などの乾物〉に多く含まれ、胃で消化されず腸まで到達して体内の不要物をからめとってくれる働きがあります。
一方、水溶性食物繊維は〈海藻、果物(特に皮)など〉に多く含まれ、水分を吸収して便の柔らかさを保ち、排便をスムーズにしてくれます。
便秘の解消には両方の食物繊維をとることが大切です。
主食となる食品を選ぶときも、食品の中でもなるべく精製されていないもの(雑穀米、玄米、ライ麦パンなど)を選ぶようにしましょう。
食物繊維をいくらとっても、水分が不足しては便秘解消効果が半減してしまいます。
水分をしっかり摂ると、腸内の便が水分を含んで排出しやすい固さになります。また、便の容積が増すことで腸が刺激されて便意が催されます。
朝起きたらコップ1杯の水や白湯を飲み腸を刺激するようにしましょう。便秘を解消したければ、水分は一日を通してコップ6杯を目安にとるのがおすすめです。
また、以下にあげる方法も便秘を改善するポイントになります。
食べ過ぎは消化管に負担をかけるため消化不良につながります。
便秘に悩んでいる場合は、1日3回の食事を6回に分けて1回の食事量を少なくする工夫をすることで食べ物が消化されやすくなり、便秘が解消される可能性があります。
ヨーグルトなどに含まれるプロバイオティクス乳酸菌は、腸内細菌の状態を改善することで消化を助けて排便を促す働きがあります。
苦手でなければ、毎日の食事に積極的に取り入れましょう。
妊娠中は「赤ちゃんを気づかって安静に」と思ったり、お腹が大きくなってくると動くのが大変になったりと、運動不足になりがちです。しかし、適度な運動は腸の動きを促してスムーズな排便を助けてくれます。妊娠中も、ウォーキングや室内でできるストレッチなどで適度に体を動かすようにしましょう。
基本的には食事内容の改善や運動によって解消するのが望ましいですが、それでも改善が見られない場合は妊娠中でも服用できる便秘薬を医師に処方してもらうこともできます。
以下の便秘薬は妊婦さん向けに処方される代表的な便秘薬です。
腸内の善玉菌を増やす効果があり、整腸作用による便秘解消が期待できます。
薬の成分が体に吸収されないので妊娠中でも安心して服薬できますが、便秘の改善効果はそれほど高くありません。
腸内の水分を吸収することで便を柔らかくして便秘を改善する薬剤です。
善玉菌の薬と同じく体内には吸収されずに腸管内に留まるので、妊娠中も安心して服薬できます。
ただし、腸内の水分が不足していると効果が弱まってしまうため、水分を多めにとるようにしましょう。
マグネシウム製剤は市販薬も発売されていますが、他の薬との飲み合わせがよくない場合があるので、服薬前には必ず医師に確認してください。
ピコスルファートナトリウム(商品名はラキソベロン®などがある)は大腸を刺激して排便を促す、より強い効果が期待できる便秘薬で、便秘の症状が重い場合に処方されることが多いです。
成分が体には吸収されずに腸管内にとどまるため、赤ちゃんへの影響はないとされていますが、市販のものを使用する場合は必ず医師の許可を得てからにしてください。
妊娠中は便秘になりやすいですが、食事内容の改善や運動によってある程度解消することができます。
また、生活習慣を改善しても便秘が治らない場合は、医師に確認した上で妊娠中でも服用できる薬剤を使用する方法もあります。
妊娠中の方は、今回お伝えした内容を便秘の予防・解消の参考にしてみてください。