記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/28 記事改定日: 2018/6/26
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
運動もしていないのに、服に染みができるほど汗をかいてしまう人は多汗症の可能性があります。多汗症は病院での治療で改善するケースも少なくありません。多汗症の治療方法のメリットとデメリットを解説していくので、悩みの解消に役立ててください。
熱いときや運動中は誰でも汗をかくものですが、運動もしていないのに過度に発汗してしまうことを「多汗症(多汗症)」といいます。多汗症には内分泌の問題や神経の病気、感染症などが原因になるものと、原因がわからない原発性のものに分けられます。
周囲に気づかれない程度のものや、そこまで気にならない程度であれば特に問題ありませんが、服に染みてしまったり、したたり落ちるほど多量に汗をかいてしまう場合は、社会生活に支障をきたす場合もあり、思いつめて精神を病んでしまう原因になりかねません。
多汗症は「局所性多汗症」と「全身性多汗症」があり、それぞれ「原発性」と「続発性」の2つにわけることができます。
特定の原因はまだわかっていませんが、家族性や遺伝の関係性が示唆されています。また、過度の不安や緊張、食習慣や生活リズムの乱れで自律神経のバランスが崩れることも原因ではないかと考えられています。
続発性多汗症は、下記のような病気などに起因するものであり原因がはっきりしています。
多汗症になると、手や足、ワキの下、顔面、性器周辺などの発汗量が異常に多くなります。服は汗で湿り、肌は白くなったりしわができたり、赤みを帯びることも少なくありません。これは一部分(局所)だけに起こることもあれば、全体的に起こることもあります。
大量の発汗は見た目のコンプレックスにつながります。また、汗は体臭のもとになることもあり、これもコンプレックスにつながるでしょう。その他、握手をしたときの手の感触が気になることもあるかもしれません。このようなコンプレックスは、仕事や学校にいくことの障害につながります。
多汗症に苦しんでいる人は恥かしいという気持ちから助けを求めないことも多く、結果的に社会的隔離やうつ病、不安感を引き起こすことも多いようです。多汗症は病院での治療が可能な場合があります。ひとりで悩みを抱え込まず、まずは相談してみることをおすすめします。
また、多量な発汗には深刻な病気が隠れている可能性があります。以下のような症状があるときは必ず病院を受診しましょう。
薬物を使った治療法では、多汗症のコントロールに役立つ以下のものがあります。
精神的なものが原因と考えられる場合は、心理療法や抗不安剤などでの治療が有効な場合があります。
ボトックス注射とは、本来は人体に悪影響を及ぼすボトックス(ボツリヌス毒素)を発汗しやすい部位に注入することで汗腺の機能を低下させ、発汗の抑制を図る治療法です。
痛みは少なく、日帰りで行える上に手術による傷跡なども残らないため、手軽に行える治療法として人気があります。
しかし、保険が適応されないため一回の治療は8~10万円程度が相場となります。高額な治療ですが、半年以内にはボトックスの効果が切れて発汗が復活してしまいます。また、副作用は殆どありませんが、注射をした部位が一時的に痛み、腫れや赤みを生じることがあります。
イオントフォーレシスとは、発汗が生じる手の平と足の裏の表面を水に浸し、30分程度微弱な電流を通電させる治療法のことです。水に通電することで水素イオンが発生し、それが汗の分泌を抑えると考えられています。
しかし、効果はあくまで一時的なもので、週に一度は継続して行う必要があります。
現在では保険適応となっていますが、定期的な通院が難しい場合にはアメリカ製の自宅用機器を購入することも可能です。
注射や手術が必要でなく、体への負担が少ない治療法ですが、定期的な通院や機器の購入が必要となることや、効果が人によって大きく異なるという欠点があります。また、ペースメーカーがある人は使用することができませんので注意してください。
発汗は、交感神経が興奮することで促進されます。交感神経を手術で遮断することで発汗を止める治療が「交感神経遮断術」です。
この手術には、手の平の多汗に効果がある胸部交感神経遮断と、足の裏の多汗に効果を発揮する腰部交感神経遮断術がありますが、とくに足の裏に対しては、交感神経に薬剤を注入して汗を出す指令を止める腰部交感神経節ブロックが一般的です。
なお、交感神経遮断術を行なうと、手の平の汗は確実に止まってくれますが、今度は体の他の部位に多量に発汗がみられる「代償性発汗」が起こる可能性があるので、医師とよく相談して行なうようにしましょう。
自分ではコントロールできないような多量な発汗は、人前に出たり、人と接することが怖くなり、仕事や学校に行くことすらままならなくなってしまうことがあります。汗の悩みを相談することには抵抗があるかもしれませんが、病院での治療で解決しているケースも少なくありません。ひとりで抱えこまず、なるべく早く病院に相談してみましょう。