記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/30 記事改定日: 2018/4/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
精神疾患のひとつとして知られる「双極性障害」。一度は耳にしたことのある病名かもしれませんが、具体的にどんな症状が現れるのかご存知でしょうか?以降で双極性障害の症状や原因、治療法、患者さんとの接し方のポイントについてお伝えしていきます。
双極性障害とは、躁状態(気分がハイになる状態)とうつ状態を繰り返す精神疾患です。かつては「躁うつ病」とも呼ばれていた病気で、発症率はおよそ100人に1人とされています。20〜30代の若い人に多く、男性と女性で発症数に大きな差は見られません。
双極性障害は患者さん本人に躁状態の自覚がないことが多く、うつ病との判別も難しい病気です。そのため発見が遅れることも少なくありませんが、気づかずに放置していると、社会的地位を失ったり、最悪の場合は自殺をしてしまったりする恐れがあります。
双極性障害は程度によって1型と2型に分けられ、それぞれで症状が少し異なります。
1型の場合は、うつ状態と激しい躁状態が特徴です。躁状態のときには、気分が高まって非常に気が大きくなったり、多弁になったり、周りの空気が読めなくなるほど気分がハイになったりすることがあります。
通常の精神状態では、気分が高まっても、その状況に応じて気分の高まりを抑えることも可能です。しかし双極性障害の場合は、躁状態になってしまうと自分ではコントロールできないほど興奮し、それに伴って様々な問題行動を引き起こしてしまうことがあるのです。
反対にうつ状態に入ると、気分が沈みます。自己肯定感がなくなる、無気力、朝起きることができない、眠れない、自殺願望が出るといった症状が現れます。
一方の2型では、うつ状態と軽い躁状態が特徴です。躁状態といっても軽度のため、周りの人が気が付かないことも少なくありません。なお、うつの程度は1型でも2型でも同程度です。
先ほど、「双極性障害とは躁状態とうつ状態を繰り返す病気」とお伝えしましたが、この躁状態とうつ状態はある日急に切り替わるわけではありません。「寛解期」と呼ばれる症状が落ち着いている時期を経てから移行します。なお、この寛解状態は初期の頃は平均5年程度持続すると言われています。
この寛解期になると「双極性障害が治った!」と勘違いし、治療を中断してしまう患者さんもいますが、治療を途中でやめると症状は再発し、以降の寛解期も徐々に短くなっていきます。寛解状態にあるときにこそ、投薬などで再発予防をしっかり行っていくことが重要です。
双極性障害の発症原因としては、まず気質が挙げられます。具体的には、真面目、責任感が強い、細かいことを気にする、人間関係での悩みが多い人が発症しやすいとされています。
ただし、気質だけで発症するわけではありません。発症には何らかの原因が存在するのです。例えば、仕事で大きな失敗をしてストレスを感じるようになった、人間関係が悪くなった、といったことが脳のバランスを崩すことにつながり、それが引き金で双極性障害を引き起こしてしまうことがあるのです。
なお、身体と脳は繋がっているので、身体の調子が悪くなることで脳の働きのバランスが崩れ、それをきっかけに発症するケースもあるとされています。
双極性障害の治療は、躁状態やうつ状態に対することと、再発を防止する目的で行います。非定型抗精神病薬や気分安定薬、抗うつ薬などの薬物療法が主流で、特に気分安定薬の一種であるリチウムで効果が得られることが多いです。また、再発を防止するためには、薬物療法と併せて心理療法(認知行動療法など)によって、気分の波をコントロールする技術を習得していくことも重要です。
双極性障害の人と接したとき、始めは違和感を感じるかもしれません。しかし接し方の基本は、一方的に責めたり、注意したりしないようにすることです。そして「頑張れ」と励まさないことも大切です。励ますことによって、プレッシャーを与えてしまう恐れがあるからです。特にうつ状態のときにそういった励ましをすると、逆効果になる恐れがあります。近くで寄り添い、見守ってあげるような姿勢を心がけましょう。
また、病院で適切な治療を受ければ症状が大幅に改善するケースも多々見受けられるので、本人に無理強いしない程度に、病院への受診やカウンセリングを勧めてあげることも大切です。
気分が高揚する躁状態と、激しく気分が落ち込むうつ状態という、両極端な症状を繰り返すのが特徴の双極性障害。現在では投薬治療によって気分をコントロールすることも可能になりつつあるので、身近な人で発症の疑いがある場合には、それとなく病院への受診を勧めてあげることも大切です。