記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/1 記事改定日: 2019/8/26
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
クレアチンは体内で生成されるとエネルギー源として貯えられる物質です。この記事では、クレアチンの効果や摂取量などを解説していきます。
クレアチンは体内で生成されるとクレアチンリン酸に変換され、エネルギー源として貯蔵されます。クレアチンリン酸は必要な際に速やかにエネルギーを放出できます。その結果、クレアチンを補給するとエネルギーを素早く生み出すことができるため、脳、骨、筋肉、肝臓にメリットがあるとされています。
クレアチンは、肉、卵、魚などの特定の食品に含まれており、この補給によってさまざまな健康効果をもたらしてくれます。また、クレアチンには神経保護や心臓保護の特性があります。そのため、アスリートのパワーの向上や脂肪を減らすといった用途で使用されます。
ただし、十分に水分を摂取しないままクレアチンを補給すると腹痛を起こすことがあります。また、一度に大量のクレアチンを補給すると、下痢や吐き気を引き起こすこともあります。そのようなときは、複数回に分けて摂取したり、食事とともに摂取したりすることをおすすめします。
就寝前の1時間以内にクレアチンを補給すると、睡眠の質を低下させる可能性があることが明らかになっています。
入手可能なクレアチンにはさまざまなタイプがありますが、クレアチン・モノハイドレートは最も安価で、かつ、効果的とされています。粉末タイプのクレアチン・モノハイドレートを選ぶと、簡単に水に溶かすことができます。
また、クレアチンの体内濃度を効率よく上げる方法としてクレアチンローディングがあります。クレアチンローディングとは、最初に多めの量のクレアチンを摂取して一気に濃度を上げるという方法です。ローティングを始める際は、まず体重1kgあたり0.3g/日を5~7日間摂取します。その後、1日に少なくとも体重1kgあたり0.03gを3週間もしくはそれ以上摂取します。
体重が82kgの場合、クレアチンローディングに取り組むときは25g /日、その後は2.5g /日を摂取するようになります。ただし、クレアチンが値段が手ごろなことや、効果を高めようとして、5g /日を服用することが多いです。高用量(10g /日まで)は、筋肉量が高く、活動レベルが高い人にとっては効果的とされています。
クレアチンはサイクルさせる必要がありません。
ステロイドとは構造的にも、作用においても何ら関係性のない、まったく別のものです。
あらゆるタイプの癌の原因因子としてクレアチンを結びつける科学的研究はありません。また、クレアチンと癌を関連付ける主張は、今のところいかなる証拠によっても検証されていません。
研究では、クレアチンの使用を中止しても体重や筋肉量の低下はみられませんでした。
クレアチンは最も徹底的に研究された化合物のひとつで、補給による副作用は認められていません。
カフェインはクレアチンの効果を軽減させる可能性がありますが、証拠を示しているのは1つの研究だけです。また、短期間の筋肉収縮を繰り返し行う運動では、クレアチンのみ摂取した場合と、クレアチンとカフェインをどちらも取った場合の間に違いはみられませんでした。カフェインは、実際にはパフォーマンスにかなりの良い影響をもたらすようです。
クレアチンは体内に溜め込んでおくことができるので、いつでも摂取することができます。トレーナーによっては、運動後にクレアチンの摂取を勧める人もいますが、摂取における違いはありません。
クレアチンはジヒドロテストステロン(DHT)を増加させる可能性があります。DHTは病状や頭髪の後退に関係があるとされていますが、この関係性を評価する直接的な研究は行われていません。
薄毛の男性にとって、クレアチン摂取が薄毛を促してしまう可能性がありますが、これを裏付けるためにはより正確にデータを再現する必要があります。これは、若い男性の抜け毛に重要な遺伝的要素があるため、家族歴のある人や既に頭髪が後退している人にのみ適用されます。
上記の根拠は、アンドロゲンおよびテストステロン代謝物、DHTによるものです。5αリダクターゼ(5α還元酵素)により、テストステロンはより強力なアンドロゲンであるDHTに変換されます。DHTは、男性型脱毛症の主な原因と考えられており、DHT濃度の上昇と抜け毛の増加との間に関連性があります。
このことから、DHTを増加させるものは、人によっては脱毛を加速させる可能性があります。ある研究によると、クレアチンのサプリメントは、使用後3週間までに男性ラグビー選手(1日のクレアチン使用量が5g以下)のDHTの増加に関係があることが明らかになっています。
なぜクレアチンがDHTを増加させるのかは今のところ明らかになっていません。クレアチンが脱毛率を上昇させると仮定すると、5αレダクターゼ阻害剤を併用することでテストステロンのDHTへの変換を防ぎ、抜け毛のペースを遅らせることができるかもしれません。アンドロゲンの影響を軽減するために、フィナステリド(プロペシア)として知られている最も一般的な5-αレダクターゼ阻害剤が有効であるとする研究もあります。
クレアチンローディングは、必ずしも必要ではありません。体がクレアチンに反応するかどうかを確認したり、わずかに早い効果を得るための診断として使用することができますが、必須ではありません。デメリットとして下痢や腹痛などの可能性があるだけで、クレアチンローディング自体に害はありません。
クレアチンローディングは、クレアチンの濃度を急速に上昇させるため、筋肉の急激な増加と、体重の増加を引き起こします。筋肉、筋力が目に見えて大きくなるという心理的なメリットをもたらすかもしれません。長期間にわたってより少ない量を摂取すると、最終的には同じ飽和点に達しますが、時間がかかります。
クレアチンニトレートはクレアチンの一種で、クレアチンを硝酸塩としたものです。これまでに発表されてきた研究の中で、たったひとつのみ、クレアチンニトレートがクレアチンモノハイドレートに比べて約10倍水溶性が高いということが明らかになっています。ただし、そのほかの点で、クレアチンニトレートがクレアチンモノハイドレートより優れているという根拠はありません。
クレアチンと腎臓を調べる研究では、クレアチンと腎障害に関連はないとされています。
腎臓が健康な人にとって、クレアチンが腎臓の健康を損なうことはありません。1つの腎臓だけを機能させながら、大量のクレアチン(20g)を服用している男性を対象にした研究では、腎臓が最適に機能していない状況であっても、損傷がみられないという証拠もあります。しかしながら、サプリメントを服用する前には、医師に相談することをお勧めします。
ほとんど運動したことがない人の場合、運動を始めてからの効果があらわれやすいため、研究者にとってサプリメントとの相互作用を判断することが難しいです。また、一流のアスリートを対象とする場合、サプリメントの効果が出づらい傾向があります。このため、サプリメントは初心者には効果的ですが、一流アスリートは効果を実感できない、ということも珍しくはありません。
ちなみに、一流アスリートを対象にした研究では、運動初心者のクレアチン補給による筋肉の増加がみられたのに対し、一流アスリートには抗疲労作用や力の増強はほとんどみられませんでした。