記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/10/31 記事改定日: 2020/3/9
記事改定回数:1回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
子供の顔を正面から見たとき、片目の黒目だけ内側に寄っているのであれば、それは「内斜視」かもしれません。ここでは、内斜視の特徴や放置することのリスク、治療法について解説していきます。
内斜視とは、片方の黒目が内側によっている状態をいいます。そこまで珍しい症状ではなく、日本人の約3%にみられるとされています。内斜視の場合、もう片方の黒目は通常の位置にあることが殆どです。
黒目のずれ方は、ぱっと見て分からないぐらいのものから、かなり内側にずれてしまい黒目の半分以上が見えなくなってしまっているものなど、個人差があります。
黒目が半分以上見えない状態になると、物が見えにくくなったり、立体感がつかみにくくなったりしますし、両目を使って物を見なくなることによる視力の低下も心配されます。
内斜視はさらに斜視が酷くなってしまうということがあるだけでなく、外見の違和感によるコンプレックスの心配も考えられます。
内斜視は、先天性内斜視と後天性内斜視に分けられます。
先天性内斜視は赤ちゃんに発症する内斜視で、多くは生後1ヶ月から6か月の間に発症します。乳児内斜視とも呼ばれています。原因としては、遺伝や筋肉や神経系の異常などがあります。
後天性内斜視は、生後6か月よりも後に発症する内斜視のことです。急性内斜視や周期内斜視など、さらに数種類に分類されます。
後天性内斜視は遠視や脳の病気、または母親が妊娠中に喫煙や飲酒をしたことで起きると考えられています。ヘビースモーカーの人ほど斜視の子供が生まれてくる確率が高いというデータもあります。
両目を使って物を見る力は、6歳ごろには完成します。そのため、赤ちゃんの内斜視に周りの大人が早く気づいてあげることが重要です。
内斜視は、外見で直ぐに分かる場合は見つけやすいですが、ほとんどわからない場合もあります。ただ、子供がよく転んでいたり、物にぶつかっているような様子が見られたら注意しましょう。また、テレビや絵本を見る時に顔を異常に近づけて見ていたりしていないかよく観察してください。
斜視に気づかないまま放っておくと、視力低下につながったり、眼鏡で矯正を行っても視力が上がらない弱視になってしまったりする可能性もあります。また、病気が原因で内斜視になることもありますので、異常に気がついたら、なるべく早く病院を受診することが大切です。
内斜視は弱視や強度の遠視などによって引き起こされることがあるため、視力に異常がある場合は第一に眼鏡による視力矯正が行われます。
一方、視力矯正を行っても内斜視が改善しない場合、視力障害が原因でない内斜視の場合は目を正常な位置にするための手術が行われます。内斜視は目を動かす筋肉の「外直筋」と「内直筋」のバランスが悪いことが原因で発症するケースが多いため、バランスを整えるために筋肉の一部を切除する治療を行うのが一般的です。
なお、手術は、局所麻酔を用いて日帰りで行うことも可能ですが、乳幼児では全身麻酔が治療になるため入院した上で治療を行います。
内斜視は放置しておくと視力低下につながったり、成長とともにコンプレックスを感じるようになるリスクがあります。見た目で気づきにくいタイプの内斜視もありますが、よく物にぶつかるなどの気になる症状がみられたら要注意です。重症化する前に眼科を受診しましょう。