記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/31 記事改定日: 2020/6/11
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ネフローゼ症候群とは大量の淡白尿が出ることによって血中のタンパク質が減少し、浮腫(むくみ)が起こる腎臓疾患です。今回の記事では、ネフローゼ症候群の診断基準や一次性ネフローゼと二次性ネフローゼの違い、検査方法・治療法について解説します。
ネフローゼ症候群は、腎機能の低下によってタンパク質が大量に尿内に排出されるため、大量の尿蛋白と血中蛋白質の低下が生じます。
その結果、体内に水分が溜まりやすくなることによる高度なむくみ、高脂血症、血液凝固異常などが生じます。進行すると免疫力の低下による易感染性などが見られることもあります。
ネフローゼ症候群の診断基準は成人と小児では異なり、それぞれ以下のように定められています。
ネフローゼ症候群を診断するために尿検査と血液検査が行われます。
ネフローゼ症候群は病型により蛋白尿や血尿の程度に違いがみられます。一日を通してどのくらいの量の尿蛋白が出ているかどうかが大切な指標ですが、厳密に行うには24時間蓄尿が必要です。ただし、蓄尿はとても大変なので、尿蛋白と尿クレアチニン比の検査値を代用として使用することがあります。
ネフローゼ症候群の場合、血清総蛋白の低下、アルブミンの低下、コレステロールの増加を確認するため血液検査を行います。
ネフローゼ症候群には、腎臓自体に原因がある「一次性ネフローゼ症候群」と、腎臓以外の病気が原因となる「二次性ネフローゼ症候群」があり、治療法も各症状に合わせて変わります。以下に治療法を解説します。
一次性ネフローゼ症候群には、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症などがあります。他に、微小変化型ネフローゼ症候群(微小変化群といいます)があり、これは子供に多くみられます。以下に成人に多い3種類の治療法を解説します。
一次性ネフローゼ症候群の中でも膜性腎症は発症頻度が高いとされています。この場合、特別な治療なしで約半数の患者が治癒しますが、徐々に腎機能が低下し、腎不全を起こす人も少数存在します。
パルス療法という治療法が採用されます。これはステロイド薬の短期間集中使用と、薬を使用しない期間を交互に繰り返す方法です。
この症状の場合は、治療に大量のステロイド薬を使用します。
二次性ネフローゼ症候群の主な原因は、糖尿病性腎症、ループス腎炎などがあります。この場合の治療は、原因となっている病気の治療とあわせて、薬物療法と食事療法を行います。
薬物治療では、主にステロイド薬が使用されます。また、症状に合わせて以下の薬が使用されます。
ネフローゼ症候群は、適切な治療を行うことで症状を抑え、通常の生活を送ることが可能になるケースもあります。基本的には、数年単位で治療を行い、症状の再発が見られない場合は「完全寛解」として治療を中止することも可能です。
ですが、一度ネフローゼ症候群を発症すると「完治」は難しく、再発する危険も十分にあります。治療を中止したとしても定期的な腎機能検査や尿検査を続けていく必要があります。
微小変化型ネフローゼ症候群の治療にステロイド薬が用いられた場合、症状が消えた後に再発する可能性があります。また、薬の量を急に減らしたり、途中でやめてしまった場合に再発する可能性が高くなります。そのため、症状がなくなっても医師の指示があるまで薬を飲み続けることが重要です。
ネフローゼ症候群の治療は長期にわたり、自己判断で途中で中止してしまうと再発の恐れがあります。ネフローゼ症候群と診断された場合は、医師の指示に従って薬物療法などを行い、食事療法なども取り組みましょう。焦らずじっくり治療に取り組み、症状緩和を目指してください。