骨粗鬆症の予防で重要な「食事と運動」のコツとは!?

2017/9/4 記事改定日: 2019/2/6
記事改定回数:3回

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

骨がもろく、折れやすくなってしまう「骨粗鬆症」は、加齢とともに発症率が上がる傾向にあります。特に女性は閉経後、発症しやすくなるので注意が必要です。
ここでは骨粗鬆症を予防するにはどうすればいいかを解説していきます。

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骨粗鬆症の予防に必要な対策は?

骨粗鬆症の多くは、骨を形成するカルシウムやマグネシウムの不足や、カルシウムの吸収に必要なビタミンD不足、運動不足によるカルシウムの利用効率の悪化などが原因で引き起こされるものです。

つまり食生活の改善と定期的な運動によって、骨粗鬆症の発症リスクをある程度減らすことができると考えられます。

食事の改善方法

食生活の面では、まずは骨形成に欠かせないカルシウムをしっかり摂取することが大切です。成人女性の場合は1日650mg(70歳以上は600mg)カルシウムを摂取することが推奨されています。カルシウムが豊富な牛乳などの乳製品、緑黄色野菜、海藻類、大豆製品、小魚を積極的に摂るようにしましょう(ただし、摂取のしすぎには注意してください)。

また、摂取されたカルシウムを効率よく吸収させるには、ビタミンDやマグネシウム・リン・たんぱく質などさまざまな栄養素も必要になっていきます。1日3回、バランスのとれた食生活を心がけましょう。

塩分の量に注意

塩分の主成分であるナトリウムは、血中のカルシウムを尿への排泄を促す作用があります。このため、塩分過多の状態が続いて血中のカルシウムが減少すると、その結果として骨形成が正常に行えなくなってしまい骨粗鬆症を引き起こしてしまうことがあるのです。

体内のカルシウムが減少すると、今度は骨に蓄えられているカルシウムがどんどん溶け出し、血中のカルシウム濃度が上昇する現象が生じます。そして、過度なカルシウムは血管の筋肉を収縮させ血圧上昇を引き起こすことが知られています。

このため、塩分の摂りすぎはそれ自体が高血圧の原因になるだけでなく、骨粗鬆症を引き起こしてその結果高血圧も悪化させるという悪循環が生じるのです。
ですから、毎日の食生活に注意して塩分を控えめにするように心がけましょう。

飲酒量

お酒自体にはカルシウムの吸収を阻害するような効果はありません。しかし、お酒には利尿効果があるため、せっかく吸収されたカルシウムが通常よりも多く排出されてしまう可能性があります。

また、お酒を多く飲むと正常な歩行や立位が維持できなくなり、転倒や転落などのリスクが高まります。実際にお酒を飲んだ状態でケガをして骨折してしまう人は非常に多いといわれています。

骨粗鬆症による骨折を防ぐには、骨の状態を改善して症状を食い止めることも大切ですが、転倒などによる骨折を防ぐように日常生活上の注意を怠らないことも非常に重要です。
適度なお酒は健康にもよいとされていますが、酩酊状態にまでなるような過度な飲酒は控えましょう。

喫煙量を減らす

喫煙は骨密度の低下を進め、骨粗鬆症の発症リスクを高めると考えられています。喫煙習慣のある方は、骨粗鬆症予防のために禁煙することをおすすめします

運動習慣の定着化

骨は長軸に対して物理的な刺激が加わると、微量の電流が骨に伝わり強さが増すといわれています。骨密度は運動による過重負荷が大きければ大きいほど高まりやすい傾向があるので、水泳よりもウォーキングやジョギングのような重力のかかる運動が望ましいです。

また、筋力トレーニングによって骨に直接刺激を与える方法も効果的とされています。筋力トレーニングには、ウォーキングやジョギングだけでは強化できない上半身の骨を鍛えることができるというメリットもあり、軽いダンベルを持ったウォーキング(パワーウォーキング)は、効率よく骨を鍛えることができるので、積極的に取り入れていきましょう。

運動はできるだけ屋外で

運動はできれば屋外で行うことをおすすめします。カルシウムの吸収に必要なビタミンDは、日光を浴びたときに生成されるようになっているからです。

2.ダイエットが原因のカルシウム不足に注意
ダイエットで過度な食事制限をすると骨の生成に必要なカルシウムやビタミンDなどの栄養素が不足し、骨粗鬆症の発症・悪化の原因となります。また、十分な栄養素がない状態で運動を続けると、骨からカルシウムが溶け出して骨密度の低下を引き起こすことも少なくありません。
骨粗鬆症気味の人や、骨粗鬆症になりやすい年齢の人は自己判断でダイエットや運動を行わず、医師に相談してから取り組むようにしましょう。

骨粗鬆症の悪化を防ぐ薬はあるの?

骨粗鬆症は薬で悪化を防ぐことが可能です。一般的に多く用いられている骨粗鬆症の薬は作用のメカニズムによって大きく2つに分けられています。

骨の吸収を抑制する薬
骨の吸収を抑制することで、骨粗鬆症の進行を防ぎます。様々な種類のものが販売されていますが、ビスフォスフォネート系、カルシトニン製剤などが使われることが多いといわれています。また、更年期以降の女性では女性ホルモンの減少が骨粗鬆症を引き起こすことがあるため、極端に女性ホルモンが少ない場合にはエストロゲン製剤が使用されることもあります。
骨の形成を促進する薬
骨形成を促進し、骨粗鬆症の状態を改善する効果がある薬で、活性型ビタミンD3製剤やビタミンK2製剤などが有名です。また、骨の形成に関与する副甲状腺ホルモンが減少している場合には、副甲状腺ホルモン製剤による補充療法が行われます。

骨粗鬆症の治療にはこれら2種類の薬が主体となって用いられますが、その他にもカルシウム製剤が使用されることがあります。しかし、カルシウム製剤を単独で投与するだけでは骨吸収の抑制や骨形成の促進効果は期待できないため、あくまで補助的な位置づけで使用されるに止まります。

また、これらの治療薬は飲み薬や注射など剤形は様々で、1日1回服用するタイプもあれば1か月に1度の服用で効果が得られるものもあります。治療薬は、それぞれの骨粗鬆症のタイプや生活サイクルなどを考慮して希望に合ったものが処方されるので、医師の指示に従って正しく服用しましょう。

薬の副作用

骨粗鬆症の治療薬の中でも、ビスフォスフォネート製剤は顎骨壊死という非常に重篤な副作用を引き起こすことが知られています。

顎骨壊死とは、その名の通り顎の骨が徐々に壊死する病気であり、非常に強い痛みが起こり、口の中に顎の骨が露出したような状態となります。細菌感染を起こしやすく、近くにある脳や肺に感染が波及して死に至ることもあります。
症状が進行すると根本的な治療を行うことができないため、ビスフォスフォネート製剤を服用している人は、口の中の異常が生じたらなるべく早くに適切な治療を受ける必要があります。

その他、軽度な副作用としては吐き気や胃痛などの消化器症状、口内炎、ふらつきなどが挙げられますが、多くは一過性のもので大きな問題となることはないといわれています。

おわりに:丈夫な骨を維持するためにも、食事と運動は大切

骨粗鬆症は、食生活の改善と定期的な運動で予防可能な病気です。早いうちから栄養バランスのとれた食事を心がけ、適度な運動を習慣化させましょう。
また、ダイエットで栄養が不足すると骨粗鬆症が悪化する恐れがあります。とくに痩せ型の女性は体重管理に十分注意してください。

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