記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脊髄空洞症とは、しびれや脱力感などが主症状の病気であり、20歳から30歳に多いとされていますが男女差なくどの年齢にも現れます。脊髄空洞症の症状や治療、日常生活の注意点などを解説していくので参考にしてください。
「脊髄空洞症」とはどのような病気なのでしょうか。
脳や脊髄は液体の中に浮かんでおり、外部の衝撃から守られています。そして、この液体を脳脊髄液といいます。脊髄空洞症は、脊髄の中にこの脳脊髄液がたまった大きな空洞ができて脊髄を内側から圧迫するため、様々な神経症状や全身症状をきたす病気です。
推定患者数は2,500人前後とされていますが実際の患者数はこれよりも多いのではないかという声もあるようです。
男女差はありませんが、20歳から30歳代の発症が多くあらゆる年齢層にみられます。また、学童期の検診では側弯症をきっかけに脊髄空洞症が早期診断されるケースがあります。
脊髄空洞症の原因は、脊髄とそれを取り巻く組織の炎症、腫瘍、脊髄の梗塞や出血などの血管障害、外傷などさまざまありますが、生まれつき小脳の一部が脊柱管に落ち込んでいる「キアリ奇形」が代表的な原因として挙げられます。
ただし原因が特定できないものも多く、遺伝することはないと考えられていますが、一部に血縁者に発病をみる症例が報告されています。このことは原因の一部に体質もしくは遺伝が関わっている可能性があることを示していますが、その詳細はいまだわかっていません。
片側の腕の感覚障害もしくは脱力で発病することが多く、重苦しい、痛み、不快なしびれ感ではじまることが多いといわれています。
また特徴的な感覚障害として「温痛覚障害」をきたすことがあります。この障害は、たとえば腕を強くつねられても触れられているという感覚はあるのに、痛みを感じない、あるいは火傷をしても熱さを感じないといったものです。
病気が進み空洞が大きくなると、しびれ、筋肉のやせ、手足の脱力、つっぱりが現れるようになり、これらの症状が体のどこに出るかは空洞のできた場所と広がり方で変わっていき、空洞が拡大するにつれて他の部分に症状が広がっていきます。
延髄まで空洞が広がると脳神経障害や眼球症状がみられることがあり、関節、手足が異常に大きくなったり、発汗異常、爪の伸びが遅い、立ちくらみなどが起こることがあります。症状が進行した後に進行が止まったり改善することがまれにありますが、適切な治療を行わないとその後症状が進行します。
しびれなどの症状にあわせた薬物治療のほか、後頭蓋窩減圧術、空洞−くも膜下腔短絡術などの手術によって治療が行われます。
日常生活をするうえの注意として、まずは定期的に医療機関に受診することが重要であり、筋力低下や筋萎縮に対しては適度な運動療法を取り入れることを検討することをおすすめします。
咳やくしゃみでビリッとする痛みが誘発されることがありますが、これは脳脊髄液の圧が急に高くなったことによる症状です。空洞が広がる誘因となる場合があるので、このような動作を避けるようしてください。また、痛みや熱さの感覚が鈍い場合には、外傷や火傷を受けやすいので注意しましょう。
しびれや脱力感の症状が現れる病気は、脊髄空洞症以外にもたくさんあります。深刻な状態に発展する可能性があるものも多いので、しびれなどの症状に気づいたときは、早めに病院で検査してもらうようにしましょう。