記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/12 記事改定日: 2019/12/16
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
心臓の病気にはいろいろありますが、動悸や息切れなどが現れ、胸の痛みの発作が起こる狭心症という病気があります。
そのなかでも、更年期前後の女性に多い狭心症に微小血管狭心症があります。この記事では微小血管狭心症についてまとめました。
狭心症とは、動脈硬化などで心臓に栄養や酸素を送る冠動脈が狭くなり発症する病気です。
一般的に胸の痛みなどの症状が現れますが、無症状のもの(無症候性)もあります。
階段の昇り降りや重い荷物をもったときなどに症状が現れることが多く、このようなタイプの狭心症を労作性狭心症といいます。
また、このような一般的な狭心症とは別に、安静にしているときにも発症する冠攣縮性狭心症という冠動脈の攣縮(れんしゅく:異常な収縮を起こすこと)が原因で起こる狭心症もあります。
微小血管狭心症とは、「弁膜症などの心臓疾患が認められず、直径100μmよりも細い微小な冠動脈が充分に拡張しなかったり、著しく収縮しすぎてしまうために起こる」狭心症です。
その70%は女性が占めるといわれ、40代から50代前半の更年期前後の女性に特に多く見られます。
微小血管狭心症も冠攣縮狭心症と同様、安静時にも起こります。また、喫煙やストレスなども発症要因とされます。
微小血管狭心症は、狭心症の代表的な症状である「みぞおち付近の圧迫感」が現れないことも多く、呼吸が苦しくなったり、吐き気をもよおしたり、胃痛や背中の痛み、あごやのど、耳の後ろなどの痛みなど様々な症状が現れることが特徴です。
また、発作が起こったときでも心電図の変化が少なく、心臓カテーテル検査で冠動脈の造影検査をしても血管の狭窄が確認できないこともあり、女性の発症が全体の70%と、圧倒的に女性の罹患率が高いことも大きな特徴といえるでしょう。
微小血管狭心症は上記でも触れたように、女性の発症率が圧倒的に高く、中でも更年期前後の女性に多く見られることから、女性ホルモンのエストロゲンが少なくなってしまうことが原因ではないかと考えられています。
エストロゲンには抗動脈硬化作用があることが指摘されています。この作用が働きにくくなることで、狭心症の症状が現れていると推測されていますが、完全に証明されているわけではありません。
すでに説明したように、微小血管狭心症は、発作を起こしても心電図に変化が見られず、心臓カテーテル検査でも狭窄を発見できないこともあります。
診断が難しいときは、硝酸剤(ニトログリセリン:血管を拡張する作用がある)やジルチアゼム塩酸塩(カルシウム拮抗薬)などの使用して狭心症の症状の改善を確認が行われ、診断される場合もあります。
微小血管狭心症の治療は基本的に薬物療法が主体となります。
主に用いられる薬剤は、心臓の筋肉に必要な血流を抑えるための「交感神経遮断薬」や血管を広げて心臓の筋肉への血流を増やす「硝酸剤(ニトロ)」です。
なお、これらの薬は一般的な狭心症でも広く用いられる種類のものであり、微小血管狭心症に対してだけ特別に使用されるものではありません。
微小血管狭心症は心筋梗塞に進行するようなケースはないとされており、予後は良好です。このため、積極的な治療を行わないケースもありますので、どのように治療を進めていくか、経過観察でよいかは担当医と相談しあって決めていくようにしましょう。
微小血管狭心症は、女性ホルモンの減少だけでなく、喫煙や寒冷環境、ストレスが原因であることがわっかっています。
女性ホルモンの減少は、更年期を迎える女性にとって避けることができないものですが、喫煙習慣のある人は禁煙をし、寒い環境を作らない、ストレスがたまりにくい生活を送ることを心がけましょう。
また、微小血管狭心症は動脈硬化が進行すると悪化しますので、肥満・高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病がある人は適切な治療を続け、食生活や運動習慣、飲酒習慣などに気をつけましょう。
微小血管狭心症は診断も難しく、治療方法も完全に確立されたわけではありません。しかし、生活習慣を見直し血管を健康に保つことで予防ができると考えられています。
また、カルシウム拮抗薬や女性ホルモンの補充治療など有効とされる治療方法もあるので、疑わしい症状がある場合は早めに医師に相談しましょう。
この記事の続きはこちら