記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/16 記事改定日: 2019/3/19
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)=頬がおたふくのように腫れあがる病気」というイメージを持っている人もいると思いますが、類似の症状がみられても、実は別の病気の可能性があるのです。この記事では、そんなおたふく風邪の検査方法やよく似た別の病気についてや検査の必要性について説明していきます。
おたふく風邪は耳の下辺りにある耳下腺が炎症を起こし、耳の付け根から頬、あごが腫れる病気です。熱は出ないこともありますが、発熱すると38~39度くらいになります。頬が片方だけ腫れる場合と両方とも腫れる場合とがあり、腫れた場所には痛みが生じます。腫れは2~3日がピークであり、1週間ほどでおさまります。
おたふく風邪自体はそれほど深刻な病気ではありませんが、合併症には注意が必要です。
これは原因となっているムンプスウイルスは全身の臓器に感染しやすいという特徴があり、脳に感染して髄膜炎や脳炎になったり、男性であれば睾丸炎、女性であれば卵巣炎を発症したりすることもあるからです。
また、おたふく風邪には間違いやすい病気がいくつかあり、どの病気であっても対処法を間違ってしまえば深刻な状況に陥りかねません。
気になる症状があるときは必ず病院で検査してもらいましょう。
おたふく風邪の典型的な症状である耳下腺の腫れを引き起こすため、おたふく風邪と間違われやすい病気があります。
代表的な病気としては、耳下腺の腫れと痛みを定期的に繰り返す「反復性耳下腺炎」です。小児に多く見られ、思春期を迎えるころには症状が治まることが多いとされています。原因は耳下腺への細菌やウイルスの感染、ストレス、不衛生な口腔環境などが挙げられますが明確な発症メカニズムは解明されていません。
また、その他にもサイトメガロウイスル感染などでも耳下腺の腫れや発熱などの症状が見られることがあります。
おたふく風邪は一度感染したり予防接種を受けて免疫がついたとしても、時間が経過すると免疫が減弱する傾向にあります。
このため、一度感染した場合でも再度感染することがあります。特に、予防接種は100%感染を防げるわけではありませんので、予防接種を受けた場合でも感染することも多々あります。
おたふく風邪が疑われる症状がある場合は、なるべく早めに病院を受診して検査・治療を受けるようにしましょう。
病院ではまず、耳下腺の腫れや痛み、発熱などのチェックが行われますが、症状だけでは確定診断まではなかなか至りません。これは症状が急性耳下腺炎などと似ているためであり、確定させるには血液検査が必要です。
血液検査では、ムンプスIgM抗体やムンプスIgG抗体を調べます。唾液から調べられれば良いのですが、実際にウイルスを検出するのが難しいために血液から抗体を調べます。検査自体は2~3分ほどで終わりますが、結果がでるまでに1~2週間かかります。発症後の急性期と回復期の2回検査を行うペア血清検査もありますが、わかる頃には治っている場合がほとんどです。
おたふく風邪の予防接種は任意ですが、生殖機能への影響や難聴といった合併症の懸念もありますので、できるだけ受けることをおすすめします。まれに副作用が起きることもありますが、症状の重症度はおたふく風邪が自然発症した場合と同程度となっていて、予後も良好です。感染や合併症を予防するには予防接種が一番です。
もしおたふく風邪にかかった場合は、症状を緩和するための対症療法のみで治療していきます。痛みや発熱には解熱鎮痛剤が用いられ、脱水症状には輸液の点滴が行われます。無菌性髄膜炎の場合には安静にしながら自然回復を待つことになりますが、ムンプス難聴になってしまうと治らないので気をつけなければなりません。
同じおたふく風邪でも、頬が両側とも腫れたり、片側しか腫れなかったりと現れる症状には個人差があります。また、頬が腫れてもおたふく風邪と間違えやすい「急性耳下腺炎」など別の病気の可能性もあるので、自己判断せずに病院で検査を受けるようにしてください。