命に関わる髄膜炎がうつる危険性は?赤ちゃんや子供が感染しやすい?

2017/8/17 記事改定日: 2020/8/24
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

髄膜炎菌性(細菌性)髄膜炎という病気をご存知でしょうか。日本での発生数は非常に少ないですが、人から人へと感染し、命に関わることもある流行性の病気です。この記事では、髄膜炎菌性髄膜炎の感染経路や予防法をウイルス性(無菌性)髄膜炎と比較しながら説明していきます。

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髄膜炎菌性髄膜炎の感染経路は?

髄膜炎菌性髄膜炎とは、髄膜炎菌によって引き起こされる髄膜炎の一種です。髄膜炎菌性髄膜炎の最大の特徴は、感染力の高さです。くしゃみなどの飛沫によって人から人へ感染し、アフリカやヨーロッパなど各地で集団感染が発生することから「流行性髄膜炎」とも呼ばれます。一般的には、生後6ヵ月~2歳の乳幼児や青年が発症することが多いです。

感染経路

髄膜炎菌の感染様式は飛沫感染です。髄膜炎菌は人の鼻や喉の粘膜に付着しており、髄膜炎菌を保持している人がくしゃみや咳をし、そのしぶきに細菌が含まれて排出されます。こうして排出された細菌を他の人が触ったり、飲み込んでしまうことで感染します。髄膜炎菌は感染した段階では、鼻や喉の粘膜に付着した状態ですが、粘膜を侵入して血液内に入り込むと髄膜まで到達して髄膜炎を発症すると考えられています。

赤ちゃんや子供にうつりやすいのはなぜ?

髄膜炎菌は感染するとまずは鼻や喉の粘膜に付着します。しかし、鼻や喉の粘膜には線毛という構造があり、入り込んだ異物や病原体をキャッチして体外へ押し出す作用があります。しかし、赤ちゃんや子供はこれらの免疫構造が確立しておらず、感染すると発症しやすいと考えられます。

また、幼稚園や学校などの集団生活を行う場合には、限られた空間の中で感染が拡大しやすく、流行国では集団生活の中での流行が生じることがあります。

髄膜炎菌性髄膜炎の症状は?致死率が高くなるのはどんなとき?

髄膜炎菌性髄膜炎に感染すると、まず起きるのが敗血症です。

敗血症の症状

皮膚、粘膜からの出血、高熱、関節炎などの症状が現れます。その後は髄膜炎に発展し、頭痛、吐き気、精神症状、発疹、項部硬直といった症状が現れるようになります。人によってはけいれんや意識障害を起こし、汎発性血管内凝固症候群(DIC)を伴いショック死するケースもあります。

敗血症の段階で症状が回復し、髄膜炎に移行しない場合もありますが、髄膜炎に移行してしまった場合は、その時点で治療を行わないと致死率はほぼ100%に達するといわれています。

ウイルス性髄膜炎と髄膜菌性髄膜炎の違いとは?

ウイルス性髄膜炎は何らかのウイルス感染症が生じたときに、原因となるウイルスが髄液内に入り込んで髄膜炎を引き起こすものです。おもな症状は発熱、頭痛、嘔吐ですが、上気道感染や感染性胃腸炎など様々な感染症に続発し、症状は軽度なものから非常に重篤なものまで様々です。

ヘルペスウイルスやヒト免疫不全ウイルスなどによるものでは抗ウイルス薬が投与されますが、ウイルスに対する特効薬は非常に少ないです。抗ウイルス薬がないものでは種々の症状に対する対症療法を行うしかありません。

一方、髄膜炎菌性髄膜炎では効果を持つ抗生物質の投与での治療が可能なので、致死率は高いですが早期に適切な治療を行うことで悪化を防ぐことができます。

ウイルス性髄膜炎はうつる?感染経路は?

ウイルス性髄膜炎は、原因となるウイルスが糞口感染や飛沫感染でうつる可能性あります。しかし、それが髄膜炎を引き起こすかどうかは感染した人の免疫力に依存するところが大きいです。
また、ウイルス性髄膜炎の中でもエンテロウイルスによるものは無症状のことが多く、感染したからといって発熱や頭痛などの症状がでないこともあります。

髄膜炎菌性髄膜炎とウイルス性髄膜炎の治療法

髄膜炎菌性髄膜炎

髄膜炎菌性髄膜炎は、早期に適切な治療を行えば治癒する病気でもあります。抗生物質による治療が一般的であり、おもにペニシリンGが投与されます。その他、髄膜炎の初期治療に用いられるセフォタキシム、セフトリアキソン、セフロキシムなどの抗生物質を併行投与することも効果的な治療法といわれています。

ウイルス性髄膜炎

ウイルス性髄膜炎では、ヘルペスウイルスやヒト免疫不全ウイルスなどのように抗ウイルス薬があるものは、それらの薬物療法が行われます。
しかし、髄膜炎を引き起こすウイルスは多々あり、それらの多くは抗ウイルス薬が存在しないため、ウイルス性髄膜炎の治療は対症療法が主体となります。

ウイルス性髄膜炎の対症療法

抗ウイルス薬がないウイルスが原因の髄膜炎の場合は対症療法として、発熱に対する解熱剤、頭痛に対する鎮痛剤、脳圧の上昇に対する脳浮腫治療薬などの薬物療法、食事量の低下などによる脱水を予防するための補液療法、呼吸機能低下に対する酸素吸入療法などを行います。

髄膜炎菌性髄膜炎の予防はワクチン接種が効果的

髄膜炎菌性髄膜炎の予防に効果的とされているのは、ワクチン接種です。髄膜炎菌ワクチンにはさまざまな種類があります。

日本の髄膜炎菌ワクチン

A、C単独もしくは2群、およびA、C、Y、W-135の4群混合の精製莢膜多糖体ワクチンが使用されています。ただし、2歳以下の幼児には効果がなく、さらに成人の場合は効果が数年程度しか持続しないとされているため、今後の動向が注目されています。

家庭で取り入れたいウイルス性髄膜炎の予防法

ウイルス性髄膜炎の予防は、ウイルス性感染症を予防することが最も重要となります。このため、風邪や感染症が流行しているときには手洗いや消毒、マスク着用などを行って飛沫感染を予防し、標準的な感染防止策を徹底することが必要です。

麻疹や風疹、水痘ウイルスは予防接種を受けることで感染を予防することできます。定期接種となっているワクチンは決められた時期に忘れずに打つようにしましょう。また、成人でも抗体がないと分かっている人は予防接種を受けることをおすすめします。

おわりに:髄膜炎菌性髄膜炎は急激に悪化するので要注意。異変に気づいたらすぐ病院へ

髄膜炎菌性髄膜炎は発生件数こそ少ないものの、早期の段階で適切な治療を行わないと、急激に悪化し死に至る恐れがある病気です。原因不明の高熱や頭痛、皮膚の異変などが見られた場合は、すぐに病院を受診するようにしてください。感染を防ぐためにも予防対策は怠らないようにしましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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