記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2025/6/18
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
多汗症とは、過剰に発汗してしまう状態です。暑くもなく、運動もしていないのに、いつも服に染みができるほど汗をかいてしまうという人は、多汗症の可能性があります。この記事では、多汗症の原因の種類と症状の特徴、治療方法について解説していきます。
暑いときや運動中は、誰でも汗をかくものです。しかし、何もしていないのに過度に汗をかいてしまうようであれば、「多汗症」の可能性があります。周囲に気づかれない程度であったり、気にならない程度であったりすれば、とくに問題になることはないでしょうが、汗が服に染みてしまったり、したたり落ちたりするほど汗をかいたりする場合は、社会生活に支障をきたす場合もあり、思いつめて心に不調をきたすことにもなりかねません。
多汗症には「局所性多汗症」と「全身性多汗症」があり、内分泌の問題・神経の病気・感染症などが原因になる「続発性」と、原因がはっきりしない「原発性」にそれぞれ分けることができます。
特定の原因はまだわかっていませんが、家族性や遺伝の関係性が示唆されています。また、過度の不安や緊張、食習慣や生活リズムの乱れで自律神経のバランスが崩れることも原因ではないかと考えられています。
続発性多汗症は、以下のように原因となる病気・行動などがあります。
多汗症では、手・足・ワキの下・顔面・性器周辺などの発汗量が異常に多くなります。服は汗で湿り、肌は白くなったりしわができたり、赤みを帯びることもあります。これは一部分(局所)だけに起こることもあれば、全体的に起こることもあります。大量の発汗は見た目のコンプレックスにつながり、汗臭・体臭などのコンプレックスにもつながります。また、握手をしたときなどの「手の感触」について、悩みを抱えることもあるでしょう。このようなコンプレックス・悩みは、仕事・学校での行動に支障をきたす原因になることもあります。
多汗症の人は、「恥ずかしい」という気持ちから助けを求めず、結果的に社会的隔離やうつ病・不安感を引き起こすこともあります。多汗症は治療できる場合があるため、まずは医療機関を受診し、医師に相談してみることをおすすめします。また、以下のような発汗については、何らかの病気が原因の可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
多汗症では、以下の方法で治療を行い、精神的なものが原因と考えられる場合は、心理療法・抗不安剤などが使われる場合もあります。
ボツリヌス注射(ボトックス®注射)とは、ボツリヌス毒素を発汗しやすい部位に注入して汗腺の機能を低下させ、発汗の抑制を目指す治療法です。痛みは少なく、手術による傷跡なども残らず日帰りで行えます。副作用はほとんどないといわれていますが、注射部位に痛み・腫れ・赤みが一時的に現れる場合があります。
イオントフォレーシスとは、発汗が生じる手の平と足の裏の表面を水に浸し、30分程度微弱な電流を通電させる治療法です。水に通電させ水素イオンを発生させることで、発汗の抑制を目指します。体への負担が少ない治療法ですが、効果が一時的なため定期的に治療を受ける必要があり、ペースメーカーがある人は治療を受けることができません。なお、家庭用の機器を購入すれば、自宅で治療を受けることもできます。
発汗は、交感神経が興奮することで促進されます。交感神経遮断術とは、交感神経を手術で遮断することで発汗を止める治療です。この手術には、手の平の多汗に対して行う「胸部交感神経遮断」と、足の裏の多汗に対して行う「腰部交感神経遮断術」があります。なお、交感神経遮断術を行なうと、他の部位に多量に発汗がみられる「代償性発汗」が起こる可能性があります。手術のメリット・デメリットについて医師から十分説明してもらい、納得した上で受けるようにしましょう。
過剰な発汗で悩みを抱えると、人前に出たり人と接することが怖くなり、仕事や学校に行けなくなってしまうこともあります。汗の悩みを相談することには抵抗がある人もいるかもしれませんが、医療機関での治療で解決することもあるので、早めに相談することをおすすめします。