性嗜好障害 ― 人にはいえないセックスに関する障害を治療するには

2017/10/31

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

性嗜好障害は性に関わる行動を抑えられなくなる障害のことであり、犯罪行為につながるケースも多く見られます。セックス依存症とは全くちがうものであり、早期の対処が必要です。この記事では性嗜好障害について解説しています。

性嗜好障害とは

 

性的行動のコントロールができなくなる状態のことを性嗜好障害といいます。「セックス依存症」と呼ばれることもありますが、医学的に正しい名称ではありません。また、一般的にセックス依存症というと性行為への依存、性欲が強いというイメージですが、性嗜好障害は性行為のみならず、性にかかわるあらゆる行動が抑えきれない病気です。

特に男性では女性に対する認知にゆがみが見られ、過度に風俗店へ通ったり過剰な自慰行為をしたりすることで済む場合もありますが、痴漢や盗撮、のぞき、露出、買春、小児暴行といった犯罪を繰り返すケースも珍しくありません。被害を受けた女性が羞恥心や精神的負担から届け出ないことが多いため、公になっていない性嗜好障害が原因の犯罪が多数あるのではないかとも言われています。

社会的なトラブルにもつながりやすい

 

性嗜好障害の症状の特徴として挙げられるのは、性的行動を自分ではやめようと思っていても簡単にはやめられず、何度も繰り返してしまうことです。たとえば、金銭的に余裕がないのに風俗通いがやめられない、愛情のあるなしにかかわらず不特定多数と性行為をする、痴漢や盗撮、のぞき、露出といった性犯罪に及び、一度警察に捕まっても再び同じ罪を犯す、などといったケースが見られます。

他の依存症とは異なり、犯罪行為に至るケースが多く、被害者が長期間負担を強いられることも特徴的です。また、犯罪を起こすことで逮捕や服役などのリスクがあるだけでなく、性嗜好障害者本人が職をなくしたり、近所の目が気になって住まいを変えざるを得なくなったりすることもあります。

性嗜好障害の治療方法

 

性嗜好障害の治療方法は、薬物療法と認知行動療法に大別されます。

・認知行動療法

性嗜好障害者本人に性的問題行動を起こすきっかけを自覚させ、問題行動を回避するための対策を考え学習させる治療方法です。併せて、被害者側の気持ちを考え、「本当は嫌がっていないのでは」「女性は触られたりのぞかれたりすることを望んでいるのでは」といった被害者へのゆがんだ認識を改めることも促します。

・薬物療法

性嗜好障害の原因の1つとして性ホルモンの異常が考えられるため、「抗アンドロゲン剤」というテストステロン(男性ホルモン)の生成を減少させる薬を用い、性的欲求の減少をはかります。自慰行為や衝動性を抑える目的で、「SSRI」という抗うつ薬も用いられます。ただし、薬物療法はあくまでも対処療法であり、認知行動療法と並行して行われるのが一般的です。

再発を防ぐために気をつけること

 

性嗜好障害が引き起こした性犯罪や問題行動は繰り返される傾向にあります。再発させないためには、正しい知識を身につけて障害と向き合い、適切な治療を受けなければなりません。問題行動の引き金を回避することも必要になります。

また、再発防止には、家族からの理解やサポートはもちろんのこと、性嗜好障害者を支える家族へのケアも大切です。専門の医療機関や福祉センターでは、家族は具体的にどのようなサポートをすればよいのか、どのような点に注意しなければならないのかといったことの相談が可能であり、性嗜好障害者の家族のための支援グループもあります。性嗜好障害者が帰れる家があり、支えてくれる家族がいることは、再発防止につながるでしょう。

おわりに:性嗜好障害とセックス依存症は全く違う。少しでも不安があるときは必ず専門機関へ相談しよう

性嗜好障害とセックス依存症は全く違うものであり、性嗜好障害は犯罪行為に走るケースも多いため早めに適切な対処をする必要があります。自身や家族、パートナーや友人に疑わしい言動が見られる場合は、早めに専門機関に相談するようにしましょう。

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