クラミジア肺炎の感染経路と予防法 ― 赤ちゃんを感染から守ろう!

2017/9/21 記事改定日: 2018/7/20
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高熱はないのに、激しい咳が止まらない、そんなときはクラミジア肺炎かもしれません。通常小さい子供や高齢者に多い病気ですが、まれに成人でもなることがあります。ここでは、クラミジア肺炎についてまとめました。

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クラミジアとは

クラミジア肺炎とは、クラミジアという病原体による肺炎のことをさします。クラミジアの中には肺炎クラミジア、トラコーマ・クラミジア、オウム病クラミジアなどがあり、本来はこれらによる肺炎を意味します。ただし、オウム病クラミジアは人畜共通感染症であり、症状も強く通常は区別します。

病原体となるクラミジアは、細胞内でだけ増殖します。感染性のあるクラミジアの基本小体が宿主(例えば人間)の細胞に吸着して侵入し、分裂し増殖した後に、再び基本小体に戻って、細胞を破壊しながら細胞の外に放出されます。

クラミジア肺炎の感染経路は?

クラミジア肺炎は、咳やくしゃみなどの飛沫感染で伝染し、急性呼吸器感染症を起こします。感染して症状があらわれるまでは3 〜4 週間です。クラミジアによる肺炎はいわゆる非定型肺炎と呼ばれます。

産道感染

母体がクラミジアに感染していると、分娩時に産道を通る新生児に感染することがあります。新生児は免疫力が弱く、感染すると低出生体重児などでは重度の肺炎を引き起こすことも珍しくありません。
新生児への感染を防ぐには、出産前にクラミジアをきちんと治療しておくことが大切です。

クラミジア肺炎の症状にはどんなものがある?

新生児や乳児の症状

新生児や乳児は、通常は熱はありません。多呼吸、喘鳴、湿性咳嗽などの呼吸器の症状を示します。治療として、酸素投与や人工呼吸が必要になることは少ないですが、低出生体重児などでは重症化する場合もあります。

新生児や乳児以外の症状

新生児や乳児以外では、上気道炎、気管支炎による乾性咳嗽が主に見られます。たんがからむこともあります。

合併症

クラミジア肺炎は、比較的予後の良い感染症であり、免疫力の弱い小児や高齢者、基礎疾患のある人を除いて重症化することはほとんどありません。

しかし、クラミジア肺炎にかかることで、後々に気管支喘息を発症することがあります。これは、クラミジアによって気道の過敏性が亢進し、少しの刺激で咳や喘鳴が出やすくなるためです。また、動脈硬化や関節リウマチなどを引き起こすこともわかってきており、治癒後も全身的な管理が必要になる場合があります。

クラミジア肺炎の治療法は?

新生児や乳児の治療

新生児や乳児の場合は、マクロライド系薬を使用し、エリスロマイシンの点滴静注などを行います。母親にも、授乳をすることからマクロライド系薬を投与します。

新生児や乳児以外の治療

成人では、ミノサイクリン、ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系薬や、マクロライド系のクラリスロマイシン、アジスロマイ シンなどを投与します。
ニューキノロン系薬も抗クラミジア効果が優れています。

クラミジア肺炎では、10日から2週間と長めに薬を服用します。軽い症状の患者には、通常は内服抗菌薬で効果があります。しかし、中等度以上の肺炎で、入院しなければいけない場合は、ミノサイクリンなどの点滴静注を行います。

治療後は、通常良好なことがほとんどですが、高齢者や基礎疾患のある人は、重症になることもあります。

一般的な治療

激しい咳の症状には、咳を鎮める薬を投与します。肺炎が広い範囲で起こり、呼吸困難が強く、低酸素血症があれば、酸素吸入を行ないます。

家族や身近な人に感染の可能性があり、疑わしい症状が現れているときは、病院で検査や治療を受けるようにしましょう。

クラミジア肺炎への感染を予防するために、何をすべき?

手洗いやうがいを行うことで、病原体を洗い流しましょう。飛沫感染でうつるので、体内にクラミジアを入れないことが大切です。マスクの着用は、飛沫を体内に入れないことや、他の人への感染の予防に役立ちます。

健康な成人の場合は、感染しても症状があらわれることはあまりありません。しかし、日常生活で、高齢者や子供、免疫の低下した人や呼吸器系の基礎疾患を持つ人接している場合、うつしてしまう可能性もあります。

おわりに:感染を広げないためにも、気になる症状がみられたらすぐに病院へ連れていこう

普段から家族や身近な人の症状に気をつけて、家族内感染の可能性があり少しでも疑わしい症状がある場合は、必ず病院で検査し、適切な治療を受けるようにしましょう。
また、女性の場合は産道感染の恐れもあるので、妊婦健診や妊娠前の検査を怠らないようにしましょう。

国立感染症研究所ホームページを編集して作成 】

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