記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/9/20 記事改定日: 2019/8/19
記事改定回数:3回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
バルーンは出産を誘発するための医療機器で、子宮口を刺激して分娩を促すために使われます。この記事では、バルーン出産の特徴や流れ、費用、使用時に考えられるリスクなどを解説します。
バルーンとは、分娩を誘発させるために使う医療器具です。正式名称は「メトロイリンテル」で、小さなゴムボールのような形をしています。名前の通り、風船のようにふくらませることで子宮口を広げ、分娩を促すために使われます。
出産時にバルーンなどの医療器具を使った方がよいのは、以下のような場合です。
自然分娩を希望する方の中には、医療器具を使った出産に不安や反発を覚える方もいるかもしれません。でも、こうした器具を使うことで、お母さんや赤ちゃんがより安全に出産を迎えられることもあります。もし、主治医から器具の使用を提案されたときは、母体と赤ちゃんの命を第一に考えて判断しましょう。
バルーン誘発分娩などの自然分娩を促すための医療行為は、基本的に健康保険は適応されず、全額自己負担となります。出産費用は病院によって異なるため、バルーンを用いた場合には基本料金に加算される金額も病院によってさまざまです。一般的には数万円の加算で済むことが多いですが、中には20万円以上の加算が必要な病院もあります。もし、あらかじめ分娩時にバルーンを使うことが分かっている場合は、病院に費用を尋ねておきましょう。
また、微弱な陣痛が長く続いている状態で、陣痛を促すためにバルーンを使用する場合には、出産に2日以上かかることもあります。このような場合、入院日数が長くなることがあるため、延びた分だけ費用も高くなります。
まず、バルーンを膨らませずに腟から挿入し、子宮口に設置します。その後、滅菌食塩水を少しずつ注入し、バルーンをふくらませていきます。
バルーンがふくらんで物理的に子宮口が開くとともに、刺激によって陣痛が促され、そのまま分娩につながることもあります。子宮口が4cmぐらい開くと、バルーンは自然に体の外に出てきます。
陣痛促進剤は人工的に陣痛を引き起こすための薬で、子宮収縮を促す目的で使われます。飲み薬と点滴があり、妊婦さんの陣痛の起こり方によって使い分けられます。
出産には、子宮口が十分に開くことと、赤ちゃんを娩出するための力となる陣痛が必要です。バルーンを使うと子宮口が開くので、自然に陣痛が始まることが多いですが、中には子宮口が開いても十分な陣痛が起こらないこともあります。このようなとき、陣痛促進剤が使われます。
また、微弱な陣痛が始まっているときは先に陣痛促進剤を使用し、それでも子宮口が十分に開いていない場合にもバルーンを使用することもあります。出産は人によって進行具合に大きな違いがありますので、それぞれの妊婦さんの状態をみながら適切な処置が行われます。
バルーンを挿入するときに感じる痛みについては、「違和感はあるけどそれほど痛くなかった」という方もいれば、「力が入ったせいか、痛みが強かった」という方もおり、個人差があることがわかっています。
無痛分娩のときにバルーンを使うこともあります。無痛分娩は、あらかじめ出産日を決めておき、その日に硬膜外に麻酔の管を入れて、痛みを和らげながら分娩を誘発する分娩方法です。子宮口がしっかり閉じている妊婦さんの場合、陣痛促進剤を使用しても子宮口がうまく広がらないことがあるため、出産日の前日にバルーンで子宮口を広げる処置を行うこともあります。
出産を促すバルーンですが、危険性がゼロというわけではありません。バルーンを使った場合に起こり得る赤ちゃんへのリスクとして、以下の2つあります。
バルーンを入れると子宮が圧迫されるため、赤ちゃんが出にくい体勢になってしまう可能性があります。また、バルーンで頭が押し上げられることで赤ちゃんの頭と子宮壁にすき間ができ、そのすき間にへその緒が挟まってしまうリスクもあります。
バルーン挿入時に細菌に感染してしまう可能性もあります。ただし、適切に管理されていれば細菌感染が起こる可能性は低いですし、病院によってはバルーンを入れる前に抗菌薬を投与するといった対策をとっているところもあります。
主治医から突然バルーンの使用を提案されても慌てないよう、妊娠中に医師から詳細な説明を受け、疑問があれば質問や相談をし、できるだけ不安を解消しておきましょう。