記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2022/1/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
基礎代謝が低いと1日の消費エネルギー量が少なくなるので、脂肪がたまりやすく太りやすい体質になってしまうことは聞いたことがあると思います。しかし、太るのは本当に基礎代謝が原因でしょうか?
今回は、基礎代謝と太ることの関係性と効率の良いダイエット方法について解説します。ダイエットで結果を出すにはある程度の期間が必要であり、効率の良い方法を長く続ける必要があります。ダイエット成功のためのポイントについても紹介するので、毎日の生活にうまく取り入れてください。
代謝とは、健康的な状態を維持しながら体内の器官を正常に機能させるため、常に体内で起こっている反応のことです。この「代謝の反応」を起こすために体が必要とするエネルギーの最小値を基礎代謝率(BMR)といいます。基礎代謝は、睡眠状態ではなく、心も体も落ち着き、活動せず安静にした状態で消費する1日のエネルギー量であり、生命活動の維持に最低限必要なエネルギー量になります。
一般的に、基礎代謝は1日で消費するエネルギーの約60%を占めているといわれていますが、個人差があります。基礎代謝には、体格、年齢、性別、遺伝子、ライフスタイルなどが影響しますが、とくに大きく影響するのは筋肉量や脂肪の割合が関わっている「体格」です。
筋肉は脂肪に比べてより多くのエネルギーを必要とするため、筋肉の占める割合が高い人ほど基礎代謝率が高くなります。男性は、一般的に女性よりも筋肉量が多く脂肪の割合が少ないため、1日に必要とされるカロリー量が多くなる傾向があり、基礎代謝も高くなります。また、年齢を重ねるにつれ筋肉量が減り脂肪の割合が増える傾向があるため、基礎代謝も年齢とともに低下していく傾向がみられます。
なお、まだ完全にはわかっていませんが、代謝は遺伝子によって部分的に変わることがあります。これは、筋肉量や筋肉の増強に影響を与える遺伝子により、筋肉量と筋肉増強力が基礎代謝にも影響をおよぼすことが原因と考えられています。
「ダイエットで効果が出にくいのは基礎代謝が低いことが原因」という情報を耳にしたことがあると思いますが、現在のところ「太っていることの原因が基礎代謝の低さ」であることは立証されていません。
基礎代謝が体重や脂肪量の増加の原因になることはありますが、体重や脂肪量の増加の大半は基礎代謝の低さではなく、消費するエネルギー量より多くカロリーを摂取していることが原因です。まずは自分が1日に摂取するべきカロリー量を把握し、食事量や栄養バランスをコントロールし、甘いものや脂肪量の多い食べものを控えることを心がけましょう。
ただし、効率よく脂肪を燃焼し、できるだけ早く適正体重に近づけるためには、基礎代謝を高めることも大切です。早く健康的にダイエット成功させたいなら、食事に気をつかいながら基礎代謝を高める対策をとることをおすすめします。なお、極端な食事制限やカロリー制限は著しい筋肉量の低下を引き起こし、基礎代謝を低下させます。リバウンドの原因にもなりますのでおすすめできません。
基礎代謝を高めるには筋肉量を増やすことがおすすめです。しかし、ある程度の年齢を過ぎると筋肉量を増やすことが難しくなってきますし、仕事や体力などの都合で筋トレの時間を増やしにくくなるでしょう。
基礎代謝の低下には身体活動量の低下が関係しているといわれています。身体活動量とは、家事仕事など生活に必要な活動と運動をあわせた活動量のことです。掃除など、体を動かす家事仕事を積極的に行ったり、階段を使う割合を増やしたり、移動や体を動かす必要がある趣味を増やしたりして身体活動量を増やすことも、基礎代謝の維持に役立ちます。
以下のように、できるだけ体を動かすことを心がけて基礎代謝を維持しながら、効率の良い筋トレメニューをうまく取り入れることが、基礎代謝を高める対策におすすめです。なお、緑茶、ブラックコーヒー、香辛料、エナジードリンクなど「代謝を促す食品」の効果はごくわずかであり、期待できる効果はないとされています。
効率よく基礎代謝を高めるには、大胸筋や大腿筋、大殿筋など「サイズの大きい筋肉」を鍛えることがおすすめです。ウェイトリフティングやバーベルを使ったスクワット、高負荷のマシントレーニングを週2日〜3日することで、効率よく筋肉を増やすことができます。ただし、特定の筋肉だけを鍛えるとバランスが崩れてしまいます。腹筋や背筋、ストレッチなどを組み合わせながら、必要に応じて筋トレメニューを調整してください。
なお、自重スクワットや腕立て、腹筋など、あまり負荷の大きくない筋トレでれば毎日行ってもかまいません。体調と相談しながら、ライフスタイルにあわせた筋トレメニューを毎日の生活に組み込んでください。
身体活動量を増やすには、座っている時間を減らし、できるだけ歩く時間や体を動かす時間を増やすことが基本となります。エレベーターやエスカレーター、乗り物を使わないようにし、歩いて移動することを心がけましょう。ひと駅前で降りて歩く、少し離れた駐車場を使うなどがおすすめです。隣町のスーパーに歩いて買い物に行くようにしても良いでしょう。
また、雑巾がけ、風呂掃除、草むしりなどの家事や子供と体を動かして遊ぶこともおすすめの身体活動です。家事を助けてくれる便利家電も増えていますが、たまには手間をかけて家事をするのも楽しいものです。スケジュールを工夫しながら昔ながらの家事にチャレンジしてみてください。
有酸素運動は、基礎代謝の維持と脂肪燃焼の効果が期待できる運動です。1日30分で週5日、少し息が上がるくらいのペースでウォーキングやジョギング、サイクリング、スイミングなどを行うようにしましょう。ウォーキングやサイクリングついでにお出かけしたり、登山や釣り、キャンプなど、アウトドアの趣味に有酸素運動を組み込んだりしても楽しいと思います。
なお、エアロビクスやダンス、太極拳、ヨガなども有酸素運動のひとつであり、リズム感、バランス感覚、柔軟性などを強化できるのでおすすめです。自分の体力にあわせたペースで、楽しみながら取り組んでみましょう。
体重や脂肪量の増加のほとんどは、摂取カロリー量が消費カロリー量を大幅に上回っていることが原因です。効率の良いダイエットのために基礎代謝を高めることは大切ですが、まずは食生活の見直しから取り組みましょう。基礎代謝を高めるためにはウエイトトレーニングなど「高負荷の筋トレ」が効率的ですが、年齢やライフスタイルによっては難しい場合もあります。体を動かす時間を増やすことでも基礎代謝の対策はできますので、生活習慣を見直し、体を動かす機会を増やすようにしましょう。ダイエットは気長に取り組むことが大切です。食生活や生活習慣の改善を楽しむことが長続きのポイントなので、家事の楽しみを見つけたり趣味を増やしたりと工夫しながら、自分にあったライフスタイルを築き上げましょう。